愛くるしい動きや顔つきで皆の人気を集めているパンダも言ってしまえば実は熊。実は動物園では見られない野生下での本来の姿があったんです。
日本には2種類の熊しか生息していませんが、実は意外と多い熊の種類。今回はパンダを含め、そんな熊たちについてまとめてみました。
ジャイアントパンダ
ジャイアントパンダはもともと中国大陸で進化し、アバ・チベット族チャン族自治州域内に主に生息していて、現在は中華人民共和国南西部の四川省などのごく限られた地域にわずかな頭数が残存しています。
体長は120~150㎝、野生下での体重はオスが100kg、メスが90kg程ですが飼育個体ではオス120kg、メス100kgと少し重めに成長します。
ササばかりを食べているイメージの強いジャイアントパンダですが実は草食傾向は強いですが雑食性が高く、ササだけでなく小型哺乳類や魚、昆虫などの動物やフルーツ、木の実も食べるのです。とはいえやはり主食はササ。
パンダの奥歯はササを咬み砕けるように、また前肢はササを掴みやすいように進化しています。
もともとは肉食獣であるパンダがササから栄養を摂ろうとしているので、パンダは1日に10kg以上のササを食べていると言われています。それを消化するためか体はほとんど動かさず、動いたとしても実に緩慢な動きをします。
普段は草食動物のような穏やかな性格ですが、一旦怒ると肉食獣のような獰猛さが現れることもあります。特に4歳を超えたパンダは縄張り意識もあり、見知らぬ人が近づくと自衛のために攻撃することもあるのだそう。
メガネグマ
メガネグマはエクアドル、コロンビア、ペルー、ベネズエラ西部、ボリビアに分布し、標高1800~3300mにある雲霧林や草原、砂漠や乾燥林に生息しています。
体長は120~200㎝で体重はオスが130~200kg、メスが65~80kgとかなりオスとメスで体長に差があるクマです。目の周囲やのどに白や黄白色の斑紋が入り、個体によってはメガネのように見えることが名前の由来になっています。
食性は植物食の強い雑食。主に果実を食べますが木の葉、樹皮、昆虫、小型哺乳類なども食べます。またごくまれにシカなどの大型の草食動物を襲うこともあります。
木登りが上手で木の上に枝などで作った平らな場所を作り、そこで果実が熟すのを待って食すことも知られています。
性格はとても温厚です。人と会ったりすると摂食を避けて慌てて木に登りやり過ごします。しかし一旦戦闘モードに入れば戦闘力は高く、牛を一撃で殺したという報告もあるほどです。
ナマケグマ
ナマケグマはインド、ネパール、バングラディッシュ、ブータン、スリランカに分布し草原、有刺植物などからなる低木林、湿度の高い常緑樹林などに生息しています。
体長は140~190㎝で体重はオスが80~145kg、メスが55~90kgでオスはメスの2倍ほど体の大きいクマです。長い爪を持っていて、ナマケモノのように樹の枝に逆さにぶら下がることができることから名前がついたと言われています。
食性は雑食で主にシロアリを食べますが、昆虫、鳥類の卵、動物の死骸、花、果実、蜂蜜等なんでも食べます。
好物のシロアリは長い爪を使って硬いアリ塚に穴を開け、唇と舌をすぼめてゴミを吹き飛ばしてから吸い込んで食べます。
性格はとても大人しくナマケグマを常食にしているトラもいる程と言われる反面、気が強くトラに向かって攻撃を仕掛けていくという報告もあります。パンダのように普段の性格とスイッチが入った時の性格があるのかもしれません。
マレーグマ
マレーグマはインド、インドネシア、カンボジア、中国南部、タイ、ブルネイなどの東南アジアに分布し新陳地帯に生息しています。
体長は100~150㎝、体重は25~65kgとクマ科最小種と言われ、都の小ささから英語では犬グマの意味のドッグベアーと呼ばれることもあります。
食性は雑食でトカゲ、鳥類やその卵、小型哺乳類、昆虫類、果実、若芽や根などを食べます。強力な顎を持ち、堅い果実などを割ってこじ開けることも出来ます。昆虫などは長い舌で絡めとって食べることも出来ます。
マレーグマはクマの中では最も危険性が少ないクマと言われるほどで、人懐っこく攻撃性や凶暴性は低いとされています。そのためペットとして飼っている人もいて、子供の遊び相手にはちょうど良いとされています。
ツキノワグマ
ツキノワグマはアフガニスタン、イラン南東部からインド、カンボジア、タイ、ロシア東部などに広く分布し。森林に生息しています。日本のツキノワグマは日本亜種として独自の分化を遂げ、現在は3種類のツキノワグマが生息しています。
体長は120~180㎝で体重はオスが50~120kg、メスは40~70kgです。胸部分に三日月形のアルファベットのV字状の白い斑紋が入るのが名前の由来になっています。
食性は雑食で果実、芽、小型の脊椎動物、昆虫、無脊椎動物、動物の死骸などを食べます。猛禽類の雛や大型草食獣の幼獣などを狙って食べたりもすることから、環境によっては肉食の傾向も強いとされています。
性格はとても臆病で大人しいとされていますが中には異端児もいて、そのような個体はヒトを怖がらず人里まで降りてきて農産物や残飯を漁ったり、人間を襲ったりします。近年はそのような人馴れした個体も増えているようです。
アメリカグマ
アメリカグマはアメリカ合衆国、カナダ、メキシコに分布し主に森林地帯に生息しています。ヒグマとの競合を避けるために木のある環境に生息し、逆にヒグマが減少したり絶滅した地域には分布を拡大しています。
体長はオスが140~200㎝、メスが120~160㎝で体重はオスが27~409kg、メスが39~236kgとかなり個体差があります。体毛も地域や個体によって変異が大きく胸部に白色斑が入る個体もいます。
食性は植物食傾向の強い雑食で、果実、種子、草、昆虫、魚類、動物の死骸などを食べます。機会があれば脊椎動物を食べることもありますが積極的に捕食することは少ないと言われています。
アメリカ合衆国中南部やメキシコに生息するアメリカグマはサボテンやユッカなども食べます。
アメリカグマはクマのプーさんやテディベアのモデルにもなったクマ。性格は比較的温和で性格も大人しいと言われていて人間を襲うこともないとされていますが、稀に偶然遭遇した人間を殺すこともあります。
ヒグマ
ヒグマはヨーロッパからアジアにかけてのユーラシア大陸と北アメリカ大陸に広く分布し、針葉樹林を中心とした森林地帯に生息しています。日本にはエゾヒグマと言われる亜種が北海道に生息しています。
体長はオスが250~300㎝、メスが180~250㎝で体重はオスが250~500kg、メスは一回り小さい100~300kg程になります。どちらもがっしりとした頑丈な体つきをし、頭骨が大きく、肩もコブのように盛り上がっています。
食性は雑食ですがツキノワグマに比べると肉食の傾向が大きいと言われています。シカやイノシシ、ネズミなどの大小哺乳類やサケ、マスなどの魚類、果実などを主に食べます。トラやオオカミ等の他の肉食獣が殺した獲物を盗むこともあるようです。
基本的には臆病な性格ですが、ヒトに慣れた個体が増えてきていること、驚いた反動で攻撃的になること、そして、一度人を襲ったことがある個体が味をしめ再び人を襲うケースがあることなどもあります。
グリズリー
グリズリーは日本名でハイイログマといい、北アメリカ北西部、アラスカやカナダ西部に分布しています。
体長は最大級の個体で450kgに以上にもなり、過去には508kgの個体が捕獲されていますが平均的にはオスが260kg、メスが170kgで日本のエゾヒグマとほぼ同じ大きさです。
食性は雑食でヘラジカ、トナカイ、アメリカバイソンなどの大型草食獣をよく食べますが、巨体ナタメ、狩りをするというよりは死骸を見つけてそれを食べることの方が多いようです。
泳ぎが得意で川や湖に入ってサケ、マス、バス類などの魚類も捕食し、他にも昆虫類、松野宮ベリー類などの植物などほぼ周囲に存在する食べられるものは何でも食べます。
性格は凶暴でヒトを襲うこともあるとされるグリズリーです。特に子熊を釣れている母親のグリズリーは凶暴になります。しかし、アメリカでは子供のころから育てたグリズリーが人間と一緒に生活しているといった例もあるようです。
ホッキョクグマ
ホッキョクグマは北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏に分布し、流氷水域、海岸などに生息しています。冬季には流氷の南下に伴い南へ、夏季には北へ移動し、1日に70㎞程を移動することもあるとされています。
体長はオスが200~250㎝、メスは180~200㎝、体重はオスが400~600kg、メスは200~350kgほどですが生息域によって大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群は最も大型化する傾向があると言われています。
全体的には地球温暖化の影響で小型が進んでいて、1984年から25年間の間にオスの平均体重が45kg、メスは31kgも減少したのだそう。
食性は肉食性の強い雑食でクマの中では最も肉食性が強い種であるとされています。歯が特殊変化しており、アザラシを主食としています。
その他、魚類、鳥類やその卵、イッカクやシロイルカなどの哺乳類、鯨などの動物の死骸に加えて氷の溶ける季節には植物も食べます。
野生下のホッキョクグマは動物園のイメージとは大きく違っていて凶暴な性格で子殺しなどの習性もあります。
熊の種類のまとめ
いかがでしたでしょうか。熊は各地域でそれぞれに進化を遂げ、置かれている環境によって食性や性格などに大きな違いがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
環境破壊などの影響で絶滅寸前の熊やパンダのように生きるために本来の熊の形態を捨てた熊も存在しています。
どの動物にも言える事かもしれませんが、熊もまた野生下で生きるのはそんなに楽じゃない。
動物園に行ったときにはそんな彼らの野生の姿に思いを寄せて見てみるのも良いかもしれませんね。
(ライター ナオ)