百獣の王と言われるライオン、最も平和な動物と言われるゴリラ、そして他の動物が仕留めた獲物を奪い姑息に生き残るハイエナ、哺乳類最大の体長を誇るシロナガスクジラ。
自然界をまるで支配しているかのように見える彼らに天敵はいるのでしょうか。彼らの持つ能力と共にご紹介していきます。
ライオン
百獣の王と称されるライオン。その名前の通りオスは立派な鬣を身にまとい風格たっぷりですが、実は体の大きさで言うとネコ科ではトラに次いで2番目。
しかも狩りもあまり上手ではないというのだから驚きです。
ライオンは普段オスが1~3頭、メスが10~12頭の群れで行動し、アフリカの草原に生態的地位を確立しています。
狩りは夜間にほとんどメスが行いますが狩りの成功率は低く30%ほど。大型の哺乳類を狩る時にはオスが参戦することもありますがいずれも体重における心臓の割合が極端に低いので瞬発力があっても持久力がなく執拗に獲物を追いかけることはしません。
百獣の王とは言えど、天敵は皆無ではありません。
特に子供はジャッカルやハイエナ、ハゲワシ、ヘビなどに捕食されますし、成獣でも狩りの途中でヒヒやバッファローなどに反撃され打撃を受けることもあります。
トラ
トラはライオンよりも体が大きくアジアを中心に分布し密林や背の高い草原に生態的地位を確立しています。
動物園などでは近くで飼育展示されることもありますが、自然界でトラとライオンの生息域が重なることはありません。
風格こそライオンに見劣りしない逞しさがあるトラですが、ライオンよりも更に狩りが下手。
その成功率は10%程度と言われています。
単独で行動することの多いトラは集団で狩りを行うことも出来ませんし、とりわけ足が速いわけでもありません。
彼らが日々気に留めているのはハゲワシたちの鳴き声やサバンナに響き渡る仕留められた動物たちの悲鳴。周囲の状況を的確に判断して勝さいのある所に向かうという頭脳的判断力が彼らの武器なのです。
天敵はヒョウやクマなどの大型哺乳類や大型のワニなどですが、力は五分五分です。
ヒグマ
日本にも北海道に生息しているヒグマ。
ゆったりとした動きの中に底知れぬパワーを感じる存在です。彼らの体重は300~800kg程あり、ヨーロッパからアジアにかけてのユーラシア大陸と北アメリカ大陸に幅広く生息し、生態的地位を山岳地帯や森林に確率しています。
視力の弱い種類が多いのですが、発達した顎と湾曲した鉤爪、得意の木登りで敵を回避したり捕食したりします。
基本的に雑食ですが動物食傾向が強く昆虫や哺乳類、サケなどを捕食するほかトラやオオカミ等が殺した獲物を盗んで食べることもあります。
天敵は実は同じヒグマ。
幼獣は特に成獣に狙われやすく、子連れの母熊は他のヒグマに近づきません。
ゴリラ
かつては攻撃的なイメージのあったゴリラですが最近の研究では実は平和を愛する動物で優しい一面を持つと言われています。
アフリカ大陸に分布し多湿林に生態的地位を確立しているゴリラですが最近では海岸付近の低木林、一次林、二次林にも生息することがわかっています。
オス1頭とメス複数等からなる群れをつくります。
植物食傾向の強い雑食で、果実、植物の葉、アリやシロアリなどの昆虫を食べますが、アリを採取する時には平手で地面をたたいて巣を壊して食べたり、アリの群れに手を突っ込んで舐めたりします。
大きな体とパワーを持ちながら、アリや果物を食べて穏やかに暮らすゴリラ。そんなゴリラを襲うのはヒョウです。
無防備であるが為に寝ているところを襲われてしまうのだそう。
神経質で痛みに弱いゴリラはヒョウに襲われるとパニックに陥りなす術がないのだとか・・・。
もしとっさに反撃出来たとしたら、ゴリラの張り手一撃でヒョウは死んでしまうだろうと言われています。
ハイエナ
したたかにずる賢く生きているイメージのあるハイエナ。
ハイエナはアフリカのサバンナ、インド、アラビア半島、アフリカ大陸などに広く分布し主にサバンナや低木林、林縁の砂漠・半乾燥地帯に生態的地位を確立しています。
夜行性で昼間は穴や岩の隙間などで休んでいます。
中型のハイエナは狩りをするよりも腐肉を漁ることの方が多く、ハイエナの印象を決定づけてしまっていますが、実は大型のブチハイエナなど葉時速65㎞で走ることができ、更に並外れたスタミナを持ち合わせているので自分で捕食することも多く、逆にライオンに獲物を横取りされることもある程。
つまり、ハイエナの天敵はあの百獣の王と言われるライオンなわけです。
ライオンはハイエナの餌を横取りするだけでなくハイエナを襲って殺してしまうこともあります。
そのまま捕食することはあまり無いようで、一種の見せしめではないかと言われています。
イリエワニ
イリエワニはインド南東部からベトナムにかけてのアジア大陸、ニューギニア島、北部沿岸、カロリン諸島辺りまで広い範囲に分布し汽水域に生態的地位を確立し、イリエワニの名前もこの生息域に由来しています。
しかし地域によっては河川の上流域や湖、池沼などの淡水域にも生息します。海水に強いので海流にのって沖合に出て島嶼に移動することもあります。
体重は450kg程でワニの中でも攻撃的な性質です。
大型の個体は人間を襲ったという報告もあり、人食いワニとして世に名を知らしめました。
ヒトをも食ってしまうほどのワニですから基本的に天敵はいないと言えます。
しかし体の大きさで勝るカバやトラがイリエワニと戦って勝つことはあるようですし、孵化する前の卵は魚や鳥に捕食されることもあります。
アナコンダ
恐ろしいヘビの代表アナコンダ。トリニダード島と南アメリカに分布し、熱帯雨林の湿地や川に生態的地位を確立しています。
100kgを超える個体もいて夜行性で昼間は川の浅瀬や水辺の枝などで休んでいます。
彼らの武器は素早い動きと長い体。水中や茂みの中などで獲物を待ち伏せして通りかかった獲物を素早い噛みつきで捕らえ、長い体で巻き付いて締め上げます。人食い大蛇としても名が知られるアナコンダは人間にとっても危険な生物です。
アナコンダの天敵を敢えて挙げるとするとワニでしょうか。
なぜならワニはアナコンダの強力な締め付けにびくともしないのだそうです。
コモドドラゴン
コモドドラゴンはあまり馴染みのない生物でしょうか。これを機会にお見知りおきを。
インドネシアに分布し、乾燥した落葉樹林やサバンナ、雨季に飲み水がある河辺林などに生態的地位を確立しています。
体長は250㎝前後で体重70kg前後。臭覚が発達し4㎞先にある動物の死骸の臭いも察知することができます。
発達した丈夫な四肢と鋭い爪、歯の縁は鋸状で獲物の肉を切断できるように特殊化していてこれらの武器を使って獲物を待ち伏せして通りかかったイノシシやシカ、野生化したスイギュウや山羊などに襲い掛かり捕食します。
他にも齧歯類やコウモリ、サル、ヘビ、鳥類などもその対象です。
コモドドラゴンの天敵は悲しいかな同じコモドドラゴン。
エサが少なく絶滅危惧種にも指定されているコモドドラゴンの最後の生き残り戦略なのかもしれません。
ジンベイザメ
ジンベイザメは日本の水族館でもお馴染みの巨大なサメ。
世界中の熱帯、亜熱帯、温帯とその表層海域に生息し回遊していますがラグーンや珊瑚環礁、湾内に入り込むこともあり、更に河口付近や深海でも確認され、広い生息域で低次消費者の生態的地位を確立しています。
最大全長は20mにもなり、プランクトンの他小魚や海藻などを飼い水後と吸い込んで鰓耙で濾しとります。
ジンベイザメの天敵はシャチや大型のサメと言われています。
しかしシャチとは生息する海域が違うこと、更にジンベイザメの皮膚の厚みは10㎝以上もある事などから成魚が捕食されることはほとんどないようです。
ただし幼魚は色々な大型魚類から狙われます。
ホオジロザメ
ホオジロザメは亜熱帯から亜寒帯まで世界中の海に広く分布し日本近海にも分布が確認されています。主に表層付近を泳ぎ沖合から海岸線付近まで近づき、海表面近くにいることもありますが250mより深い所にも潜ります。
高い運動能力の持ち主で瞬間最高時速は25~35㎞程度。
海面から体が完全に飛び出す高さまで跳躍することも出来ますし、更に学習能力も優れているので獲物を襲う時には過去のデータと照らし合わせて狩りを行っていると言われています。
天敵は人間やシャチ、他の大型のサメ。
大型のサメは小型のホオジロザメを捕食します。
また、シャチはホオジロザメの身体をひっくり返して擬死状態に陥らせて抵抗できなくなってから捕食すると言われています。
硬い骨格をもたないホオジロザメはイルカなどが体当たりしてきただけでも内臓が破裂して死に至ることもあるようです。
シャチ
海のギャングと言われるシャチは世界中の海に分布していて、地球上で最も広く分布する哺乳類の一種ともいわれています。
また最も速く泳ぐことができる哺乳類でその時速は60~70㎞ほどでエサを求めて一日100㎞以上も泳ぐことができますし、知能も高く獰猛でどん欲な面もあり、口に入れた魚を吐き出してカモメをおびき寄せ、集まってきたカモメを捕食したり、鯨の死体の場所に訪れ死体を食べたりもします。
好物はエイですがエイの尾にある猛毒によって致命傷を負うこともあります。
肉食性で海洋系では食物連鎖の頂点に立ち、天敵はいません。唯一の存在が人間ということのようです。
シロナガスクジラ
シロナガスクジラは現存する最大の動物種。記録では34mのものまで存在し、あらゆる既存の動物の中でも最大の種とされています。全海域に生息し回遊を行っています。
食性はオキアミにほぼ特化しており、鬚板で濾しとって採食を行いますがエサの少ない時期になると6か月ほどの絶食にも耐えうると言われています。
そんな地球最大種と言われるシロナガスクジラの天敵はシャチとマッコウクジラと人間と推測されています。
シャチは戦略的な方法でシロナガスクジラを襲います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。珍獣たちの能力と天敵事情。
やはりどんな生きものといえど、皆何かに怯えながら、警戒しながら日々の命を繋いでいるということがわかります。
人間も動物も一日一日を大切に!?
(ライター ナオ)