ムカシヤンマはムカシトンボと同じ原始の形状を残しているトンボです。
大型でがっちりとしていて、一見オニヤンマと見間違いますが、複眼の色が明らかに違うので区別がつきます。
ムカシヤンマの特徴
ムカシヤンマは体長8㎝ほどもある大きなトンボです。
オニヤンマのように、黒と黄色の色合いですが、複眼がオニヤンマの鮮やかな緑色とは違って黒みがかかっています。
木の幹にまるでセミのように翅を広げてペタッと止まったりします。
白い色が好きで、電柱やコンクリートなどにも張り付いていることが多いようです。
ムカシヤンマという名前から、勝手に何となくデリケートなひっそりと生きているイメージを持っていましたが、実はオープンで人にも簡単に止まってしまうほど警戒心がないようです。
ムカシヤンマに会いたい時は白色の洋服を着ていくのが良さそうですよ。
ムカシヤンマの生態
ムカシヤンマは東北以南と本州、九州に生息していて、5月の下旬ごろから6月の下旬にかけて、多くみられます。四国ではなぜか生息していないのは謎のひとつ。
世界では10種類ほどが確認されていて、オーストラリアのテイオウムカシヤンマというトンボは15~18㎝ほどの大きさがあり、トンボ目の中でも最大の大きさだそう。
ムカシヤンマが最初に発見されたのは岐阜で、そのことから、初めはギフヤンマと呼ばれることもあったそうです。
メスの産卵管を持つ特徴とオニヤンマに似た色合いから、ムカシヤンマの名前で呼ばれるようになったとか。
多くの進化したトンボは生殖弁というものがしっぽ付近にあって、産卵するときは水辺にしっぽをつけるような形で産卵します。
しかし、ムカシヤンマやイトトンボなどはこの生殖弁の代わりに産卵管があり、このタイプのトンボは土や苔の間にしっぽを突き刺して産卵します。
この産卵管が原始的な器官ということだそうです。
ムカシヤンマの幼虫
ムカシヤンマは谷間の崖など、苔の生えているところに産卵します。
幼虫はこの苔の間にトンネルをつくり、そのトンネルの中で3年ほど幼虫時代を過ごします。
岩壁の苔をじっと見ていると、ところどころに穴が開いているのを発見することがありますが、この穴の中で、入り口付近に泥があれば、その穴にムカシヤンマのヤゴが生息している可能性が高いそう。
どうやらムカシヤンマのヤゴは棲み家内の泥を押し出す習性があるようです。
じっと見ていると時々中から顔を出すこともあるとか。
ムカシヤンマのヤゴは結構がっしりとした体つきをしています。脚も太く、ごつい印象です。3年もの間じっくりと苔の中で栄養をとってゆっくりと大きくなります。
成虫になったトンボとヤゴを比べてみると、なるほど納得の形。
イトトンボはヤゴも細いし、オニヤンマのヤゴはごつくて大きい。当たり前といえば当たり前の事実。
人間の赤ちゃんだって、お母さんの体型を見ると納得!ということが多いものですよね。
カエルの子はカエルじゃないけど、やっぱりそういうことなんでしょうね。
話が脱線しましたが、ムカシヤンマのヤゴは成虫になる時期がくると、苔から出てきて近くの草むらなど、水のないところへ移動します。
5~6時間ほどかけて羽化し、飛び立っていきますが、この時に体の水分を外に放出して、体を軽くしてから飛び立つので、羽化したてのトンボの側は濡れていることもしばしばです。
これはセミなどが飛ぶときにおしっこをかけて飛ぶ、といわれるのと同じ現象で、身体を軽くしてから飛ぶという、本能的行動です。
昆虫の世界で最も古いのがトンボ、その次はバッタ、そして蝶やハチなどとなっていくわけですが、トンボの中でもさらに原始的な形状を持つムカシヤンマはムカシトンボと同じく、昆虫界の生きた化石と呼ばれる、太古の昆虫なわけで・・・・思わず写真に合掌です。
(ライター ナオ)