秋の虫の鳴き声をあなたはどれくらい知っていますか?
もうすぐ暑い夏が終わり、秋がやって来ます。
日本の秋の到来を告げる代表的なものは、何といっても一晩中鳴き通すコオロギや鈴虫などの風情を感じさせる鳴き声ではないでしょうか?
コオロギは比較的生息場所を選ばない昆虫ですので、都内でも秋の夜にはその鳴き声を耳にする事が出来ます。
童謡「虫のこえ」の歌詞に登場する秋の虫達
あれ松虫が 鳴いている
ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれ鈴虫も 鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ
きりきりきりきり こおろぎや
がちゃがちゃ がちゃがちゃ くつわ虫
あとから馬おい おいついて
ちょんちょんちょんちょん すいっちょん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ
40代以上なら誰でも知っている歌だと思いますが、最近の子供達はどうでしょうか?
さて、この歌の歌詞には5種類の秋の虫たちが登場しますが、あなたはその中で何種類の虫たちの鳴き声を知っていますか?
馴染みの深い虫からその鳴き声と特徴を紹介します。
鈴虫の鳴き声
鈴虫は秋になるとペットショップやホームセンターなどで売られている、最も私達に馴染みの深い秋の虫です。
その生息域は北海道から九州までと幅広く、平安時代からその鳴き声を楽しむ為に飼育されて来ました。
どうでしょう?
「虫のこえ」では「りんりんりんりん りいんりん」と表現されていますが、実際は「り~ん、り~ん」といった感じに聞こえますね。
改めて聴いてみると、他のどの虫たちよりも耳当たりの良い心地よい鳴き声ではないでしょうか?
飼育も比較的容易で、市販のプラケースに土や鈴虫マットを敷き、一定の湿度を保ってキュウリやナス、時々共食いを防ぐ為に動物性の蛋白として鰹節や煮干などを与えるだけです。
コオロギの鳴き声
コオロギも私が子供の頃はそこらじゅうで見かける虫でした。
今でも東京都下に住んでいますが、時々家の中に迷い込んでくる事がありますので、全国的にもまだまだ人間にとってとても身近な昆虫だと言えるのでしょう。
因みに一口にコオロギと言っても、エンマコオロギやカマドコオロギなど、いくつかの種類によってその鳴き声も違います。
エンマコオロギの鳴き声
カマドコオロギの鳴き声
エンマコオロギの方はやや鈴虫の鳴き声に似ていますね。とても心地良い音色です。
一方でカマドコオロギの鳴き声は、ややバッタ系に近い感じがします。
「虫のこえ」では「きりきりきりきり」という鳴き声で表現されていますので、カマドコオロギの鳴き声を模したものであると言われているようです。
松虫の鳴き声
松虫は鈴虫よりもやや暖かい場所を好み、東北南部から沖縄に掛けて棲息する昆虫です。
その鳴き声はとても特徴的で「虫のこえ」では「ちんちろ ちんちろ ちんちろりん」と表現されています。
サイコロを使った賭博も「チンチロリン」と呼ばれていますが、これは器にサイコロを投げた時の音を模したもので、松虫の声とは無関係です。
それでは松虫の鳴き声を聴いてみましょう。
確かにチンチロリンと聞こえますね。
松虫の鳴き声も鈴虫やエンマコオロギと似ていて、とても心地が良い音色です。
ウマオイの鳴き声
ウマオイはバッタやキリギリスの仲間で、北海道以外の日本全国に棲息している昆虫です。
松虫同様にその鳴き声は特徴的で、「虫のこえ」では「ちょんちょんちょんちょん すいっちょん」と表現されています。
バッタの鳴き声はコオロギとは違い、「ジージー」とちょっとうるさく感じられるのは私だけでしょうか?
その辺りの感じ方は人それぞれですので、何ともいえない部分ではありますが。
くつわ虫の鳴き声
くつわ虫は関東以南に生息するキリギリスの仲間ですが、その名前の由来は鳴き声が馬具の轡「くつわ」~馬の手綱の先にある口にはめる器具~の音に似ているからと言われています。
その鳴き声は「「虫のこえ」で「がちゃがちゃ がちゃがちゃ」と表現されている通り、がちゃがちゃです。
うまおい同様にやはりバッタ系の嫌な音が含まれていますので、私はちょっと苦手ですが皆さんは如何でしょう?
秋の虫六重奏
ここまで記事を読んでくれたあなたにプレゼントです。
全て一度に再生して見て下さい。
秋の虫の六重奏が楽しめます。
虫のこえ 六重奏 | |
---|---|
鈴虫 | エンマコオロギ |
松虫 | カマドコオロギ |
ウマオイ | クツワムシ |
■ 脇役と呼ばないで!魅力的な鳴き声の「セスジツユムシ」も見てみよう
さらに秋の虫たちの詳しいウンチクを知りたい方は続きもを読んでみて下さい。
秋のムシの鳴き声を楽しもう!
秋のムシたちが鳴き始める時期になりました。
8月下旬・・昼間から夕暮れまでは樹上のセミたちが大声で鳴き競い、夕方から明け方までは、スズムシ、コオロギなどの秋のムシたちが競い合うように大合唱をくりひろげ、にぎやかなムシたちの音の世界を感じさせてくれます。
やがて夏も終わりをつげ、セミの声が消え去ってしまうと、秋のムシたちの独壇場です。
文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」を知っていますか?
さて、みなさんは「虫のこえ(蟲のこゑ)」という文部省唱歌をご存知でしょうか?
あれ松虫が 鳴いている
ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれ鈴虫も 鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 「虫のこえ(蟲のこゑ)」
きりきりきりきり こおろぎや(きりぎりす)
がちゃがちゃ がちゃがちゃ くつわ虫
あとから馬おい おいついて
ちょんちょんちょんちょん すいっちょん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 「虫のこえ(蟲のこゑ)」
「虫のこえ(蟲のこゑ)」という歌
この「虫のこえ(蟲のこゑ)」という歌は、今から百年以上前の1910年に「尋常小学読本唱歌」に初出されて以来、小学生の唱歌として歌い継がれてきました。
1998年からは第2学年の歌唱教材として学習指導要領にも記載されており、2007年には「日本の歌百選」にも選ばれています。
現在では、文部省唱歌として広く知られています。
歌詞は差し替えられていた!
当初、「虫のこえ(蟲のこゑ)」の歌詞の二番の冒頭にあったのは「きりきりきりきり きりぎりす」ですが、のちに「きりぎりす」から「こおろぎや」に差し替えられています。
これは『枕草子』などの古典の時代の頃から実はキリギリスとコオロギが取り違えられていたという説に基づくもので、正確を期すために歌詞を入れ替えたのです。
本来なら元の歌詞の「きりぎりす」と、「きりきりきりきり」という部分が韻を踏んでいますので、すごく聞こえが良かったはずなのです。
現在の「こおろぎや」では、ちょっと字あまりな感じがしてしまい、歌詞に後付け感があるのは否めません。
また、この「きりきりきりきり」と聞こえるとされるコオロギの鳴き声は、実は一般的なエンマコオロギでなく、カマドコオロギの鳴き声であることが指摘されています。
■ 「エンマコオロギ」って身近だけど人それぞれの感じ方の差が凄い!
秋のムシは鳴かずに翅で音を出す!
秋に鳴くムシは多数います。ただしこの「鳴く」とは、鳥のようにさえずるということではなく、またセミのように発音筋と発音膜を震わせて、共鳴室を使ってする発音とも異なります。
秋に鳴くムシたちは、その翅を擦り合わせて音を出しているのです。
したがって種類によって音も違えば、音の出し方も異なりますので、聞き比べてみるととてもおもしろいものなのです。
庭先や、草むらから聞こえてくる音に耳を傾けてみましょう。それは単独の個体が音を出しているのでなく、さまざまな種が混在して競い合うように音を出しているはずです。
複数の音が重なり合い、まるで合唱・合奏をしているように聞こえてくるのです。
秋のムシたちはなぜ鳴くの?
そもそもなぜ秋のムシたちは危険を顧みずに、大きな音を出すのでしょうか?
これはセミなどとまったく同じ理由で、メスを呼び寄せることがおもなものです。
その他にもオス同士のコミュニケーションであったり、ナワバリ争いであったりでも音を出すのです。ですから同じ個体であっても、その目的に応じて音の出しかたを区別しています。
ムシたちの鳴き方は3通りある!
われわれが通常聞いているムシの音は、「ひとり鳴き」などと呼ばれるオス同士の位置確認やコミュニケーションのためのものです。
一匹が音を出し始めると、オーケストラの音合わせのように次々と周囲から音が発せられ、やがて「連れ鳴き」と呼ばれる大合唱の状態になるのです。
やがてその音に誘われてメスが近づいてくると、音の出し方が変わります。
「さそい鳴き」と呼ばれるメスへの求愛行動の音になります。どこかしっとりとした感じであったり、澄んだ音であったりするのは、私の気のせいでしょうか(笑)
またこのときメスを巡って複数のオスが争う事態になると、「おどし鳴き」と呼ばれる、短かく警戒音に近い緊張感のある音が発せられます。
このようにムシたちは、その状況に応じて鳴き分けているのです。
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オスとメスの見分け方!
セミと同様、秋のムシたちも音を出すのはオスだけです。
捕まえたムシがオスなのかメスなのか=鳴くのか鳴かないのかは、実は容易に区別がつきます。
音を出すバッタ目(直翅目)の種のメスにはとても長い産卵管がついています。
ですから尾の部分をよく観察してみてください。
翅の動きを見てみよう!
ちなみにこの音は、翅を擦り続けることによる連続音ですが、通常の「ひと鳴き」・・たとえばスズムシの「リ~ン」であっても、左右の翅を40回以上も擦り合わせて音を出しています。
また翅の動かし方も異なり、コオロギなどが左右の翅を水平に擦って音を出すのに対し、キリギリスの仲間は縦に上下させて音を出しています。
相手の音を感知する「耳」は、コオロギ類ではおもに前脚にありますが、バッタ類では胸部と腹部の体節間にある種が多いのです。
ムシの音に情緒を感じるのは日本人だけ!
さてわれわれ日本人にとって、秋のムシたちの鳴き声は、季節を感じる風物詩といってもよく、夏が終わり、秋の到来を告げる、何ともいえぬ寂しさを感じたりするものでもあります。
ところが、ムシたちの出す音に情緒を感じて反応するのは、どうやら世界中でも日本人だけのようなのです。
ちなみにポリネシア人もそうだという説もあります。ハワイ諸島やその他に島々にもコオロギはいます。
ですが、ポリネシア人たちがそのコオロギの鳴き声を楽しんでいるかどうかはわかりません。
音の処理をどこでするのかで、聞こえる音が変わる!?
音は耳を通じて感じるものですので、その知覚した聴覚信号はみんな同じように脳に伝えられているのですが、その音を処理して判別する場所が日本人と西洋人では異なるといわれています。
脳は左右に分けられていますが、領域ごとに異なる役割を持っています。
右脳は音楽脳とも呼ばれ、美しいメロディを感じ取るとともに、機械音や生活音などを「雑音」として処理するのです。
それに対して左脳は言語脳とも呼ばれ、同じ音でも声や言葉に反応してその内容を理解しようとし、論理的に「声」や「言葉」として処理するのです。
このとき、ムシたちの出す音や雨音などの自然な音をどちら側の脳で処理するかで、音の捉え方に違いがあるようなのです。
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ムシの声、自然の語る言葉!
実験によれば、ムシの出す音は日本人とポリネシア人だけが左脳で処理しており、西洋人を始め東洋人であっても中国人、韓国人でさえ右脳で処理しているという結果でした。
ですから世界中のほとんどの人たちにとって、ムシの出す音は右脳で判断する「雑音」に過ぎませんが、日本人(とポリネシア人も?)にとっては、左脳でムシの「声」であったり、自然が語りかける「言葉」であったり、そういった捉え方をしていることになります。
セミ時雨は鑑賞のジャマ!
音として挿入されていることがよくありますよね。
日本人にはおなじみでも、外国人にとってはただの雑音に過ぎず、鑑賞のじゃまになるということで、この効果音をカットしてしまうことがあるそうです。
何だか味気ない感じですがね・・
日本人の耳は独特!?
そういう意味でわれわれ日本人の「耳」は、独特のものなのかもしれません。
たとえば日本庭園にある「ししおどし」や、水琴窟などの音響効果による情緒は、外国人には理解されないのでしょうか。
風にそよぐ木の葉の音、巻貝に耳を付けたときに感じるさざなみの音、川べりのせせらぎの音など自然そのものの音にさまざまな想いを馳せるのは、もしかしたらわれわれ日本人だけなのかもしれません。
日本語の擬音語、擬態語の多さはその表れ?
日本語の特徴として、擬音語、擬声語の異常ともいえる多さを挙げる人がいます。
イヌやネコなどの身近な動物などの鳴き声に対しては、外国語にも対応するものは多数ありますが、たとえば風ひとつとっても強風なら「ビュービュー」「ゴーゴー」、それが冷たい北風ならば「ピューピュー」であり、すきま風は「ヒューヒュー」「スースー」と吹きこんできますし、心地良い弱い風ならば「ソヨソヨ」「サワサワ」になります。
同じ風の音でも日本語ではこれだけ使い分けているのです。
ですから、ムシたちの発する「音」を「声」として左脳で捉えているのは、われわれ日本人の遺伝子の中に組み込まれたシステムではなく、日本語を話し、理解することを通じて身につけてきたということなのかもしれません。
秋のムシたち
それでは、秋のムシたちの代表的な種について文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」の歌詞に登場してくる順に従って、みていくことにしましょう。
マツムシ
マツムシとスズムシは混同されていた!
マツムシは、バッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)コオロギ科の昆虫です。
スズムシとはごく近い種ということもあり、かつてはマツムシとスズムシが混同されており、逆に呼ばれることもありました。
体長は2センチほどで、体色は枯れ葉のような淡い褐色をしています。
その鳴き声は、文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」では、「ちんちろ ちんちろ ちんちろりん」と表わされているように、よく澄んだ金属音に近い感じです。
ただし実際の音量はかなり大きく、耳に響きますのでうるさがられることもあります。
マツムシは雑食性!
マツムシは、北海道を除く日本全域に生息しています。
成虫の出現は8月中旬のお盆すぎ頃からです。
乾燥した日当りの良い草地を好みます。
個人的にはススキの枯れた葉と一緒にいるイメージが強いです。
さまざまな植物や動物の死骸も食べる雑食性で、特にイネを好むようです。
メスの産卵場所もイネ科の植物の茎の部分が多いのです。このため近年では繁殖も難しくなっています。
今日の環境汚染により、生息域、生息数ともに減少しています。
飼育も、養殖もスズムシに比べて難易度が高いので、市場での取引価格も高騰しており、スズムシよりもかなり高価になっています。
6本の脚の先端には吸盤が付いているので、ガラスやプラスティック製のゲージを垂直に登ることができます。蓋を閉め忘れると逃げてしまうことがありますので要注意です。
スズムシ
夜行性でも昼間から鳴く!
スズムシは、バッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)コオロギ科の昆虫で、マツムシとはごく近い仲間で、古くからよく混同されてきました。
体長は2センチほどでコオロギ科の昆虫としては大型になります。
マツムシ同様、基本的には夜行性で、昼間は物陰に潜んでいますが、曇った日などには、昼間から活動をはじめて音を出すこともあります。
頭部が小さく下半身が大きいので、身体は卵形から丸みを帯びた三角型に近い形態をしており、触覚は非常に長く、体長と同等かそれ以上の長さがあります。
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スズムシは実は4枚翅だった!
スズムシは、左右の大きな2枚の翅を拡げて立てせながら音を出しますが、本来は4枚の翅を持ちます。
実は羽化後に後脚で後翅をみずから払い落としてしまうのです。
スズムシは羽化直後には飛ぶこともありますが、飛行能力は低く、得意ではありません。成熟してからは飛ぶことはほとんどありません。
翅にはギザギザのスジがある!
スズムシのオスの翅は幅広く、翅脈(しみゃく)と呼ばれる神経を通す中空のスジが発達しており、その一部はギザギザしたヤスリ状になっています。
この突起同士を擦り合わせて音を出しているのです。
スズムシは翅をほぼ垂直に立てて、左右に細かく震えさせます。
文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」で、「りんりんりんりん りいんりん」と記されるように、幅広の翅全体を使って共鳴させることで、鈴を振ったような澄み切った金属的な音色を出すことができるのです。
スズムシも雑食性!
スズムシは日本全国に分布しています。
成虫は7月下旬ころに出現して、9月いっぱいくらいまで活動します。
その時期を過ぎると野生の個体は死に絶えてしまいますが、飼育下ではもうしばらく生存することもあります。
おもに薄暗い茂みや大きな石の下などに潜んで生息しています。
雑食性で草木の葉や、小さな昆虫の死骸などを食べています。
スズムシは平安時代から飼われていた!
スズムシの飼育は、古くからおこなわれており、平安時代からといわれています。平安貴族たちは、その情緒ある鳴き声を楽しみ、歌に詠んできました。
当時は水槽などありませんでしたから、竹で編んだ籠などに入れて飼われていました。
江戸時代になると「ムシ売り」が登場し、一般庶民も秋のムシたちの声を愛でるようになりました。
なかでもスズムシは人気があり、当時から人工飼育されていたほどです。
現在では、養殖されたものがデパートやホームセンターなどで安価で売られていますが、野生の個体も各地に生息していますので、野外で捕獲することも可能です。
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スズムシの飼育法
スズムシの飼育は、マツムシに比べて非常に容易で、キュウリやナスなどの野菜を与えるか、かつお節などの動物性の食品を欠かさず与えるだけで、あとは特に注意することはほとんどありません。
またマツムシと異なり脚の先端に吸盤を持たないので、ガラスケースに入れて蓋を閉め忘れても逃げ出すことはありません。
スズムシの人工繁殖も!
スズムシは土中に産卵しますので、飼育ケースに土を入れて湿度さえ保っておけば、飼育下でも産卵します。そのまま管理に気をつけて保管すれば、翌年の春以降に孵化します。
孵化した幼虫は、バッタ目の他の種と同様に成虫とほぼ同じ形をしています。数回の脱皮を繰り返し、7月下旬頃に成虫へと羽化します。
ですからスズムシが鳴き始めるのは実は「秋」ではなく、「夏」からということになります。
また人工飼育・繁殖のものでは、温度管理をされて育成されるので、一足早く初夏くらいから成虫となって売られているものもあります。
スズムシの鳴き声を録音できない!
秋のムシたちの鳴き声は、ヒト(特に老人)の可聴域を超えているほど周波数が高いものもあります。
これは蚊の羽音を基にした若いヒトだけに聞こえる「モスキート音」と同様の現象です。
一般の録音装置では、ヒトの可聴域を超えることがありません。
機械によってはムシの音をきちんと録音できない場合がよくあります。
また、電話ではさらに狭い周波数帯を使っているので、その音をまったく伝えることができないのです。
名刹!鈴虫寺!
京都市西京区にある華厳寺(けごんじ)は、別名「鈴虫寺」と呼ばれています。
この寺では、四季を通じてスズムシを飼育し、庭に放っているのです。
一年中スズムシの音色を聴くことができ、それを「ウリ」にしています。
寺によれば、スズムシの音色は仏教的な「教え」の音なのだそうです。
この寺では鈴虫説法なども有名であり、積極的な拝観者招致を展開していますので、興味のあるかたは一度訪ねてみてはいかがでしょうか。
松虫寺もありますよ!
スズムシ寺があるならマツムシ寺はあるのでしょうか?
あります。
千葉県印西市に松虫寺があります。こちらは別名というわけではなく、そのものズバリ「松虫寺」です。
真言宗豊山派の寺院で、院号は摩尼珠山医王院です。
天平17年(745年)建立ですから、1723年建立の鈴虫寺よりはるかに古く、1300年近くの歴史を持つ名刹なのです。
ただしこの松虫寺は、鈴虫寺のようにマツムシを飼育しているわけではありません。
その名は聖武天皇の第三皇女「松虫姫」に由来しているのです。
松虫姫(不破内親王)が病にかかり、この地を訪れた縁でその没後この地に行基が建立したということです。
コオロギ
エンマコオロギはコオロギ科の代表種!?
コオロギは、バッタ目(直翅目)キリギリス亜科(剣弁亜目)コオロギ(上)科に属する昆虫の総称でもあります。
従って広い意味では、マツムシ、スズムシ、オケラなども含んでしまいますので、コオロギ科コオロギ亜科に属するエンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギなどをその代表種とし、スズムシなどと区別することがあります。
また歴史上、「コオロギ」といった場合、セミ(カメムシ科)を含んで、鳴き声を発する昆虫すべてを指してきたこともありますので、一般的にはそれほど厳密な区別をつけないことが多いとも言えます。
この場では、代表種としてエンマコオロギ=コオロギとして扱うことにします。
二本の触覚と二本の尻毛と長い産卵管!
コオロギの成虫は体長3~4センチでその体色は黒から茶色を呈しています。
身体は円筒形や紡錘形などをし、厚みがあり太く短くなっており、体長よりも長い触角をもちます。
また尾部にも体長よりも長い二本の尻毛があり、触角同様の働きをしています。
つまり、ずんぐりむっくりした身体から4本の長〜いヒゲが伸びているわけです(笑)
さらにメスでは、もう一本、それとは別に長い産卵管を持ちます。
これを地面や植物の茎などに刺し込んで産卵をします。
コオロギの翅もほとんど飛ぶことができない!
バッタ目(直翅目)に属しますので、コオロギの後脚は長く太く発達しており、後脚を使って跳躍します。
成虫には翅があり、飛翔する種もいますが、おもに音を出すのに使う種では、うろこ状に退化して跳べないものも多くいます。
コオロギのオスの翅には複雑な模様があり、やすり状の発音器と共鳴室があります。
これを使って音を出します。ただしコオロギ亜科すべての種が音を出すわけではなく、樹上で生活する種では、大きな翅を持ちながら、まったく音を出さない種もいます。
コオロギの耳は前脚の付け根にある!
コオロギの耳は前脚の付け根にあり、ここが聴覚の受容器になっています。
コオロギの耳には鼓膜があり、他のコオロギ科の種よりもよく発達しているといえます。
コオロギは夜間の活動に適した形態をしている
コオロギ類は、田畑、草原、森林など地上に生息する種が多いのですが、湿地や海岸にすむ種や樹上で生活する種もいます。
そのほとんどは夜行性であり、日中は草地の石の下や穴の中など物陰に潜んで身を隠しています。
長い触角や尻毛や耳などの感覚器の発達は、夜間や暗い環境での活動に適していると言えます。
コオロギも雑食性で共食いもする!
コオロギ類のほとんどの種は雑食性で、植物の他に小動物の死がいなども食べます。
また小さな昆虫を捕食したり、弱い同種の個体を見つければ共食いをすることもあります。
飼育する場合には、野菜類のほか、かつお節や煮干しなどの動物性のエサをあげた方が共食いを防ぐことができます。
コオロギは泳ぐこともできる!
コオロギの天敵としては、カマキリ、クモ、ムカデや鳥類が挙げられます。
これらに狙われて逃走する時には、後脚を使って大きく跳躍することができます。
また水面に落ちても浮き上がることができるので、後脚を使ってかなりの速度で泳ぐこともできます。
コオロギの産卵と生活史!
オスはおもに音を出してメスを呼び寄せて求愛し、交尾します。
このとき複数のオス同士でメスをめぐって争うこともあります。
交尾を終えたメスは、土中や植物内に長い産卵管を差し込んで1個ずつ産卵します。
卵のまま越冬し、春から初夏にかけて孵化して、成虫を小型にしたような形態の幼虫になります。
そして脱皮を重ねながら成長し、秋に成虫になるというサイクルを繰り返します。
エンマコオロギとカマドコオロギは鳴き方が違う!
文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」では、コオロギの鳴き方は「キリキリキリ」と表現されており、当初歌詞はキリギリスとなっていました。
それが前述したように「コオロギよ」(字あまり)に改められています。
キリギリスの出す音は「キリキリキリ」よりも「ジリジリジリ」と鳴るベルの音に近いかなと思います。
「キリキリキリ」と鳴くコオロギはエンマコオロギではなく、カマドコオロギです。
エンマコオロギは「コロコロコロ」といったスズムシに近い音色を出します。
食用コオロギ!?
東南アジアでは、コオロギは食用として普通に売られています。
特に大型種は身が厚いので食べ応えがあり、人気が高いようです。
また飼育が容易で繁殖力も旺盛であるので人工繁殖が容易です。
各国で大量に養殖されており、人間の食用ばかりでなく、実験動物として使われたり、日本国内ではおもに爬虫類や魚類の生き餌としても輸入されており、ペットショップで売られています。
中国ではコオロギを戦わせるゲーム「闘蟋」が盛ん!
昆虫食では群を抜いてさまざまな種類や調理法のある中国ですが、実は意外なところでコオロギが活躍しているのです。
中国には、コオロギのオス同士をケンカさせ、闘犬や闘牛などと同様にして争わせる「闘蟋(とうしつ)」と呼ばれる競技があるのです。
これは正式な競技として公式な大会が開かれることもあるほどなのですが、繁華街の片隅で賭博としてもおこなわれています。
闘蟋の歴史は古く、唐代(1200年前)辺りから始まった伝統的なものだそうで、映画「ラストエンペラー」にもそういったシーンが登場するほどですし、文化大革命では毛沢東によって禁止されたりしています。
中国ではコオロギは別格の昆虫!
闘蟋に使われるコオロギは、ツヅレサセコオロギが主流で、その個体は『闘蟋戦士』などと呼ばれて大切に飼育されています。
育成や管理をするトレーナーのような専門家もおり、大小さまざまな大会も中国全土で開催されています。
優勝した個体には『虫王』『将軍』などといった称号も与えられますので、中国国内では、コオロギは特別扱いの昆虫だと言えます。
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キリギリス
キリギリスは東西二種類いる!?
キリギリスはバッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)キリギリス科のキリギリス属に分類される昆虫です。
しかし学術的には、新潟から岡山辺りまで分布するヒガシキリギリスと西日本を中心に分布するニシキリギリスの二種類がいるといわれ、一般的にはその総称であったり、キリギリス属、あるいはその上のキリギリス科に属する昆虫の総称として呼ばれることもあります。
かつて日本では、古典的にキリギリスといえばコオロギ類の総称として扱われてきた歴史もありますので、そういう意味でもこの名称はかなり混同されているようです。
学術的な結論はこれからの研究を待たなければなりませんが、ここでは最初に記したように、ヒガシキリギリスとニシキリギリスを合わせた種(亜種と扱うこともあり)をキリギリスとして扱うことにします。
キリギリスは鳴くムシの代表!
キリギリスは、日本国内において、セミやコオロギ類と共に鳴く虫の代表格としてよく知られています。
かつては、文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」の歌詞で、「きりきりきりきり きりぎりす」と謳われていたほどです。
キリギリスには緑色と褐色の二種類がいる!
成虫の大きさは3~4センチほどで、メスの方がやや大ぶりです。
体色は緑が基調の個体群と、褐色が基調の個体群の二種類がいますが、幼虫では緑色が基調となります。
キリギリスの触角は長い!!
キリギリスの触角はとても長く伸びています。トノサマバッタやイナゴとは容姿がよく似ておりなかなか区別がつけづらいのですが、一番判別しやすいのは、この触角の長さです。
前脚には長いトゲがズラリと並んでいます。これはおもに獲物の補食に使われます。
後脚は長く強靭ですが、もろく脱落しやすい欠点があります。
オスは前翅に発音器があり、ここで音を出します。メスは尾部に長い産卵管を持ちます。
耳は前脚のなかほどにあります。
キリギリスは合唱嫌い!?
キリギリスの成虫は夏に現れ、河原や草原の草むらなどに生息していますが、山間部にもいます。
ナワバリ意識がとても強いので、他の個体と密集することはありません。
ですから、自分の縄張りに侵入した個体に対しては激しく攻撃を仕掛け、追い出すばかりでなく、捕らえて捕食してしまうこともしばしばあります。
キリギリスは雑食性と言われていますが、ほぼ肉食性の行動を取るのです。これはコオロギ類とは異なり、他の昆虫を積極的に捕食することからも明らかです。
キリギリスは用心深い!!
キリギリスの出す音は、「キリキリキリ」「ギ~~~」などと表現されますが、連続音の合間に「チョン!」といういわゆる「相の手」のような、息継ぎのような音が入ります。
キリギリス自身はとても用心深い性質で、危険を感じるとすぐにこの音を消してしまい、死んだふりなどをしてわざと落下して、茂みの奥に逃げ込もうとします。
ですから他のバッタ類などに比べ、その捕獲は難しいと言えます。下手に捕まえようとすると、反撃して咬みつくこともあるので要注意です。
毒はありませんが、大アゴは強力なので咬まれると強い痛みを感じるほどです。
しっかりした身体付きをしているので意外に思えるのですが、後脚がもろく脱落しやすいので、捕まえるときに注意しないと、外れてしまうことがしばしばあります。
キリギリスは肉食性!!
3~4月ごろに孵化したキリギリスの幼虫は成虫とよく似ており、脱皮を繰り返して成長していきます。
初齢幼虫では種子や花粉などをおもに食べていますが、成長するに従い、小型の昆虫などを捕食する肉食性を見せます。
共食いをすることもしばしばあります。
タンパク質の不足が成長の妨げになるので、積極的な肉食をすると考えられています。
前脚にある多数のトゲは、獲物を捕えるのに適しており、カマキリやトンボ類とほとんど変わらないほど、他の昆虫を補食しているのです。
キリギリスは脱皮が苦手!!
キリギリスの脱皮や羽化は、その長い脚(特に後脚)がジャマをして、困難を極めるようです。
脱皮中に死亡してしまったり、後脚を抜くのにとても時間がかかるので、その間に他の昆虫に襲われることもしばしばあります。
このためキリギリスは深夜に近い夜間や明け方近くに脱皮を行なうことが多く、1時間以上かかることもよくあります。
また他のバッタ類と異なり、水平に位置した状態で脱皮するのは困難なので、茎などにぶら下がり、頭をやや下に向けた姿勢を取って脱皮します。
通常は脱皮した後に、その抜けがらを食べて完了となります。
キリギリスは昼行性!!
キリギリスの成虫は、6月下旬から7月にかけて羽化をし、その後から活発に活動を始めます。
オスは前翅を擦り合わせて「キリキリキリ」や「ギ~~~」といった音を出します。
ただしキリギリスは昼行性なので、音を出すのは夜間でなく、日照量の豊富な快晴の時に限られています。日中でも曇り空であったり、夕刻以降では、ほとんど音を出すことはありません。
キリギリスの卵の孵化は謎に満ちている!!
キリギリスのメスは、その長い産卵管を地面に突き刺して土中に産卵します。
ところがその後の孵化へのメカニズムが実はよくわかっていません。
来春にすぐに孵化する場合もありますが、温度の上下が複数回加わらないと孵化に至らない場合も多く、そういった場合には、卵は休眠状態のままで数年間を土中で過ごすこともあるようです。
キリギリスは冬に死んでしまう!!
キリギリスの成虫の寿命は2カ月程度です。飼育下ではもう少し生きる場合もありますが、越冬させることは、きわめて困難です。
その原因として、老化にともない符節が壊死を起こしてしまいますので、脚が折れたり脱落したりしてしまいます。
動けなくなった個体は死を待つばかりです。
したがって冬の時期の温度的な問題で長生きできないのではなく、老化により死んでしまうと考えられています。
イソップ寓話はウソだった!?
イソップ寓話「アリとキリギリス(原題はセミ)」では、キリギリスは夏の時期に歌ってばかりのなまけ者として描かれており、冬への備えができていないことで非難され、そのことを教訓にしているのですが、そもそもキリギリスも原題のセミも、越冬する能力も寿命そのものもありません。
冬への備えなどする必要がないのです。
また働き者のアリにしても、種にもよりますが、女王アリは10~20年も生きることができますが、働きアリの寿命はせいぜい1~2年です。
ですから働きアリ自身は越せてもひと冬程度ですから、夏の時期に一生懸命働いていても、それは女王アリのための冬の備えをさせられているといった方が適切なのかもしれません。
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キリギリスの声には価値がある!?
私自身、キリギリスは特別美声だとは思いませんが、古来より日本人は観賞用としてその声を愛でるため、それを飼育してきたという歴史を持っています。
江戸時代中期には『虫売り』という職業が成立しており、スズムシ、マツムシと共に鳴き声に価値のあるムシとしてキリギリスも売られていたのです。
竹で編んだ「ぎすかご」に入れられて、縁側や軒先に吊るされて鳴く姿は、江戸の夏の風物詩でもあったようです。
ただし、キリギリスの飼育は難しく、一夏限りです。
キリギリスは強い肉食性でもあるので、野菜だけをエサとして与えてもタンパク質が不足してしまうので長生きしません。現代でも、削り節や煮干し、ドックフードなどのタンパク源をしっかりと与えなければ、すぐに死んでしまいます。
クツワムシ
クツワムシは日本固有種!!
クツワムシは、バッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)キリギリス科の昆虫です。
文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」では、その鳴き声が「がちゃがちゃがちゃがちゃ くつわ虫」と表現される秋のムシの代表の一種でもあります。
ただし個人的に、クツワムシの出す音は、アブラゼミの鳴き声に近い、それほど美声とは思えないものだと感じています。
クツワムシは関東から九州まで広く分布していますが、日本固有種でもあります。
体長は3~4センチほどですが、翅が幅広く伸びているので、頭から翅の端までだと5~6センチにもなります。体色は緑と褐色の2タイプがいます。
クツワムシの名の由来は?
クツワムシの「クツワ」とは、馬具の一種で、馬の口にくわえさせ、手綱を引くことで馬を制御する道具のことです。
「クツワ」は金属製で、手綱を間に通して使用します。クツワムシの鳴き声が、馬に乗ったときに聞こえてくるクツワ(轡)から発する音とそっくりなので、名づけられました。
クツワムシは草食性の平和主義者!?
クツワムシは、大型で厚みのある体型でずんぐりとしています。キリギリスなどと異なり、ほぼ完全な草食性で、特にクズ(葛)の葉を好んで食べています。
クツワムシは夜行性で、クズなどの蔓植物の繁茂している草地に生息しています。クズの葉はタンパク質を多く含んでいますので、特に肉食をしなくても問題なく生育できるのです。
くずの他、カラスウリやアマチャヅルなどの蔓植物の葉を食べることもあります。
クツワムシの生活史
クツワムシも他のバッタ類と同様、オスのみが翅を使って音を出します。
メスはオスより一回り大きく、長い産卵管を持ちますが、管は剣状になって上向きに反っています。
クツワムシの成虫は、7月下旬ころから出現します。それから10月ころまで活発に活動します。
交尾したメスは産卵管を地面に突き刺して土中に産卵します。4月から6月にかけて孵化した幼虫は、はじめのうちは土中でおとなしく活動していますが、やがて地上に現れてきます。
形態は成虫とよく似ています。孵化後は脱皮を繰り返して成長しますが、キリギリス同様に脚(特に後脚)が非常に長いために上手く脱皮できず、失敗して死亡する個体もかなりの数に登ります。
また幼虫での成長が遅いため、幼虫期間は他の種に比べ長くなっており、3カ月ほどかけてようやく成虫になります。
クツワムシの飼育は容易!
クツワムシの飼育は比較的容易で、自然下ではエサはクズに特化していますが、飼育下では野菜類なども食べますし、かつお節などの動物性のタンパク質も摂取します。
基本的に、他の昆虫を捕食したり、共食いをしたりはしませんが、ナワバリ意識はとても強いようで、よくオス同士がぶつかり合ってケンカしています。
細く長く、もろい脚が弱点なので、けんか中にその脚が脱落してしまうことがよくあり、脱落してしまうと、その分クツワムシ自身の動きが鈍くなるので、同種の仲間からもいじめのような再攻撃を受けやすくなります。
最近では、各地で絶滅危惧種に指定されている
クツワムシは、大型で動きも鈍いので天敵に狙われやすく、捕食される機会がとても多いと言えます。
また水質や温度など環境の変化にも弱く、自然下では個体の減少が著しくなっており、絶滅危惧Ⅰ類に指定している自治体もあります。
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ウマオイ
ウマオイにはハヤシノウマオイとハタケノウマオイの二種がいる!
ウマオイは、バッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)キリギリス科に属し、単にウマオイと呼んだ場合、ハヤシノウマオイとハタケノウマオイの二種を指します。
外見上、ハヤシノウマオイとハタケノウマオイにはほとんど違いがありませんので混同されがちですが、その鳴き声はかなり異なります。
ハヤシノウマオイは「スイ~ッチョン」と文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」の歌詞「チョンチョンチョンチョン スイッチョン」と同様の鳴き方をしますが、ハタケノウマオイは「シッチョン、シッチョン」とかなりせわしなく連続した音を出します。
ウマオイは、馬子が馬を追う声に似ていることが由来
ウマオイとは、その鳴き声が、馬子が馬を追う声のように聞こえることから名付けられたようです。
ハヤシノウマオイは文字通り下草の多い林に生息しており、ハタケノウマオイは畑の片隅や小川沿いの草地など明るい場所に生息しています。
ウマオイは獰猛な肉食!
ウマオイの体長は4~5センチで、オスよりメスの方が一回りほど大きくなります。
キリギリス類の多くの種と同様、脚が長く、翅も幅広く長いのですが、身体そのものはきゃしゃで小さめです。ところがその性質はかなり獰猛な肉食性なのです。小昆虫を積極的に捕えて食べ、場合によっては共食いもします。
飼育する場合には、人工の飼料よりも生き餌を好み、頭からムシャムシャとみごとな食べっぷりを見せてくれます。
ヤブキリ
ヤブキリも秋に鳴くムシとして有名!
ヤブキリはバッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)キリギリス科に属する昆虫で、藪に住むキリギリスという意味でヤブキリと名付けられました。
文部省唱歌「虫のこえ(蟲のこゑ)」の歌詞には出てきませんが、秋に鳴くムシとして有名な部類に入ります。
ヤブキリの体長は5センチ前後で、通常その体色は緑色です。
まれに全身が黒褐色の個体も見受けられます。頭から背にかけて褐色のスジがあるのが特徴です。
ヤブキリも獰猛な肉食性!
ヤブキリはその名の通りキリギリスによく似ていますが、後脚は短めで、おもに樹上で生活していますので、その身体はコンパクトにまとまっている感じです。
その食性は獰猛な肉食性で、大アゴは大きく、脚にあるトゲはキリギリスよりも長く、獲物を捕えるのに適しています。
初齢幼虫は花粉や種子などを食べますが、成長するごとに肉食性が強くなります。
ヤブキリは生息数が多く、よく見られる!
ヤブキリの触角はかなり長めで、メスの産卵管は長く、キリギリスと異なりほぼまっすぐに伸びています。
ヤブキリは日本全土に分布し、生息数も多く、樹上や藪、草むらなど、植物の茂った場所ではほぼどこででも見ることができます。
ヤブキリは昼夜で鳴き分ける!
ヤブキリは昼と夜とでは鳴き方が異なり、夜は「シリリリリ・・・」と金属的な音を出します。それに対し、昼間はキリギリスに近い「ギ~~」とやや低い音を出します。
ただし、キリギリスのように、相の手のような「チョンッ」という音は入りません。
ほぼ夜行性ですので、昼より夜の方が頻繁に音を出し、活発に活動します。
ヤブキリは地上に降りないが地中に産卵!
ヤブキリはほとんど地上に降りず、樹上生活をしていますが、産卵のときだけは地上に降り、地面に産卵管を突き刺して土中に産卵します。
卵の孵化は4月ごろからですが、キリギリス同様に温度変化のサイクルがあるようで、すぐに孵化せずに卵のままで何度も越冬するものもいます。
孵化した幼虫は、2カ月ほどかけて成長を続け、羽化して成虫になります。
羽化後、成熟期間が10日ほどあり、それから本格的に音を出してメスを誘うようになります。
成虫は2カ月ほどの寿命ですが、飼育下ではもっと長生きすることが多いようです。
ヤブキリの飼育は容易!
ヤブキリの飼育は容易で、通常昆虫類に与えるエサならほぼ何でも食べると言っても過言ではありません。
特に産卵前のメスや終齢幼虫は貪欲で、与えられたエサはほとんど食べ尽くしてしまいます。
飼育管理においても特に注意することはありません。
コロギス
コロギスは鳴かない!!
コロギスはバッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)コロギス科に属する昆虫です。
名前の通り、体型はコオロギで、体色など多くの特徴はキリギリスに近いものを持っていますのでとても親近感がありますが、発音器を持たないので音を出すことはできません。
コロギスは素早く走る!!
体長は3~4センチでずんぐりむっくりしており、メスのほうがオスより一回り大きくなります。体色は明るい緑色で、脚は若干青みがかった色を呈します。
前・中脚にはトゲが並び、捕食の際に適応しますが、その他に昼間潜んでいるのが葉の中なので、このトゲはその際に葉を綴じるのにも使われています。
後脚はあまり長くないので、跳躍力はあまりありませんが、その分走ることができ、かなり素早く動きます。
コロギスは物を叩いて音を出す!
コロギスの頭部にある触角は非常に長く、とても目立ちます。翅はありますが、発音器はなく、また飛翔の役に立つものではありません。
ですからその翅の役割はもっぱら威嚇する場合に拡げて使うことくらいなのです。
警戒心は強く素早く逃げ出すのですが、頻繁に翅を拡げた威嚇行動も見られます。
翅を使っての音は出せませんが、脚を使って物を叩いて音を出す「タッピング」を行うことがあります。
コロギスは葉の中に潜む!
コロギスは夜行性でおもに広葉樹林に生息していますが、警戒心が強く、昼間は自分で綴じた葉の中に潜み、しかも口から吐き出した糸で念入りに入り口を塞いでしまいますので、その姿をなかなか見つけることができません。
コロギスは雑食性で、小さな昆虫を捕食したり、樹液を吸ったり果実を食べたりします。
メスは他のキリギリス類と異なり、土中でなく朽ち木などに産卵します。
幼虫の孵化は遅く、8月頃になります。ですから年内は羽化せずに幼虫のまま越冬し、落ち葉や枯れ葉などを綴じて、その中に潜みます。
やがて春になると冬眠を終えて活動を再開し、6月頃に羽化して成虫になるのです。
(ライター:オニヤンマ)