百獣の王、ライオン。その強さのシンボルとなっているタテガミと堂々たる風格が子供からも大人気です。
そんなライオンですが、いろいろと彼らなりの苦悩もあるようで・・・・・。
まさにアフリカのサバンナに君臨する王者という呼称が相応しいライオンですが、実はそれぞれのライオン達にとっては、その生活は大変な危険に満ち溢れた厳しいものとなっています。
ライオンの生態
ライオンはサハラ砂漠以南のアフリカ、インド西部に生息しています。ネコ科の動物の中ではトラに次いで2番目に体の大きな動物と言えます。雄ライオンの体重は250kgになるものもいるとか。
オスが1~3頭、メス10~12頭ほどの群れで行動していて、なわばりの広さは20~400㎢にもなります。
鳴き声や尿でそのなわばりを主張し、その範囲はエサのあるなしによって変わってくるようです。
近年は生息数が減少していて、アフリカではこの20年でかつての30~50%の頭数にまでなってしまったのだとか。
その原因は生息域の減少はもちろんですが、人間の乗る車との衝突だというのだから嘆かわしい。
オスは基本的には縄張り内のメスを守り、狩りはメスが集団で行います。
あまり狩りが上手ではないので、夜に行うことが多いのですが、背丈の高い草が生えている場所で身を隠せるようなときは昼に行うこともあります。
扇型に相手を取り囲むように、じわりじわりと極限まで近づいてとびかかります。
メスの妊娠期間は4か月ほどで、授乳期間は7~10か月。集団とは少し離れた巣穴で1~4頭の子供を産みます。メスは子育ての時、同時に生まれた集団内の自分の子供以外の子供にも乳を与えます。
3~4か月経つころメスは再び子供を連れて集団の中に戻ります。
2~3年で成長したオスは群れを出て新しい群れを形成しますが、新しい群れをつくるまでの期間は同じ群れにいたオス同士でいることが多いようです。こんな時はオスも狩りをしなければなりません。
ライオンの天敵
無敵の王者と言われる強さを誇るライオンですが、意外にも天敵はいるようです。
ライオンvsヒヒ
メスライオンはヒヒの子供を狙います。巣に近づいて親の隙を見て子供をくわえていきます。
集団でいることの多いヒヒですが、とりあえず狙いやすいのは子供。
大きなヒヒには4頭がかりでとびかかっていくこともあります。
ライオンは木に登ることはできますが、木登りがそれほど上手なわけではなさそうで、木に登ったヒヒは若干有利になります。木の上に上ったヒヒは後から追ってくるライオンに尿をかけて反撃します。
強力な反撃とはとても言えないのですが、この作戦がきいたようで、ライオンは退散!
ライオンvsキリン
自分の体より何倍も大きいキリンも狙います。大きな獲物を狙うときは首筋や口などに噛みつき、窒息死や脳溢血状態にすることが多いのですが、今回もその作戦で。
走って逃げるキリンの首筋めがけて飛びついたライオン!
ところがあまりのキリンの勢いに吹っ飛ばされてしまいました。挙句の果てには足で蹴りを入れられる始末。ハンティング失敗です。
ライオンvsクロコダイル
水浴びでもしていたのでしょうか?
それとも何か獲物を狙っていたのでしょうか?
忍び寄るクロコダイルの姿にライオンは気づきません。
一瞬水の中に沈みこまされたように見えましたが、何とか脱出。
間一髪のところで逃れることができたようです。水の中ではライオンはクロコダイルに捕食されてしまうこともあるのだとか。
陸地では無敵でも、水の中までとはいかないようです。
ライオンvsバッファロー
雄ライオンは立派な角のバッファローにとびかかります。しかし、一発で仕留めることはできません。
一生懸命背中に噛みつこうとしますが、ライオンの口ではうまく噛みつくことができないようです。
致命傷を与えられないまま、もたもたしていると、バッファローの強力な角で反撃されてしまいました。
すごすごと戻るオスライオンの姿に百獣の王の悲哀を感じます。
実はライオンはオスもメスも体重における心臓の割合がとても低く、メスで0.51%、オスに至っては0,45%ほどしかないのだとか。
そのため、持久力が極端になく、すぐに諦めて、追うのをやめるのはしょうがないことなのです。
メスのライオンは最大で時速81㎞を出せるそうですが、それは本当に瞬間的で、持続性はないので狩りを行うときは十分に獲物まで近づくことが必要になります。
百獣の王ライオンの苦悩
サバンナで全ての生物から恐れられているライオンですが、百獣の王になる発展途上のライオンの子供たちはそういうわけにもいきません。
ライオンの子供はジャッカルやハイエナ、ハゲワシ、ヘビになどに捕食されるだけでなく、アフリカスイギュウなどもその臭いを嗅ぎつけて、積極的に巣穴まで殺到して子供たちを踏み殺したりするそうです。
それだけではありません。実はライオンの子供たちにとって最も抗し難い脅威は、群れの外から侵入して来るオスライオンです。野生下でのオスライオンの寿命は長くて10年と言われ、そのほとんどが他のオスとの戦いで負った傷が原因で死んでしまいます。
オスライオンの人生は茨の道
オスは他のライオンのプライドを中心とした外敵から群れを守る事を主な役割として担いますが、このオスライオンはほとんどの場合が、群れで育った生え抜きのメンバーではありません。
運良く成獣になれたオスライオンたちは4~5歳になると群れを追い出され、オスだけの兄弟でサバンナを放浪します。
目的は他の群れを掌握するオスライオンを追放する為の力を付ける事にあります。
野生下でのオスライオンの寿命は長くて10年と言われ、そのほとんどが他のオスとの戦いで負った傷が原因で死んでしまいます。
4~5歳で群れを出た彼らは、運が良ければ他の群れのオスを追い出す事に成功し、群れを形成して子孫を残す事が出来ますが、オスライオンの最盛期は3~4年しかありません。
この3~4年が過ぎれば、群れの外からやってくる新たな若いオスライオンにその存在を脅かされるようになります。
オスライオンによる群れの子殺し
過酷な環境を生き延びて群れを持つ事が出来たオスライオンたちに残された時間は、そう多くはありません。
一刻も早く自分の子孫を残す事を遺伝子にインプットされた彼らは、メスの発情を促す為に、事もあろうか群れに存在する幼獣を一匹残らず殺してしまう事があります。
ライオンのメスは一般的には群れの子供たちを共同で育てる事が知られています。
しかし、中には群れの子供たちを殺してしまう凶暴なメスライオンも存在します。
つまり、敵は自分たちの中にいるということ。ライオンの天敵はライオンだということです。
このように食物連鎖の頂点に立つライオンに立ちはだかる生存への壁は意外に厚く、むしろライオンに捕食される大型の草食動物の方が成獣になる確率は何倍も高いのです。頂点に立つものだからこそ自分たちに厳しく生きる姿を示さなければいけないのかもしれません。
子供のライオンが成獣になれる確率はたったの50%なのだとか
オスライオンの最期
若いオスライオンに群れから追い出された老ライオンの最期は、傷つき、疲れ果てて新たに群れを奪い取る体力も気力もなくなります。
そのままそこで一頭で倒れるように死んでいきます。
でも、それは自然の流れ、栄枯必衰の一つの形なのかも。
孤独で孤高だからこそかっこいい。いつか滅びゆくからかっこいい。
永遠なんてあり得ないわけで、こうして、百獣の王ライオンはハイエナやハゲタカたちのエサとなってまたサバンナを回していくのです。
(ライター まるお)