とても小さく、手のひらにすっぽりおさまるピグミーオポッサム。
小さいネズミの様にも見えますね。
日本語では「ハイイロジネズミオポッサム」です。
最近はペットとして人気があるそうですよ。どんな動物なのでしょうか。
最も小さく最も古い有袋類、ピグミーオポッサムの生態
ピグミーオポッサムは、ブラジル北東部やボリビアなどのアマゾンに棲む有袋類です。
体の大きさは10㎝くらい、尻尾を入れても20㎝、体重は100gほど。
体の色はグレー。
本当に小さな有袋類です。
学名はMonodelphis domestica、最小で最古の有袋類といわれています。
雑食で、果物や小さな節足動物を食べます。
どちらかというと肉食で、たんぱく質を摂取します。
そのため、カエルや爬虫類なども食べるようです。
現存する有袋類を大きく分けるとオポッサム類とオーストラリア有袋類になります。
オポッサム類は70種を超える大所帯です。
オポッサムは広く南米に生息し、体長35~55㎝体重は1~2.5㎏になるようなのですが、ピグミーオポッサムは、その名の通り随分小さい体です。
夜行性のため、夕方以降に活動が活発になります。
群れは作らず、交尾時期以外は単独行動をする動物で、テリトリーは1200m²~1800m²だそうです。
体の小ささを考えると広いですね。
縄張り争いも起こるらしいので、かなり広々としたパーソナルスペースが必要みたいです。
岩の間や木の穴などに巣をつくって暮らします。
野生下での寿命は4年程と言われています。
有袋類の特徴、ピグミーオポッサムの場合
有袋類の特徴のひとつに、メスの体の中に赤ん坊を大きく育てる機能が備わっておらず未成熟な状態で出てくる赤ん坊を守るため、体外に育児嚢といわれる袋を持っていることがあげられます。
しかしピグミーオポッサムには、その大切な袋がないのです。
育児嚢を持たないピグミーオポッサムのメスは、妊娠してしばらく経つとお腹に桃色の小さなものたちを産みます。
見た感じは胎児で、体重は0.1mgほど。妊娠期間は12日から14日で非常に短いのも特徴です。
乳飲み子たちは2週間ほどかけて少しずつ成長し、もう1週間くらい経つとグレーの毛が生えてきます。
離乳は3~4週目くらいだそうです。
毛が生えてくるようになると、赤ん坊は母の背中にしがみつきます。
一度に出産する赤ん坊は多くても15匹程です。あまりに多いと背中に全員を乗せられないからでしょうね。
ずり落ちるものがあったら哀れです。
そして赤ん坊たちを背中に乗せて育てます。そのため「コモリネズミ」とも呼ばれています。
性成熟までは5、6ヶ月かかります。
小さくなる事を選ぶ動物たち、アマゾンにて
特異な環境下で生きる動物たちには、気候など自然条件にあわせた食性や繁殖の方法を備えています。
その為、体の大型化や小型化がみられる場合があります。
ガラパゴス諸島のゾウガメは大型化した一例です。
勿論天敵がいない事も要因の一つになります。
中南米一帯に棲むオマキザル科のサルたちは、体長30㎝ほどですが、アマゾン流域に生息している同じオマキザル科のピグミーマーモセットは、10㎝くらいの小さなサルです。
アマゾンのような環境下の場合、身を隠せることや食べ物が少なくて済むこと、また性成熟までの期間が短いなどの利点は、生きのびる為の重要な要素になってきます。
ピグミーオポッサムの名前についているピグミーとは元はアマゾン地域に住む身長の小さな人々のことで、そのことから小さい動物に付けられる呼称になったようです。
育児嚢を持たない有袋類であるピグミーオポッサムにとっては、小さな体でいることが生きる知恵なのかも知れません。
有袋類の生き残り術、ピグミーオポッサムたちの大移動と哺乳類
有袋類が出現したのは、おおよそ白亜紀だと考えられています。
中生代の終わり頃、約1億年前。
単孔類としてカモノハシ、ハリモグラ、有袋類のカンガルーやコアラ、そして哺乳類が出現します。
中生代が終わり新生代を迎えると、本格的に哺乳動物たちの世界が始まります。
恐竜が絶滅した後だと考えられています。
激しい生存競争があり、哺乳類たちが繁栄し始めると有袋類は徐々に大陸の端の方へ、生き残る為に移動したようです。
その後また地球は大陸の分裂を繰り返し、今のような状況になったと考えられています。
哺乳類の台頭と、現在の有袋類
現在有袋類が生息している地域は、オーストラリア、ニュージーランド、南アメリカの一部など(ピグミーオポッサムも生息中)と分かれており、しかも限られているのは、主に哺乳類の台頭のためではないかと考えられています。
哺乳類はしっかりした胎盤を備えて胎内で充分成長させてから、赤ん坊を産みます。
母体にかかる負担は非常に大きくなりますから危険を伴いますが、この世に生まれた後の生存確率も高くなるという側面もあるのではないでしょうか。
このことは、その後の哺乳類の爆発的な繁栄の要因の一つではないかと思われます。
それでも有袋類は、絶滅はしていません。限定された条件下で生息し続けています。
ピグミーオポッサムを飼うのだ
複雑な背景を持ち、生態について不明な点も多いピグミーオポッサムです。
縄張りがあるので、一匹で飼う方がよさそうです。
大きくならない生物なので、大きなケージは必要なさそうです。
適温は25度から30度くらい。
食べ物は果物や昆虫、虫ゼリーも食べるそうですよ。
たんぱく質を含む餌もあるといいですね。
ケージの中は、木片を入れたり、モルモットのようにおもちゃを入れてもいいみたいです。
気が向くとわりと活発に遊ぶこともあるようです。
個体によると考えられますが、人間には比較的慣れやすいとのこと。
慣れるまでには時間がかかるかも知れませんから、手を噛まれたりしないように。
ピグミーオポッサムの歯は、上も下もきちんと備わっています。
2匹同時に飼育するとか、特にオスとメスを飼いたいという場合、注意が必要です。
前述のようにピグミーオポッサムは単独行動をする動物です。
野生が強いので、気が合わないと争いになる可能性があります。
どうしても2匹飼う場合はケージを分けるようにします。
野生が強いということは、狂暴だとか気性が荒いというより、警戒心が強いのです。
その警戒心を傷つけないように仲良くなることが肝要です。
飼育下では4年より長く生きることもあるそうです。
希少な動物なので、小動物にしては価格は高め。
信頼できるペットショップを選ぶと良いでしょうね。
ピグミーオポッサムとマイアサウラ
コモリネズミとも呼ばれるピグミーオポッサムの特殊な子育てを知った時に、ふと思い出したのが子育て恐竜と言われるマイアサウラの事です。
ハドロサウルス科のマイアサウラは、主に白亜紀後期の北アメリカ大陸に生息したと考えられている、推定9mもの巨大な草食恐竜です。
不思議なことに、卵からかえった子供の面倒を見ていたような形跡が発見されています。
孵化したあとの子に注意をはらうのは、何となく哺乳類的な行動に思われます。
少数派とはいえ、こんなに昔からそういう生物がいたらしいということは強く印象に残りました。
有袋類のように古くからいる生物のことを考えると、不思議な感じがします。もしかしたら、我々の今が、古代からそう大きく変わってはいないのかも知れない、と思ったりします。
(ライター:おもち)