てんとう虫は神の使い!?

てんとう虫は、漢字で書くと天道虫。この天道とは、太陽もしくは太陽神のことですから、昔の日本人はてんとう虫のことを、神様に近いような崇高な存在だと思っていたのではないでしょうか。

そもそもてんとう虫は、その習性として高いところにトコトコ登って行き、てっぺんから空に向かって飛び立って行きます。

その姿がまるで太陽に向かっていくように見えるので、その名が付いたといわれているようです。

ですから日本人にとってばかりでなく、世界の多くの国で、幸運をもたらすムシ、神様の使いとしてやって来たムシとして、他の昆虫とは違ってすごく良いイメージを持たれており、とても大切に扱われる存在なのです。

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幸せを呼ぶてんとう虫

普通、ヒトにムシが止まると・・たとえばハエが止まると汚らしかったり、蚊が止まると血を吸われたりと、ネガティブなイメージがつきまとい、すぐに追い払われてしまいますが、てんとう虫だけはその扱いが違います。

フランスでは、てんとう虫が止まると、どんな心配事も一緒に飛んで行ってしまうと言われ、とても喜ばれます。

ベルギーでは、若い女の子の手にてんとう虫が止まると、一年以内に結婚すると言われて、幸運の象徴とされていますし、スイスでは、夫婦に赤ちゃんが授かる前兆だと言われています。

201108141600【著作者:Rita from CoffeeShop Free PS/PSE/LR Actions/Preset】

アメリカでは、家の中でてんとう虫を見つけると吉兆と考えられており、その星(斑点)の数だけお金が舞い込むと言われています。

アジアの多くの国では、てんとう虫は人の言葉がわかり、神に祝福された生き物であると考えられ、とても大切にされているのです。

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神様のデザイン

甲虫目のてんとう虫科に属するてんとう虫の仲間は、世界で4500種ほどおり、日本には約200種が生息しています。

成虫の体長は、数ミリから1センチほどのごく小さなものが大半を占めます。

半球状の体型と色鮮やかな体色が特徴で、赤地に黒の水玉模様のものが特に有名ですが、とにかく背中の模様が派手である種が多いのは確かです。

その名称も、背中の色や水玉の斑点の数で命名されているものが多いほどですから、それがてんとう虫の最大の特徴といってもよいでしょう。

この背中の配色や模様は、まさに神様のデザインといっても過言ではありません。

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メジャーなのはナナホシテントウ

国内に多いのは、ナナホシテントウとナミテントウです。

両種ともアブラムシを大量に補食するので、益虫と呼ばれてとても大切にされています。

数の上では圧倒的にナミテントウの方が多いのですが、ナミテントウは黒地に赤の二つ斑点や赤地に黒の多数の斑点、無地のものなど色柄が複数あり一定ではありません。

 

それに対して、ナナホシテントウは赤地に黒の七つ星(斑点)の同柄のものしかいないので、同じ柄のものを見かける機会はナナホシテントウの方が多いと言えます。

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死んだふりと毒ガス効果!

てんとう虫は、成虫も幼虫も、驚いたり敵が近づくと、死んだふりをしてまったく動かなくなります。

しばらくするとまた動き出しますが、なかなかおもしろい行動を取るのでついつい構いたくなります。

ただし、このときに黄色の液体を分泌することがあり、それがカメムシほどではありませんがけっこう強烈なニオイがするので要注意です。

白いシャツなどに付くと洗濯をしてもなかなか落ちません。

てんとう虫には天敵が少ない!

そもそもこの悪臭を放つ分泌液は、アルカロイドを含む苦みのある液体で、外敵を撃退するためのものです。

そして成虫の硬い外皮と毒々しい背中の模様と相俟って、捕食者に対して、自分を食べてもまずいんだというアピールをしているようなのです。

そういった効果からなのか、てんとう虫は派手で目立つ存在であり、適度な大きさであるにもかかわらず、鳥類や他の昆虫に捕食される機会はほとんどありません。

天敵とあえて言うならば、寄生バチなどの仲間くらいしか存在しないようです。

ただし幼虫はその軟らかさからか、アリなどの昆虫が捕食することはあります。

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てんとう虫の想い出

私は子どもの頃、てんとう虫でよく遊びました。

 

捕まえる・・と言っても、小さな小さな昆虫ですから、子どもの指先であっても潰してしまうことが多いものです。

指でつまむよりも手のひらにそっと落とす感じで木などから移動させます。

しばらくは死んだふりをして動かなくなっていますが、やがて少しずつ動き出し、手のひらを這い回ります。

それがくすぐったくて、それだけで笑い転げてしまうほどおもしろいのです。

それから指先に向かって這い出して行き、指の先端に達すると翅を広げて飛び立ちます。

飛び立つとすぐに手で払い落とします。

地面にたたき落とされたてんとう虫は、そこでまた死んだふりをしています。

 

つまみ上げてまた手のひらに乗せておき、再び動き出すまで待ちます。

そして、同じように指先まで這わせて飛び立つのを観察する・・これを飽きずに何度も繰り返していましたっけ。

こうして、時間が経つのも忘れて夢中になってムシたちとよく遊んでいたものです。

死んだふりをしたり、殻などに閉じこもったりするムシたちには、子どもたちは無上の喜びを感じてしまうようです。

動き出すそれまでの時間がもどかしいながらも、ワクワクした気持ちにさせてくれるのです。

それはダンゴムシ然り、カタツムリ然り、てんとう虫然りです。

ただし、黄色の液体が指や手についたときは、すぐに手を洗ってください。

それが付いていることを忘れてしまい、指をなめたりして、苦い思いを何度もしたことがあります(笑)

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てんとう虫は害虫か益虫か!?

てんとう虫は、アブラムシやカイガラムシを食べる肉食性の種が、益虫として広く世の中に知れ渡り、大切にされています。

近年、肉食性のてんとう虫は、化学薬品などの農薬を使わずに農業害虫を退治する生物農薬としても積極的に活用されています。

そのほかに菌類を食べる菌食性のものと植物の葉などを食べる草食性のものがいます。

ところが草食性のものは、農業害虫として扱われているのです。

結局、昆虫は食べるものにより、益虫か害虫かが決まってしまいますし、たとえ人間の役に立っていたとしても、姿形の醜悪さで不快害虫・・ゲジゲジやヤスデなどが典型的ですが、嫌われて駆除の対象にされてしまいます。

人間が大切にしている動物や植物を守ってくれれば益虫ですし、人間が飼っている動物や農作物に害を与えれば、害虫と呼ばれてしまうのですから、人間とは勝手なものですよね。

 

害虫としてのてんとう虫

草食性のてんとう虫は、ほとんどが害虫扱いされています。

背中に毛が生えているものが多く、甲虫特有のつやのあるテカテカ感が見られません。

その名の通り、28の星(斑点)があるニジュウヤホシテントウは、ジャガイモの葉などを食べます。

正式なてんとう虫であるにもかかわらず、テントウムシダマシなどと呼ばれ、ニセモノ扱いされることがあります。

 

草食性のてんとう虫は、特にナス科の植物の葉を好んで食べます。

ナスやジャガイモの葉などを食べますが、直接その実や芋を食べるわけではありませんので、直接的な被害を与えているわけではないのです。

それでもその葉を食べつくせば、農作物の生育が阻害されることにつながりますので、駆除の対象になってしまうのです。

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やっぱり益虫の菌食性のてんとう虫

色鮮やかな黄色を呈するキイロテントウや白い14個の紋があるシロホシテントウは、ウドン粉病の原因になる菌類を食べてくれるので、益虫として扱われています。

 

ウドン粉病とは、ぶどうや桃、キュウリ、バラなどの葉の上にうどん粉を撒いたように白い菌が広がる植物の病気です。

それぞれ特定の植物に決まった菌がつきます。

菌食性の代表格であるキイロテントウは、体長5ミリほどでナナホシテントウの半分ほどしかありませんが、生態はほぼ同じです。

幼虫時代からウドン粉病菌を盛んに食べてくれるのです。

てんとう虫の幼虫は、成虫とまったく似ていない

てんとう虫の成虫は、交尾のあと数十個ほどの卵を産みます。

卵は黄色からオレンジ色のきれいなものが多く、およそ2日程度で孵化します。

孵化した幼虫には翅がなく、トゲや突起を持つデコボコした小さな幅広の毛虫のような様相で、成虫とはまったく異なる想像もつかない体型をしています。

 

しかし食性は成虫と同じで、成虫が肉食性のものは幼虫も肉食性で、ほぼ同じものを食べます。また肉食性の幼虫では、エサが少ないと共食いすることがよくあります。

幼虫はおよそ2週間の間に三度脱皮し、四齢が終齢になります。

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てんとう虫は完全変態

終齢幼虫は食欲旺盛でアブラムシを食べまくり、やがて葉の裏側などの物陰で蛹(さなぎ)になります。

蛹は楕円形を呈し、ほぼ成虫の形に近いものです。

 

蛹でいる期間はおよそ一週間で、やがて羽化を迎えます。成虫は明け方に蛹を破り、30分ほどかけて羽化します。

羽化したばかりの成虫の翅はまだ黄色を帯びており、種特有の模様がありません。

時間の経過とともに徐々に模様が浮き出てきて、色鮮やかになっていくのです。

てんとう虫は、卵→幼虫→蛹→成虫と姿を変える完全変態の昆虫なのです。

卵から成虫までおよそ3週間ほどです。

 

寿命は2ヶ月くらい

こうして晴れて成虫になると10日ほどで交尾を開始し、メスは一日おきくらいに数十個ほどの産卵を繰り返します。

通常、その生涯に数百個、多い個体だと千個以上の卵を産むのです。

んとう虫の寿命は2ヶ月程度ですが、条件が良いと一年近く生きる個体もありますし、秋に生まれた個体は倒木や岩陰などで越冬し、春にまた活動を再開します。

ナナホシテントウは単独または数匹程度で越冬しますが、ナミテントウは、数十匹からそれ以上の大集団になって越冬することが知られています。

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てんとう虫の活動はアブラムシ次第

てんとう虫は、春から秋にかけてずっと活動しているように見えますが、実はそうではありません。

てんとう虫はアブラムシが少なくなる真夏には、休眠に入ります。これを夏眠といいます。

アブラムシが少なくなる=エサが減ると、落ち葉の下などの涼しい暗いところに行き、じっとして夏の暑さに耐え、エネルギーの消耗を防ぎます。

やがて涼しくなり、アブラムシが増えてくると活動を再開させます。

 

夏の間でもアブラムシがいれば活動しますので、夏が苦手だということではないようです。

11月ころになると、ナミテントウは空高く飛び、日当りのよい場所に到来します。

特に白い建物の外壁や明るい色の岩などに集まり、越冬の準備が始まるのです。

日に日に数を増やしていき、集団でその近くの倒木や落ち葉の下で越冬をします。

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大集団は害虫扱いされる

ただし、このとき大集団となって家屋に侵入してしまうと、たとえ役に立つ益虫だとわかっていても、害虫として駆除の対象になってしまいます。

人家近くに多数のてんとう虫が集まると、それぞれが越冬に快適な居場所を求め、窓の隙間や換気口などから暖かい屋内に侵入してきます。

てんとう虫の侵入を防ぐには、カメムシ用の忌避剤を噴霧したり、塗布する必要があります。

またその近辺の樹木に筵(むしろ)などを巻いておくと、そこに暖を求めてムシたちが潜んでいくので、屋内への侵入を回避することができます。

 

環境にやさしい生物農薬

肉食性のナナホシテントウ、ナミテントウなどの種は、アブラムシ退治の目的で、積極的に人間に利用されています。

特に最近では、化学薬品を使った農薬への安全性が問題視されたり、環境への影響が懸念されているので、その使用を巡って批判の対象になることが多くなっています。

そうしたことから、環境にやさしいという理由でてんとう虫を農作物のそばに放ってアブラムシを食べさせるという「生物農薬」として、大いに利用されているのです。

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いかに飛べなくするのか

ところが、成虫のてんとう虫はいざ食餌が終わると、さっさと移動を始めてしまいます。

幼虫ならば一カ所にとどまってくれますが、すぐに成虫になってしまいます。

それではせっかく活用しようとしても効率が悪くなってしまいます。

そのため翅を小さくしててんとう虫を飛べなくしてしまうような研究がおこなわれてきましたが、遺伝子を組み換えたてんとう虫を野に放つのは、かえって遺伝子汚染などの環境問題を生じさせてしまいます。

そこで、簡単に剥がせるタイプの接着剤を使って翅を固定する方法が開発されました。

これならてんとう虫の固体を一時的に飛べなくするだけで済みますので、てんとう虫にとっても、人間にとっても、良い方法であると言えます。

 

大食漢のてんとう虫!

さて、こうして大いに人間に利用され、期待されているてんとう虫ですが、いったいどのくらいのアブラムシを食べるのでしょうか?

あるデータでは、1日に幼虫で20匹、成虫になると100匹も食べるとのことです。

このデータを信じれば、畑で大きく成長した苗であれば、一株に数千匹程度のアブラムシがつくことがありますが、10匹のてんとう虫がいれば、わずか数日で撃退できてしまう計算になります。

それほど盛んに捕食してくれますので、アブラムシが大発生した植物であっても、てんとう虫を放すことで退治が可能なのです。

農業関係者にとって、てんとう虫がいかに有用な昆虫であるかよくわかります。

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ニセアカシアという恐ろしい木

ただしニセアカシアに付いたアブラムシだけは、てんとう虫に食べさせてはいけません。

ニセアカシアの樹液には、てんとう虫にとっての毒が含まれているからです。

少しわき道にそれますが・・・

ニセアカシアという白い花を咲かせる木があります。

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北米原産ですが、街路樹などとして植生されてきましたので、日本でも今では普通に見られる樹木のひとつです。

花は天ぷらにして食べると甘くておいしいそうです。

また長野県では生産されるハチミツの8割ほどがニセアカシアの花の蜜だといわれています。

ニセアカシアの木からは甘い樹液が出るので、アブラムシがよく付きますが、原産地の北米などではアリも直接木で生活します。

ですから最初、アリがニセアカシアの木を守り、木が甘い樹液を提供する共生関係を作っていると考えられていました。

ところが研究が進むとそうではないことがわかってきました。

実は、ニセアカシアは恐ろしい木なのです。
ニセアカシアの樹液には、糖分のほかにキチナーゼという酵素が含まれているのです。

これは糖の分解を不活性化してしまうものです。

アリがニセアカシアの樹液を口にしてしまうと、もうそれ以外の樹液をエサにすることができなくなってしまうのです。

つまり、アリは生きている限りニセアカシアから離れられなくなってしまうということです。

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てんとう虫の飼育法

てんとう虫は、どこにでもいますし、捕まえるのも容易です。

エサである生きているアブラムシさえ見つけることができれば、その飼育は誰でも容易にできます。

エサの与え方は、アブラムシのびっしり付いている枝や草などを見つけてきて、それを適当な長さに切って、そのまま飼育カゴに入れるだけです。

2578779839_17bab41fc1_o【著者:Anderson Mancini】

絵筆などを使って、アブラムシを払い落とし、それを葉っぱの上などにのせてやり、そのまま与えてもよいでしょう。

人工のエサ・・ミツバチの幼虫を粉砕したものに酵母等を加えたもの・・などが売っていますので、それでもある程度は育ちますが、やはり生きているアブラムシが好きなようです。

あとは適度な湿気さえあれば良いので、ティッシュペーパーなどを濡らせてカゴに入れておくだけで十分で、特別他のものは必要ありません。

(投稿者:オニヤンマ)

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