鉦叩(カネタタキ)……という昆虫をご存知でしょうか?
カネタタキと読むこの昆虫は、チチチという鳴き声が鉦(かね)を叩く音に似ていることから、その名がつきました。
当記事では、そんなカネタタキの生態と鳴き声、そして駆除方法について紹介します。
カネタタキの形態
カネタタキは、バッタ目コオロギ上科カネタタキ科の昆虫です。
体長は9ミリから15ミリ程度で、細長く平たいシルエットとなっています。
ボディは淡い褐色です。
ハネの退化が著しくて、オスのみが発音用に前バネを持ちます。
ただし、ウロコ状で非常に小さなものとなっています。
ちなみにメスにハネはありません。
カネタタキは、アオマツムシの幼虫に姿がよく似ており、また、生息地も重複しているため、間違えられることがしばしばあります。
ところがそれ以前の問題として、バッタ目の昆虫は、そもそもよく似ているので、筆者のような素人には見分けがつかなかったりします。
バッタ目の昆虫
バッタ目の昆虫は、カネタタキのほかには、バッタ、キリギリス、コオロギ、ケラ、カマドウマなどがいます。
さすがにカネタタキとバッタの違いは分かりますが、同じコオロギ上科のコオロギやスズムシ、クサヒバリ、マツムシあたりになるとちょっと違いが分かりません。
カネタタキの生態
さて、そんなカネタタキですが、成虫は8月から12月にかけて出現します。
野生では、もっとも遅い時期まで、鳴き声が聞けるバッタ目の昆虫です。
日本では、本州・四国・九州・南西諸島に分布し、南西諸島では通年発生しています。
樹上性で、都市部では街路樹や庭木に多く生息します。
JR新宿駅の周辺や秋葉原では多くの個体が認められ、逆に、奥深い森林や山地には棲息していないようです。
ここからが問題なのですが、実は、夜行性です。
カネタタキの鳴き声
カネタタキのオスは鳴きます。
活動期の前半には夜間に鳴きます。
気温の低い秋以降は昼夜を問わず、「チッチッチッチッチッ」という小さな声で鳴きます。
この声がカネを叩く音に似ていることから、カネタタキといわれているのですが、ただ、あらためて聴くと現代に生きる我々からしてみれば、馴染みのないカネの音よりも、隣の部屋から聞こえてくる目覚まし時計の電子音によく似ているんですよね(音が小さいのでなおさら)。
初めて聴いたかどうかはともかくとして、それが筆者のカネタタキの鳴き声に対する第一印象でした。
そんなカネタタキの鳴き声ですが、オス同士が近づいたとき、様変わりします。
カネタタキのオスは、ほかのオスと近接すると普段とは鳴き声が変わります。
「チルル、チルル。チルチル、チルルルルルル!」と、それはもう競いあって激しい鳴き声を発するのです。
しかも、その鳴く声が放たれる場所は、葉の裏側や、葉と葉が重なったすきまといった人の目につきにくいところです。
カネタタキの駆除方法
カネタタキは、夜行性で、昼夜を問わず鳴き声を発します。
その鳴き声は、かん高く耳につくものですが、普段は小さな音量です。
ところが、ほかのオスが近くにいるとその対抗意識から、けたたましい鳴き声となります。
何度も書きますが、夜行性で、昼夜を問わず鳴き声を発する、そんなカネタタキがです。
山や森に棲むカネタタキなら問題ありません。
都会でも街路樹や植えこみに棲息するカネタタキなら、まあ問題ないでしょう。
ところが困ったことに、カネタタキは家に侵入するんですよね。
家のなかで昼夜問わず鳴かれてはたまりません。
というわけで、カネタタキを駆除しようという話になるわけですが、これがなかなか難しいようなのです。
庭の木に棲んでいる場合は、比較的容易です。
日中は確実に木にいますので、ガサガサと揺らすと落ちてきます。
ただ、動きが素早いので、広げた傘を逆さにしてそこに落ちるようにする必要があります。
そうすれば捕獲することができるでしょう。
そしてもしカネタタキが家に侵入した場合は、覚悟が必要です。
カネタタキは、葉の裏側や、葉と葉が重なったすきまといった人の目につきにくいところを好むので、本当にどこにいるのか分かりません。
鳴き声を頼りに探しても、ヤツらは素早いので殺虫スプレーもなかなかあたらないかと思います。小さいですしね。
そんなカネタタキですが、実はゴキブリホイホイにかかります。
これがもっとも効果的だといわれています。
ゴキブリホイホイだけでは心細いというかたは、昆虫用の飼育ケースにエサを入れて誘きだすとよいかもしれません。
ちなみに、カネタタキは何でも食べますが、ナスやキュウリを好むという話です。
そういうところは、さすがバッタ目コオロギ上科の昆虫、コオロギとよく似ています。
夜中に鳴きさえしなければ、可愛いんですけどね。
(ライター ジュン)
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