ナミテントウ(harmonia axyridis)は、日本中でよく見かけるテントウムシの一種です。
各地域で最もポピュラーに見られるテントウムシです、といってもいいくらいです。
それにしてもテントウの模様ってよく見るとずいぶん違うと思った事があるのではないでしょうか?
ナミテントウの特徴
甲虫目テントウムシ科のナミテントウムシは、成体の大きさが約5mm~8mmくらいの丸い甲虫です。
日本各地に生息しており、ナミテントウの成体がみられるのは春から秋までです。
冬の間、ナミテントウは何をしているかというと越冬しています。ナミテントウは大人の個体のまま、集団で越冬します。
ナミテントウが越冬するのは、気温が20度以下くらいになった時期です。
越冬というのは休眠のような状態ですが、昆虫にとって急な温度変化や低温は体によくありません。
ナミテントウが集団で越冬するのが特徴のひとつです。越冬場所は樹の割れ目など様々ですが、白っぽい建物に集まるともいわれます。
温度変化の少ない地域にぞろぞろ移動する事もあるようです。
ナミテントウは3月~10月頃まで成体をみかけますが、気温が上がる7月などの真夏には数が減ったりします。
日本の真夏の気温はナミテントウには暑すぎて、繁殖がいったん減少するからのようです。
よく見かけるテントウムシにナナホシテントウがいますが、ナナホシテントウは集団で越冬しないようですから、似ているように見えても冬に発見される越冬中のテントウムシはたいていナミテントウです。
ナミテントウのサイクル
ナミテントウが冬眠から目覚めるのは春先です。
ナミテントウの活動時期や模様に影響を与えるのは、主に気温のようです。
その頃には好物であるアブラムシ類たちも出てきます。
ナミテントウの繁殖時期は4月~6月頃です。ナミテントウのメスは葉の裏などに20~40個の卵を産みつけます。
卵は3日ほどで孵化し、幼虫になります。
ナミテントウの幼虫は黒くて全体的に棘の様なものがついています。
脚は3対6本、腹部にオレンジ色の箇所があります。ナミテントウの幼虫時期はたった2,3週間ほどです。
脱皮しながら終齢幼虫になります。ナミテントウの蛹の時期は1週間ほどです。
蛹になると、模様はナミテントウらしく、赤や黒い模様がわかるようになります。
蛹の時期が終わりに近づくと、ナミテントウは黄色い無地の前翅になります。
ここから数時間かけ模様が出てきます。ここまでこないと、そのナミテントウがどんな模様の個体なのかは分かりにくいようです。
成虫になるとほどなくして交尾を行い、また産卵します。ナミテントウの成体の活動時期は3月から11月までとされます。
ナミテントウの幼虫について
ナミテントウの幼虫は食欲旺盛です。幼虫時代に食べるアブラムシ類は数百匹ともいわれます。
蛹化する直前の終齢幼虫になると特に食べまくります。
ナミテントウは羽化し、成虫になってもアブラムシ類を食べますが、ナミテントウがいる場所にアブラムシ類が少なくなると、前翅をパカッと開けて翅を使い、アブラムシ類が多い植物を目指して飛んでいきます。
ナミテントウもアブラムシ類をよく食べる益虫とされますが、より益虫度が高いのは、翅がなく移動距離が少ないナミテントウの幼虫かも知れません。
また、ナミテントウの幼虫は気温が25度くらいの状態だと良く成長します。
炎天下にナミテントウが減少しやすいのは、気温が高すぎる事も関係しているようです。
また、ナミテントウの幼虫は蜂の子などの人工のエサも食べるといわれます。
ナミテントウの模様
ナミテントウは上翅の硬い部分の模様にさまざまなパターンがあります。
大別すると4種です。
紅型
赤色が地色になっている模様です。
2紋型
主に黒い色に赤い模様がふたつあるものです。
西日本に多く見られるといわれます。
4紋型
赤い模様が4つある個体です。
斑紋型
黒に赤い模様がたくさんある個体です。
これらがミックスされて模様が出る場合も多く、無地の個体も出現するようです。
バリエーションは200を超えるともいわれます。ナミテントウは、種が異なる個体と交尾し繁殖をしているとされている事があるくらい模様の出方は様々です。
このように模様が異なる個体が多いのはなぜでしょうか?当たり前ですが、テントウムシも遺伝子をもっています。
ナミテントウの模様があまりに多様なのは遺伝子が関わっているらしい、ともいわれます。
種内遺伝子ともいわれ、ナミテントウの模様の変異をある程度決めているのではないか、という事です。
または気温が関係している、という研究結果もあります。
高緯度において発現するナミテントウには赤いものが多く、低緯度になると黒に赤模様がふたつある2紋型が多い傾向があるそうです。
飛ばないナミテントウ
ナミテントウには飛ぶものと飛ばないものがあります。
主に無農薬栽培の分野におけるアブラムシ類の駆除の難しさに関し、ナミテントウが注目されているようです。
ナミテントウは成虫になると翅をもち、それまで食べていたアブラムシ類が少なくなると別の場所へ移動してしまいます。
生物なので仕方のない事ですが、アブラムシ類を捕食する益虫としてはいまいちです。
そこで、ナミテントウムシの中で飛翔能力が低い個体同士をかけあわせ、飛ばないテントウムシが開発され、飛んでいく事もない有用な生物農薬として販売されています。
害虫になるナミテントウ
テントウムシをつかむと、臭い液体を足のあたりから出されてしまった事が一度はあるのではないでしょうか?
ナミテントウも少し黄色っぽい臭い液体を出します。液体の中にはアルカロイド系の物質が含まれているといわれています。
ナミテントウが集団で固まっていると、模様が異なりどれがどれだかわからないが、臭いテントウムシがいて、それらは集団だからナミテントウは臭い害虫だ、という事にもなりますが、実はこれらの個体の中にはカメノコテントウという、亀甲模様のような模様をもつテントウムシが混ざっている場合があります。
このカメノコテントウの出す体液はナミテントウたちの体液より多く、色が赤いのも特徴です。
ナミテントウの集団が家屋に入り込み、衣類などに変なシミがつく場合、その集団内にはカメノコテントウが混ざっている場合があります。
テントウムシの集団といってもひとつひとつの個体は小さく、殺虫剤を使用すれば駆除は簡単です。
間違えやすいナミテントウ
ナミテントウは前翅の模様のバリエーションが多く、それがナミテントウなのかどうか判別しにくく、別のテントウムシと間違える事があります。
害虫とされるテントウムシの一種にオオニジュウホシテントウというものがいます。
ジャガイモやナスなどの作物につくと葉食べるなど食害を起こします。
成体にはナミテントウ特有の光沢がありませんので、よく見ると違いはわかります。
幼虫時代のオオニジュウホシテントウも、色がうすくナミテントウのような幼虫の体つきや色とは違います。
ナミテントウについて
ナミテントウは模様の変異が途方もなく多く、そのために他の草食性のテントウムシなどと混同される事もあります。
ナミテントウの特徴は、集団で越冬すること、模様が多様なことのようです。
(ライター:おもち)