四季折々、季節を感じる動物の鳴き声というのはあるもの。
日本人として知っておきたい動物たちの癒しの鳴き声を10個集めてみました。
ヒグラシ
スケルトンの羽がおしゃれなヒグラシ。その鳴き声は涼し気で、暑い夏の早朝や夕暮れや、太陽が雲に隠れた時などに一斉に鳴きだすと、その瞬間、つかの間でも体も心も癒されるものです。
日本では北海道南部から南は奄美大島までの幅広い範囲に生息しており、日本人の誰もが共通して感じることのできる夏の声と言ってもいいでしょう。
美しい声の代表として、また俳句では秋の季語としてよく使われます。
また、良く知られることですが、セミの地上での寿命は短く、土の中にいた幼虫時代と比較し、儚い存在として扱われます。
ヒグラシも例にもれず、地中で6~7年。羽化してからは1~2週間ほどの命だそう。
地上での短いセミの命を思うと、子孫を残すための必死の行動も、どこか切なく儚げにも聞こえてきます。
ツクツクボウシ
夏の初めから鳴くセミ。「ツクツクボウシ ツクツクボウシ」と繰り返し鳴くその声がそのまま名前になっています。
「ジーツクツク」から始まり、どんどんと鳴き声が早くなっていき、近くのオスたちもその声に反応し、まるで合唱のように聞こえます。
最後は「ジーーーーーッ」と鳴いて、おしっこをしながら次の木に移っていくというのが、私のツクツクボウシの印象です。
リズム感のあるメロディが何とも心地よいセミの声です。
ツクツクボウシの声を聴くと、無性にスイカが食べたくなるのは生物用語でいうところの「刷り込み」なのでしょうか!?
近年は温暖化の影響で鳴く時期が少しずつずれてきているのだとか。
アマガエル
ヒグラシと同じく夏の夜を彩るアマガエルの鳴き声。水田のある風景にとてもよく似合います。
基本的には繁殖のためにオスが鳴いていて、声嚢と呼ばれる袋状の器官に音を共鳴させ、大きい音を出しています。
しかし、それ以外にもアマガエルは雨の前の日等、湿度が高くなると、昼間から鳴くこともあり、それは夜に鳴く「広告音」と区別され、「雨鳴き」と言われます。
アマガエルの鳴き声は実は、適当に鳴いているのではなく、2軍に分かれたカエルたちが一定のリズムで鳴いているという報告もあります。
私たちがどこか心地よくカエルの大合唱を聞いているのは、本当にちゃんとした大合唱だったからのようです。
カジカガエル
渓流に響く美しい鳴き声はカジカガエルの縄張り主張の広告音。
こんななわばり主張ならいつでも、いつまでも聞いていたいような気さえしてきます。
日本の固有種で、カジカガエルの生息場所で国の天然記念物に指定されているところもあります。
形は岩の隙間に入りやすいように扁平、岩にへばりつきやすいように指先の吸盤が発達していて、
灰褐色でところどころに斑紋があり、顔の目の間にはT字のラインが入っています。
遠く江戸時代にはカジカガエルの声を聴くために専用の籠が売られていたこともあるほど。
渓流の瀬音と主に聞くカジカガエルの鳴き声は癒しの究極です。
スズムシ
夏休み、祖父の家に遊びに行くと、きまって大きな水槽の中で飼われていたスズムシ。
つまようじに刺さったキュウリやナスが水槽内のあちこちにおいてありました。
夜になって、祖父の晩酌が終わり、テレビの音もなくなると、涼しい風と共に家の中に響き渡るスズムシの声。布団の中で子守歌代わりに聞きながら眠ったのを思い出します。
スズムシの声もまた求愛の合図。4枚の翅に走った太い脈をヤスリ代わりにし、擦り合わせて音を出します。
自然界では7月下旬から9月頃までその鳴き声を聞くことができますが、ホームセンターでは養殖で早めに羽化させたスズムシが売られています。
歌の中では「リンリンリンリンリーンリン」と表現されている日本人に馴染みの深い癒しの鳴き声です。
エンマコオロギ
父が大事にしていた大きな水槽の中には多分、エンマコオロギもいたのでしょうか・・
子供の頃の記憶は遠くなりにけり・・・ですが、エンマコオロギはその数の多さからか、スズムシほどは重宝されてはいなかったようです。
実際日本でも全土に幅広く生息しています。
見た目のゴロンとした印象に似合わない優しい「キリリリリリリ」や「コロコロリ」という声で鳴きます。
日本では古くは民間療法の薬として用いられたり、食用としての用途もあったのだとか。
昼間は草木の茂みや資材などの影に潜んでいることが多く、夜になると周辺を徘徊してエサを探します。食性は雑食です。
ジャンプ力があり、飛ぶこともできますが、そのスピードは直線的で遅いよう。
天敵は鳥類やトカゲ、カエル、カマキリなど。
ウグイス
「ホーホケキョ」日本の春を告げるのはウグイスの声です。
太陽の光のうららかさを感じる頃になるとウグイスたちが鳴き始めます。
おなじみの「ホーホケキョ」は求愛と共になわばり主張の合図。
私の周りの口笛の上手な人が「ホーホケキョ」ときれいな音で口笛を吹くと、近くにいるウグイスはそれに負けじと「ホーホケキョ」と呼応します。なわばり合戦の始まり!?
「ケキョケキョケヨケキョ」の声は縄張り内への侵入者をメスに告げるための合図なのだそう。
それ以外にも「チャッチャッチャッチャ」という鳴き方もあり、それぞれを使い分けているらしい。
ちなみに日本からオーストラリアに持ち込んだウグイスは一通りの鳴き方しかしないと認識されていて、それは広大な大地に敵がいないためと考えられています。
ホトトギス
夏に朝鮮から渡ってくる夏鳥であるホトトギス。
九州以北に生息しているが、北海道と九州地方で見かけることはあまりない。
「キョキョキョキョキョ」とけたたましく鳴くことが多く、早朝や夜でもその鳴き声は響き渡ります。
日本では古くから文献などにも登場している鳥で、漢字表記の種類も多いのが特徴です。
体長は28㎝ほどと、比較的大き目で、ヒヨドリよりわずかに大きく、ハトよりは小さいサイズです。
コマドリ
小さな体のわりに力強く「ヒンカラカラカラカラ~」と鳴きます。
日本では夏の鳥として有名で、名前の由来は鳴き声が馬のいななきに似ていることから付けられていて、漢字の駒鳥の「駒」は馬を表しているんだそうです。
渓流に近いところになわばりを作って生息していて、山歩きの好きな方なら渓流の瀬音と共に聞き馴染みのある声ではないでしょうか。
頭部がオレンジ色になっていて、オスメス似たような色合いをしています。
オオルリ
東南アジアから夏に日本にわたってくる夏鳥。
主に渓流近くの藪の中などで昆虫を捕食しています。
きれいな青色をしているのはオス。メスはオスに比べてとても地味な茶褐色をしています。
色に似つかわしい美しい声のさえずりは、地鳴きが「クックックック」。
なわばりを主張するのには「ピリリーピールリジィジィ」と鳴きます。オスだけでなく、メスが鳴くこともあるのだそう。
癒しの動物の鳴き声のまとめ
こうして「心にしみる鳴き声」を列挙してみると、日本人の心に響く鳴き声というものには、どこか共
通点があるような気がします。
小さくて、儚げで、どこか可憐で哀愁を感じる鳴き声。
鳴き声の持ち主たちは、カエルや虫や小鳥といった生態ピラミッドでは下の方にいる生物ばかり。
そんな小さな命たちの恋の歌が、どうやら私たちの心に響いているのだということを改めて感じる次第です。
人工的な音で溢れている現代ですが、一度全ての電源を切って、かすかに聞こえてくる自然の音に耳を澄ますのも、たまにはいいかもしれませんよ。
ぜひ、この夏あなたも虫たちの声を感じてみてください!
(ライター ナオ)