ヒッコリー・ホ―ランド・デビル。
この名前だけ聞いてどんな印象を持たれるだろうか。
毒がありそう?触るととても臭い液を出しそう?トゲトゲの針がとても痛そう?
いいえ、そのどれも不正解です。ヒッコリー・ホーランド・デビルは、見た目の派手さやインパクトとは裏腹な、とても穏やかな生き物なんです。
ヒッコリー・ホ―ランド・デビルって?
ヒッコリー・ホ―ランド・デビルは北米で最大級サイズと言われる幼虫。
成虫になるとリーガル・モスという蛾になります。
ヒッコリーというクルミ科の植物の葉にいることが多く、この名前が付けられたといわれています。
残念ながら日本では見ることはできません。
ヒッコリー・ホーランド・デビルの生態
ヒッコリー・ホーランド・デビルの幼虫は体長が15㎝ほど。
角のような大きな触覚が頭部に8~10本ほど生えていて、全身にも黒い棘のようなものが生えていますが、これは触っても痛くなく、毒性があるわけでもありません。
普通の芋虫の様にゆったりとした動きをして、非常に穏やかな幼虫です。
成虫になるまでの間、37~42日間で4回の脱皮を繰り返します。
最初のころ、茶色い幼虫は徐々にライムグリーンをベースとした鮮やかな色合いの幼虫へと成長し、オレンジや黒やライムグリーンが目立つ芋虫になっていきます。
蛹から蛾へと変わると今度はベースのグレーに上品なオレンジ色のラインと黄色の斑点の入った蛾になります。
成虫の蛾も羽を広げると15㎝ほどの大きさになり、蛾としては大きな方です。
ヒッコリー・ホ―ランド・デビルの成虫
先にも書きましたが、ヒッコリー・ホ―ランド・デビルはもともとはリーガル・モスという蛾の幼虫なわけで、幼虫にだけ特別な呼び方があるのは、日本のアゲハの幼虫をアオムシと呼んでいるようなものなのかもしれません。
ちなみに和名ではキモントトラフヤママユというのだそうです。
成虫になったリーガル・モスには口というものが存在しません。
そのためエサを食べることができませんから、成虫になってからは1~2週間ほどしか生きられず、その間に交尾をし、産卵をして寿命を全うしていくということになります。
日本のヤママユガも同じように口を持たず、産卵して死んでいきます。
ヒッコリー・ホーランド・デビルの名前の由来
ヒッコリーの木はクルミ科のペカン属と言われる樹木の一般名のようです。
ヒッコリー・ホ―ランド・デビルはヒッコリー以外の葉っぱも食すことがあるようですが、この木にいる角の生えた悪魔ということで名付けられたようです。
ヒッコリーという木は昔から人の暮らしになじみのある木で、実は食用にもなりますし、ヒッコリーストライプという模様もこの木の樹皮の特徴から付けられたもの。
ヒッコリー・ホ―ランド・デビルの名前もそんな愛着のある木からとったということなのでしょう。
デビルとい名前もめいいっぱいの愛着をこめた呼び名なのかもしれません。
英語でデビルのついた生き物は、爬虫類はイモリの仲間のソニーデビル、昆虫では派手やかな風貌のカマキリ、ビル・フラワーマンティス、魚類ではエイの仲間のジャイアントデビル・レイなどで、そのネーミングは見た目によってつけられることが多いようです。
性格は意外に穏やか。ただ、例外としてオーストラリアに棲息する有袋動物のタスマニアデビルだけはその名の通り凶暴なデビルのようですが・・・。
幼虫のうちは、デビルと呼ばれ、成虫になるとリーガル・モス(=蛾の王様)になるのだから、ネーミングをつけた人は本当にロマンチストだと思ってしまいます。
醜いアヒルの子ではありませんが、デビルが脱皮したら王様になった!!なんていうのは、夢のあるおはなしの世界です。
(ライター ナオ)