夏休みの川辺で鮮やかなブルーをちらつかせながらすーーーーっと飛んでいく華奢なイトトンボ。
その姿は、川辺ではしゃいでいる私たちのテンションとはあまりに違うもののような気がして、皆遊ぶ手を止め、イトトンボに見入ってしまった記憶があります。
トンボの仲間ですが、トンボというには何だかもったいない美しささえ感じるのがイトトンボです。
イトトンボの特徴
日本には12属26種類のイトトンボが生息しています。
両翅の大きさがトンボとはちょっと違って、イトトンボは前の翅の方が後ろの翅よりも大きいのが特徴です。
トンボと比べてとにかく胴体が細いところからついた名前の通り、トンボを見慣れている目でイトトンボを見ると、本当に折れそうなほど細い胴体に見えます。
イトトンボの種類
イトトンボは大きく6つに分けることが出来ます。
アオモイトトンボはトンボの胴体の節のうち全体が水色になっている節が一つある種類です。
クロイトトンボはアオモイトトンボのような節が2つ以上あるものをいいます。
キイトトンボは黄色い体をしていて、モノサシトンボは目が大きく離れているのが特徴です。
他には体が緑のアオイトトンボ、翅が細くて全身が水色のホソシオツネントンボ。
地域的に進化したものも沢山いて、例えば北海道にしかいない、アカメイトトンボ、カラフトイトトンボ、キタイトトンボ。
小笠原諸島には、ガサワライトトンボ、キバライトトンボ、南西諸島だけに生息するアオナガイトトンボ、アカナガイトトンボ、ヒメイトトンボ、キバライトトンボ。
基本的に南に行くほど種類が多くなるのですが、このようにそれぞれの地域に特化した種類も結構いるのがイトトンボです。
また、コフキイトトンボという種類は現在絶滅の危機にさらされた、非常に珍しいイトトンボになってしまいました。
中南米にはハビロイトトンボという体長が10㎝ほどもあるトンボもいるようです。
イトトンボのヤゴにはえらがある!?
イトトンボのヤゴは普通のトンボのヤゴと比べると。縦に細長いのが特徴です。
ヤゴの顎の部分にはえらが3つほどついていて、これも普通のトンボのヤゴにはない特徴になっています。
イトトンボの生態
イトトンボは種類によって、ヤゴで越冬するもの、成虫で越冬するもの、卵で越冬するものと様々です。
アオイトトンボは卵の状態が230日、アオモンイトトンボは6日と種類によって実に様々なんです。
成虫になってからの寿命は1か月ほどで、その間に交尾をし産卵をします。
普段はトンボのように空を高く飛ぶことはなく、水辺の近くを低めに飛行しています。
イトトンボの交尾はオスとメスが輪になって行われるのですが、胴体部分が柔らかいので交尾中はハート型になることもあり、なかなか珍しい光景が見られます。
イトトンボと人間の暮らし
イトトンボに限らず、トンボは古くから私たちの暮らしになじみのある昆虫として存在していました。
古い文献にはトンボのことを秋津(アキツ)と呼んでいたと書かれてあり、日本のことも秋津島と呼んでいたという記録があります。また、漢方薬としての役割を担っていたころもあったとか・・・。
他にも民芸品のデザインとして描かれることも多く、トンボの歌も沢山あります。
まう
西洋ではトンボとイトトンボをはっきりと区別していて、トンボは悪魔の使い、イトトンボは乙女という意味の名前がついていたりもするようです。
その華奢な体つきがはかなさも思わせ、日本では俳句などで、夏の季語として使われています。
漢字で書くと「糸蜻蛉」となり、それだけで風情を感じる単語になるから不思議です。
歴史的に見てもトンボが害虫として扱われた例は少なく、どちらかというと日本人とは上手に共存してきた昆虫です。
この夏イトトンボをみかけたら、少し観察してみて下さいね♪
(ライター ナオ)