ミツツボアリという美味しそうな名前を聞いたことがあるだろうか。
ぷっくりと膨らんだ琥珀色のお腹にはたっぷりの蜜が入っていて・・・・
ミツツボアリって?
ミツツボアリは世界中で1万種類ほどいるといわれているアリの仲間で、その中でもお腹に蜜を蓄える習性のある珍しいアリです。
ハチは巣に蜜を蓄えますが、ミツツボアリの貯蔵場所は仲間のお腹の中なのだから驚きです!
オーストラリアやアリゾナの砂漠地帯に生息していて、エサの少ない時期に、種が生き延びる方法として賢いアリたちが進化した形とも言えます。
ミツツボアリの生態
ミツツボアリは他の多くのアリがそうであるように、普段から集団で生活しています。
緻密な巣穴を形成し、1㎜程の巨大な巣穴は人間がすっぽりと入ることができるほどの大きさです。
その巣穴で、はじめは複数の女王アリが一緒に生息して、交尾し、卵を産みます。
より多くの卵を産み、働きアリたちを増やすための、種としての行動と考えられています。
時期に、強いメスアリだけが一匹の女王アリとして、巣穴を支配することになるのですが、この時、他の弱い女王アリは働きアリたちのエサになります。
これもまた、種を保存するためにはとても効率的な方法なのでしょう。
女王アリが一匹に決定するメカニズムとして、女王アリの出すフェロモンが影響しているといわれています。
産卵能力の高い大きな女王アリは、多くのフェロモンを放出し、このフェロモンは他の弱い女王アリたちの成長を妨げる効果があるのだとか・・・
まあ、これは人間界でもよくあることで・・・空気が読める大人なら、女王の出すオーラにはすぐ気づくもの。
人間でも誰しもが自然にやっていることなのかもしれません。
人間の場合は弱い女王は早々にその集団から離れることが多いようですが・・・
本題に戻ります。
女王アリ以外のアリは働きアリと巣穴を守るアリに分かれます。
働きアリはせっせと蜜を集めに出かけ、アカシアの樹液や花の蜜を集めますが、直接花や樹から蜜を吸ったり、アリマキという昆虫の吸った余分な甘露を彼らから吸い取るという2つのやり方があります。
アリマキはアリたちがそばにいることで敵から身を守ることができるので、両者は互いに共存関係にあるのだそう。
働きアリたちは集めた蜜を巣持ち帰り、貯蔵係のアリに与えます。
触覚による独自の暗号を伝えることによって、貯蔵アリが口を開け、そのタイミングで蜜を流し込むのだとか。
貯蔵アリの胃には特殊な弁がついていて、この弁を開閉させることによって、エサのない危機的状況の時に蜜を放出する、という仕組みになっているのです。
胃袋にたっぷりの蜜を蓄えたアリたちは動くのも困難なほどお腹が膨らみます。そのため、巣穴の天井にぶら下がった状態で、無駄に動かず時を過ごします。
エネルギーをほとんど使わない貯蔵アリたちは自らが蜜を消費することもなく、危機的状況の時の仲間のためにぶら下がっているのです。
アリの巣穴に琥珀色に並んで垂れ下がっている光景はちょっと神秘的です。
食料としてのミツツボアリ
オーストラリアの先住民、アボリジニーはアカシアの蜜を集めたミツツボアリの蜜の部分だけを引きちぎって、食していたといいます。
人間にとってもそれは大層美味しく、元気の出る、栄養源なのです。
私の住む北海道では6月ごろからアカシアの花が咲き始めます。
花粉症の人にとっては本当に憂鬱でたまらない季節ですが、アカシアのきれいな花はてんぷらとして食べることもあります。
アカシアの花のほのかな甘さは、てんぷらにすると、とても上品。
塩をかけていただくアカシアのてんぷらは野性味あふれる春の大地のごちそうです。
興味のある方はぜひお試しください!!
(ライター ナオ)