まるで枯れ葉?もし、こんな昆虫がいることを知らなければ、目を止めることもなく、その存在に気付くこともなく通り過ぎてしまうでしょう。
ムラサキシャチホコって?
ムラサキシャチホコはシャチホコガの一種で、その擬態がとびぬけて洗練されている蛾です。
その存在はまるで森の忍者!!よーく目を凝らさなければ探し当てることができないほどの完成度です。
体長は48~55㎜程。北海道から九州、中国などに生息しています。
ムラサキシャチホコの幼虫
もともとシャチホコガの種類は幼虫の時、敵が近づくと、まるでしゃちほこのようにエビぞりになって相手を威嚇することころから名づけられたと言われています。
ムラサキシャチホコも同様に、思い切り体をそらせて、自分の存在を大きく見せようとします。
頭は黒っぽく、お尻の部分はふたつに割れたような形になっていてます。金のしゃちほこからは程遠いですが、彼らにとっては、めいいっぱい。
幼虫の時にはすでに不思議な模様が体に入っていて、鮮やかなライムグリーンの胴体のところどころに茶色の模様があります。幼虫の時から、すでに成虫の姿を予測させるような風貌です。
幼虫時にはオニグルミの葉を好んで食べます。
小さいのにしっかりとした歯を持っていて、遊びかじりなどせずに、しっかりと端からむしゃむしゃと大胆に食べていきます。
ムラサキシャチホコの成虫
枯れ葉が落ちているようにしか見えないムラサキシャチホコの成虫。
乾燥して淵部分がカールしている、枯れ葉特有の様をしっかりと模倣していて、とにかく見事!!
どんな芸術家も顔負け‥‥といった感じです。
しかも、すごいのは、それが実際にカールしているわけではなく、鱗粉の濃淡によって平面にその模様を描き出しているというのだから・・・とにかくこれは驚きを通り越して、神業としか言いようがないほど。
つまり、実際の羽は全く普通の蛾と同じ形状というわけ。飛び立つ時に初めて「あ~~蛾の形をしているんだ・・・」と認識できる、人間の目をもだましてしまうほどの完成度なんです。
ムラサキシャチホコ以外の擬態する蛾
ムラサキシャチホコ以外でも擬態する蛾は沢山存在しています。
例えばシャチホコガの種類でもツマキシャチホコガは桜の木の枝片に擬態していて、ムラサキシャチホコ同様そこに枝が落ちているとしか思えない完璧な擬態!!
タカサゴツマキシャチホコはまるで枯れ枝コンクリートに落ちているかのよう。
くるっと丸まって見えるその感じも、見事に再現されています。
キタテハやアケビコノハ、アカエグリハなどもカールこそ表現されていないものの、まるで枯れ葉のような擬態です。
キノカワガはその名の通り、樹の樹皮に擬態し、シラホシコヤガは繭が木の幹に同化しています。
アトキハマキやミダレカクモンハマキなどなど、挙げればきりがないほどです。
シャチホコガ以外ではハチに擬態する蛾が良くしられていて、スカシバガはスズメバチにそっくりです。
蛾以外の昆虫でも、枯れ葉や枝などに擬態する昆虫は多数います。自然界に溶け込んで目立たたなくなってしまおうという、弱い者たちの魂胆。
生きるための必死の知恵はいつでも素晴らしい芸術を生み出します。
テレビで見る都会の若者たちの奇抜なファッションは、一人一人に目を凝らしてしまえば、とても奇抜なものだけれど、都会の人ごみの中やネオンきらめくビルの間で見れば、それは奇抜でもなんでもなく、かえってそれが極自然に見えたりします。
逆に黒一色のシンプルなコーディネートの方が目立ってしまったりして・・・。
もしかしたら、若者たちの奇抜なファッションも、目に見えない何かから逃れるための都市への擬態なのかも。
そう考えると、強いのは誰で、弱いのは誰なのか。しっかりと目を凝らさねば!と思ってしまったりして。
(ライター ナオ)