カマドウマはカッコイイのか、はたまた気持ち悪いのか?

彼らはバッタやコオロギの仲間なのに、不快害虫認定されている気の毒な昆虫です。

「竈馬」は元来風流な名前の虫である

かつてカマドウマは、家屋の中でも湿気の多い竈(かまど)の周辺に生息し、長い顔や背中の形が馬に似ている事から「竈馬」と言う風流な名前で呼ばれて来た人間に馴染みの深いバッタの仲間です。

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その風流な名前を持つカマドウマですが、最近(何十年前から?)では、カマドウマは「便所コオロギ」と呼ばれ、我々現代人の目にはグロテスクな風貌に映るようで、ネット上では「カマドウマの駆除」であるとか、「カマドウマの殺し方」なる言葉で検索される事が多いようです。

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本来、人間の生活を脅かすような害虫ではありませんが、異様に長い脚での強力な跳躍は、予想外の動きで人間を驚かせます。

長く突き出た産卵管も、そのグロテスクな印象を強めるポイントでしょう。

更に、なかなか生命力の強い虫であるがゆえ、普通の殺虫剤では中々絶命しない彼らを倒すには「ゴキジェットプロ」なるアイテムが強烈なダメージを与え、効果てきめんであると言われています。

人間に対しては無害であるにも関わらず、生理的に害虫認定されている彼らはいささか気の毒な存在ではありますが、実は私も彼らが大の苦手です。

私も子供の頃はカブトムシやクワガタだけでなく、バッタやカマキリ、コオロギなどを捕まえて飼育したりもしていましたので、一般的には昆虫好きな少年であったと言えるでしょう。

しかしながら、カマドウマだけはどうにも苦手で、夜のカブトムシ採集の時には樹液の湧く場所にいる彼らと決まって遭遇する事になります。

その脂ギッシュな体とアンバランスに長い脚と触覚、団子虫のようなボディ、卓越した跳躍力と光に集まる習性。

少年達にとっては恐るべき夜のグロテスク王でした。

しかし、どうやらそんなカマドウマにも天敵がいたようです。

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カマドウマの天敵 ハリガネムシ

ハリガネムシ

ハリガネムシは、カマキリやバッタ、カマドウマ、ゴミムシ、コオロギに寄生する寄生虫として良く知られていますが、元々は水生の生物で、水中で繁殖行動を行います。

その全長は数cmから1mまで成長し、直径は1~3mmの細長い寄生虫です。

ハリガネムシの幼生は、カゲロウやユスリカなどの幼虫に取り込まれる事でそれらの水生昆虫に寄生し、宿主が羽化して陸上生活に入った後でカマドウマなどの陸生昆虫に捕食されると、今度はその捕食者を宿主として生活します。

ハリガネムシに寄生された宿主は、その生殖機能を失いますので、体を食い荒らされるだけでなく子孫を残すことが出来なくなります。

文字通り、ハリガネムシはカマドウマの天敵と言えるでしょう。

更にハリガネムシは宿主の脳に特殊なタンパク質を注入し、水に飛び込ませようとコントロールするので、繁殖期になると自らの繁殖に適した水中に戻ってくることが出来るのです。

カマドウマからうごめき出てくるハリガネムシ

ちょっと閲覧注意な動画なのですが、生きたカマドウマの体の中からウネウネとハリガネムシが出て来ます。

思わず背筋に寒気が走る動画ですね。暑い夏の夜には効果てきめんです。

カマドウマの駆除には、是非ハリガネムシのご利用をご検討下さい。気持ち悪さに耐えられればですが…。

■「最凶の吸血昆虫ブヨ!」刺された時の対処法と撃退法

■「ガガンボ」って大きい蚊みたいだけど刺すの?害はある?

■ 暗殺昆虫「シオヤアブ」はスズメバチの天敵だった!

■「便所虫」って一体なんですの?

※次にカマドウマのさらに詳しい生態について説明します。

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カマドウマ=便所コオロギ!

カマドウマは、『竈馬』と書き、日本家屋の台所のコンロに相当する「かまど」近くによくおり、その行動が馬のようによく跳ねるということで名付けられた昆虫です。

実際にカマドウマは湿気の多い暗くジメジメした場所を好みますので、屋内では台所、洗面所や風呂場などで見かけることが多いと言えます。

またつけられたあだ名が『便所コオロギ』というありがたくないものです。

まあ確かに同じ直翅目ですのでコオロギの親戚筋ではありますが・・・

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便所って・・・

カマドウマが特に便所=トイレを好んで生息しているというわけではありません。

便所あるいは便所○○といった場合、私のイメージでは旧式(汲み取り式)のいわゆる「ぼっとん便所」のことを指しており、明るく清潔な水洗式のトイレとは結びつきません。

北側の陽のあたらない一角に設置されていたり、地方の農家でみられるような、母屋から切り離されて屋外に設置されているような、そんなものが「便所」なのですが・・・。

便所=御不浄!?

そもそも汲み取り式の便所は、ヒトの糞尿を田畑の肥料として用いていましたのでそのためのものであり、快適な居住環境とはまったく無縁の存在でした。

また便所の別称に『御不浄』という言葉があるように、汚穢なものを身の回りに近づけない、置いておかないという「けがれ」の思想に根差したものでもありましたので、長居するようなことはなく、用が済めばさっさと退散し、用もないのに近付くような場所ではありませんでした。

したがって、便所とは悪臭に満ちていたり、湿気と薄暗さのある長居したくない場所でしたので、そこで出遭う生き物は、どうしても不気味で、不潔で、不衛生なイメージしか持たれることがありません。

また、用を足し終わるまで、動くに動けない状況で見つけてしまえば、逃げられない恐怖感からトラウマになってしまうことも多いのではないでしょうか。

昆虫好きとしては、じっくり観察する機会でもあるのですが・・(笑)

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いろいろいる便所ムシ

一般に便所ムシ、あるいは便所○○と呼ばれるものには、地域差もありますが、特に便所にだけ生息するというものではありません。

カマドウマが「便所コオロギ」と呼ばれるように、ザトウムシは「便所グモ」、ミズアブは(コウカアブ)は、「便所バチ」などと呼ばれているようです。
またワラジムシのことをズバリ「便所ムシ」と呼ぶ地域も多くあるようです。

そんな名前を付けられた方は、たまったものじゃないでしょうけれど・・。

カマドウマは嫌われている!

まあ、「便所コオロギ」などと呼び名をつけられるくらいですから、カマドウマのイメージは悪く、多くのヒトに毛嫌いされているのは確かなようです。

しかし、本来カマドウマは病原菌を媒介したり、ヒトを刺したりすることなどありませんので、けっして害虫というわけではありません。

しかし見た目の異様さ・・特別に発達した後ろ脚、長く突き出た産卵管、ゴキブリのような長い触角とツヤツヤとテカった身体、クルマエビのような斑紋(マダラカマドウマ)があるものもいます。

そして暗くじめじめした場所に集団でうごめいていたり、ときに驚異的な跳躍を見せつけて飛び回り、更には予想の出来ない動きをして逃げ回りますので、ヒトに恐怖とおぞましさを抱かせるのに十分な資質があると言えます。

ゴキブリ並みに扱われている!?

カマドウマのあのつややかな栗色(ゴキブリのイメージカラー)の体色は、恐らく保護色を兼ねていると思われますが、もしバッタ類と同様の黄緑色であれば、そこまで嫌われることもなかったろうと思います。

「便所コオロギ」と呼ばれるほどですから、便所にいるのはまあ仕方がないと許されても、それ以外のリビングや寝室に入り込もうものなら、その存在そのものが許されず、ヒトにイヤな思いをさせる不快害虫として駆除の対象になってしまうと言えるのです。

さらに輪をかけて、カマドウマはゴキブリ並みの強い生命力と素早い立体的な動きを見せて逃げ回りますので、駆除するといっても容易ではありません。

そういった経験からなのか、カマドウマが屋内に存在することにトラウマを抱く方も多く、嫌いな昆虫というアンケートを実施すれば、間違いなくカマドウマは上位にランクインすることでしょう。

恐らく直翅目(バッタ目)の仲間では、最悪なのではと思われます(汗)

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カマドウマはカブトムシと一緒に・・

私自身は、昆虫が常に身近に存在する環境で育ちましたし、むしろ昆虫好きの少年でありましたので、特別カマドウマが嫌いであるとか、苦手であるということはありません。

自宅の台所の脇にある勝手口に続く土間・・・薄暗く、灯油缶やら雑多なモノが置いてあり、カマドウマが潜むのに絶好の環境といえる場所・・そこによくいました。

また、夏の夜にカブトムシやクワガタムシを捕まえに出かけると、絶好のハンティングポイントであるクヌギの樹液の噴出場所に、必ずといってよいほどカマドウマが集団になって群れており、カブトムシの目を盗むようにして、そのおすそわけにあずかっていました。

 

カマドウマ狩りの結果・・

私は子どもの頃にカマドウマを見つけると、ちょっとテンションが上がりました。

そしてほぼ必ず、捕まえてやろうと身構えていました。

あの素早い、予想外の動きをするカマドウマを素手で簡単に捕まえることに、昆虫好きの少年として強いステータスを感じていたのです。

昨夜は3匹捕まえたとか、友人たちにはちょっとした自慢話にはなりましたが、捕まえたカマドウマを見せびらかしてもあまり喜んではもらえませんでした。

ですから捕まえたカマドウマは、残念ながら飼うのではなく、家のゲージで飼っていたカマキリの貴重な生き餌になっていたのです。

カマドウマはアジア限定種!

カマドウマは、直翅目(バッタ目)のカマドウマ科に分類される昆虫で、東南アジアから東アジアにかけての地域に生息しています。

日本国内では3亜科でおよそ70種類が存在します。

ただしその分類を巡っては、明確な種別がない場合が多く、体色や交尾器の特徴が様々で、専門に研究している方でないとその同定は難しいと言えます。

カマドウマと呼ばれる種そのものは、栗色ともいえる単色の体色で、その他によく見かけるクルマエビのような濃淡のあるまだら模様やしま模様を持つものは、マダラカマドウマやクラズミウマと呼ばれています。

ただの昆虫好きの素人では、そういったハッキリした特徴以外の区別は困難であるといえます。

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自慢はその跳躍力!

体長は2~3センチほど、メスは腹部の後端に長い産卵管を持っていますので、これを含めると3~4センチほどになります。

3対の脚のうち後脚が異常に長く、驚異的な跳躍力はこれによって生み出されます。身体と直結している腿節は体長とほぼ同等で、その末端寄りの脛節は実に体長の1.5倍ほどの長さになります。

よく動く触角はとても長く、体長の3倍以上の長さにもなり、身体の周囲をくまなく触知することできます。

また後ろ脚の動かし方を変えることで、ほぼ全方向への移動(跳躍)が可能なので、ヒトの予測のつかない動きをすることがあります。

 

直翅目だが翅はない!

直翅目に属していますが、翅はなく、大きな移動はもっぱら長い強靭な後脚で跳躍しています。

その跳躍力は凄まじく、体長の数十倍以上、3メートルに達するほど飛び跳ねることができます。

そのため飛び出す威力が強すぎて、コンクリート壁、飼育器のガラスやプラスティックなどに激突して死んでしまうこともあるくらいです。

確かにコオロギに近い種なのですが、翅を持たないために、鳴く(=翅をこすり合わせて音を出す)ことはできません。

夜行性で、昼間は物陰に潜んでいる!

カマドウマは夜行性ですので、夜間に盛んに活動をし、昼間は暗所などに身をひそめるようにしています。

人家に潜んでいることも多いのですが、薄暗い湿度の高い場所を好みますので、その場合はやはり別称のごとく便所や台所、洗面所などの水回りなどで見つけることが多いと言えます。

また屋外では、木の洞や落ち葉の下などに潜み、海岸の入り組んだ岩場や古墳の石室などにも群生していることがあります。

 

なんでも食べる雑食性!

カマドウマは極めて広範囲な雑食性です。ヒトが食べるものは、ほぼ何でも食べると考えてよいようです。

跳躍力を活かして小型の昆虫を捕食することが多いのですが、哺乳類などの屍骸も食べますし、落ち葉や熟して落ちた果実、樹液なども摂食します。

人家に入り込むのも、残飯や野菜くずなどのニオイを嗅ぎつけてくるためです。

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また書籍などの紙類も食べることがありますし、もちろん野生の状況では、共食いをすることもあります。

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繁殖は不規則!

カマドウマの繁殖は不規則で、決まった時期に生殖活動をするわけではないようです。

ですから冬季を除きほぼ一年中活動していると考えられています。

卵から孵化した幼虫は、成虫とほぼ同じ体型をしていますので、直翅類やカマキリなどと同じ不完全変態なのです。

カマドウマの跳躍力は研究対象!

カマドウマの生態で特筆すべきはその跳躍力です。

実は、機械工学分野でその跳躍力の研究が進められています。

カマドウマは、跳躍開始直後に2対の脚でバランスを取りながら、跳躍中は胃と頭部、尾部にその重心を移しながら体勢を整え、より遠くまで飛ぶことができるのです。

いかに遠くまで素早く跳躍するかということだけなら、筋肉を増強してスピードとパワーをあげることにより解決できますが、問題はそのあとの着地にあります。

スピードに乗って遠くまで飛べば飛ぶほど、着地の時により強い衝撃が脚や身体に加わります。

ロボット工学の分野でも、いかに安定した着地をすることができるかどうかで、身体(飛行体)を衝撃から保護することができますので、そういったことが当面の課題になっています。

カマドウマは後脚の筋力に頼って、力まかせに飛び跳ねている感は否めません。

だからこそ壁などに激突死をすることもあると考えられるのです。

そして、どうも着地が下手なようです。

特に急激な方向転換をした場合、着地に失敗して横向きになってもがいている姿を私は何度も目撃しています。

もしかしたらカマドウマは、ドテっと転がるように着地することで、身体全体でその衝撃を吸収して、大切な後脚にかかる負担を軽減させているのかも・・というのは、考えすぎでしょうね(笑)

カマドウマの駆除には冷凍スプレー!

衛生的に問題がなくとも、ヒトを不快にさせてしまう害虫は駆除の対象にされてしまいます。

この点は、カマドウマもゴキブリもほぼ同じでしょう。

カマドウマの行動はゴキブリと大差がありませんので、その駆除には、ゴキブリに準じた対処が可能だといえます。

すなわち、置いておくだけのゴキブリホイホイや巣に持ち帰って仲間もみな殺しにしてしまうホウ酸団子などが効果的だと思われます。

遭遇してしまったカマドウマの駆除としては、通常のスプレータイプの殺虫剤では、かえってすごいスピードで室内を飛び跳ねるので、場合によっては駆除者に向かってくることがあるかもしれません。

そうなると周囲の人々を驚かせ、恐怖感を与えてしまうことにもつながりますので、注意が必要です。

ゴキブリ用の冷凍タイプのスプレーが出ていますが、これが一番の私のおススメです。

ゴキブリ超凍止ジェット 除菌プラス 230ml

噴出するマイナス85度のゾルは、一瞬にして昆虫を凍殺、冷殺しまいます。

注意書きによれば50センチ以内の距離で3秒噴射とありますので、見つけたら狙いを定めて一気に勝負をかけてください。

怖がっていてはダメです。

ロックオンさえしてしまえば、絶対に仕留めることができる最強の武器なのですから、自信を持って戦って下さい(笑)

カマドウマを室内に入れるな!

カマドウマが大嫌いなら、とにかくヤツと遭遇しないようにしないといけません。

カマドウマは前述したように、ヒトが食べるものなら何でも食べてしまいますので、部屋のすみずみまできちんと掃除をして、生ゴミや食べ物のかけらなどを室内に残さないことが肝心です。

また外部からの侵入を防ぐために、家屋のすき間を密封することも有効です。

特に水回りについては要注意で、排水溝やシンクのすき間などから侵入してくることがありますので、こういった場所を重点的にチェックしてみてください。

カマドウマは川魚に捕食されていた!

さて、少し話が変わりますが、カマドウマについて、ちょっと驚きのデータをご紹介しましょう。

渓流などにいるサケ科の魚・・イワナ、ヤマメ、ニジマスなどですが、これらの川魚は、年間の総エネルギー量の実に6割くらいを、カマドウマを食べて得ているというのです。

便所コオロギと川魚が結びつきますか?(笑)

カマドウマは水を求めてさまよい、川に飛び込む!

カマドウマは秋の3ヶ月くらいの間に、みずから進んで次々と川へ飛び込んでサケ科の魚に食べられてしまうのです。

ほとんど自殺に近い行動を取ってしまうのです。

カマドウマは川で産卵するわけでも、水を飲むわけでもなく、水を求めてさまよいながら、川や池を探し求め、最後は水の中に飛び込んでしまうのです。

実は、何者かがカマドウマの行動を勝手に操作して、それを実行しているのです。

その何者かがハリガネムシなのです。

カマドウマの天敵!

カマドウマにも、もちろん天敵がいます。

小型の哺乳類、鳥類、ヘビ、トカゲ、カエル、クモを始め、カマキリなどの肉食昆虫なども、肉厚で食べ応えのありそうなカマドウマを狙っています。

 

ただし抜群の跳躍力と予想もつかない動きで相手を翻弄しますので、そう簡単に捕まるわけではありません。

実はカマドウマには、体内に天敵がいる場合があります。

カマドウマに寄生するムシとして有名なハリガネムシです。

ハリガネムシは、カマキリやバッタ類などに寄生しますが、その体内で成長するに当たっては、腹部の大きなカマドウマは最適な寄生先の一つというわけです。

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ハリガネムシが寄生する!

ハリガネムシは類線形動物門ハリガネムシ綱ハリガネムシ目に属する生物で、体長数センチから1メートルに達するものもいます。

直径は2ミリほどでクチクラという外皮に覆われていて伸縮性はなく、まさに針金のような細長い身体をしており、それをのたうちまわるように動かして行動しています。

 

交尾のあとメスは糸くずのような卵塊を産みます。

そこから孵化した幼生は、水中に生息しているカゲロウやユスリカなどの幼虫、水棲昆虫などにまず捕食されますが、そのまま消化されることなく腸内を進んで腹腔内に居場所を見つけます。

ここでシストと呼ばれる植物の種のような殻につつまれた状態になって、そのまま次のステップへ進むのをじっと待っているのです。

ハリガネムシの行動操作!

カゲロウやユスリカは、ハリガネムシの幼生を腹に宿したまま成虫となって陸上へ飛び立ちます。

これを、カマキリ、カマドウマを始めとした陸生の昆虫が捕食し、その体内に入るのです。

まんまとカマドウマなどの宿主の体内に入ったハリガネムシの幼生は、シストの殻を破って成長を始めます。

やがて数十センチ以上の成虫になったハリガネムシは、生殖のため、体外への脱出を試みます。

ハリガネムシは水生ですので、水がないと生きられません。

ただ宿主の体外に出たところで、陸での移動能力はありませんので意味がありません。

ですから繁殖期を迎えたハリガネムシは陸生の宿主を水辺へと誘い込まなければならないのです。

このとき特殊な生理活性物質(タンパク質)を宿主の脳内に注入し、水中に飛び込ませるように宿主の行動を操作します。

宿主は水を求めてさまよい、川や池を見つけると飛び込んでしまうのです。

こうしてハリガネムシは水中で宿主から脱出して、水中に戻るというわけです。

ハリガネムシに寄生されたカマキリやカマドウマの腹に水をかけると、それが刺激となってハリガネムシが出てくることがあります。

しかしあのふっくらした腹の中に実は数十センチもの長さのハリガネムシが潜んでいるとは・・実に驚きの出来事としか言いようがありません。

 

ハリガネムシに寄生された宿主は、その生殖機能をも失ってしまいますので、体を食い荒らされるだけでなく子孫を残すこともできなくなってしまうのです。

ハリガネムシは川の生態系に関与している!

ハリガネムシのこの行動は、寄生虫による宿主への行動操作が生態系に与える決定的な役割の代表例として、よく知られています。

陸にいるムシが川の中に入ってくると、川の魚は陸のムシを捕えて食べます。そうすると川の中にいるムシは捕食される機会が減り、生き残る可能性が高まります。

川の中のムシが増えるとそのエサである藻類や川辺の落ち葉などがたくさん摂食され、川やその周辺の有機物の分解が進むことになり、川の生態系が変化するのです。

つまり川とその周辺地域の生態系は、川そのものの環境だけで構成されているのではなく、その周囲にある森や林にいる昆虫なども巻き込んでなり立っているというわけです。

その仲介的な役割を担っているのが、陸のムシを川の中に呼び込むハリガネムシなどの寄生虫なのです。

何とも壮大な自然の仕組みだと言えます。

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ハリガネムシ様々!

カマドウマがハリガネムシに操作されて川に飛び込むのは、秋の3カ月程度だけなのですが、この時期に川魚は年間の6割近くのエネルギーを一気に摂取して蓄えているようです。

つまり川魚のエサの中心になっているのが陸の昆虫であるカマドウマなのです。

冬は極端に食料が不足しますので、この時期の食いだめが川魚の命をつないでいるといえるのです。

カマドウマのあのムチムチした体型は、実は川魚にとって、高栄養食となっているので、川魚にとっては、まさにハリガネムシ様々といえる存在であるのです。

ハリガネムシが宿主であるカマドウマやカマキリの体内から脱出する前に川魚に捕食されてしまう場合もあります。

そのまま消化されてしまう場合も少なくありませんが、運良く川魚がハリガネムシを吐き出したり、ハリガネムシが自力で川魚のエラや肛門などから這い出して来ることもあるそうです。

ヒトを操作する恐ろしい寄生虫!

ハリガネムシはヒトにも寄生するのでしょうか?

ツメと皮膚の間からハリガネムシが入り込み、ヒトに寄生する・・まことしやかに伝わる都市伝説のような話がありますが、そういうことはまずありません。

しかしハリガネムシのようにヒトに対して行動を操作する恐ろしい寄生虫が実際にいるのです!

それはアフリカにいる「ギニアワーム」で、日本では「メジナ虫」と呼ばれており、この寄生虫に感染することを「ギニアワーム感染症」といいます。

ギニアワームの恐ろしさ!

ギニアワームはまずミジンコなどに寄生して最終宿主であるヒトに取り込まれるのを待ち、汚染された水を飲んだヒトの体内に入り込みます。

腹腔内でゆっくり成長していき、長さが1メートルに達することもあります。

成長に伴い、皮膚の下を通って移動して、主に脚に向かいます。

 

そのとき通過する皮下に激痛をもたらし、発熱させて身体を火照らせるので、水に飛び込みたくなる衝動に駆られるそうです。

そうすることで宿主(ヒト)を水辺に誘導するのですから、その活動はハリガネムシとほぼ同じだと言えます。

宿主が水中に入るとギニアワームはハリガネムシ同様、皮膚を食い破り体外に出てきて、生殖のために水中に脱出していくのです。

現在のところ、ギニアワーム感染症には適切な治療法はありませんので、体外に出てきた虫体を数時間から数日かけて根気よく引き出すしかないそうです。

もし途中で切れてしまうと体内に残った虫体が分解され、更にひどい炎症を起こしてしまうそうです。

通常、ギニアワームは脚から出てくるのですが、腕や鼻から出てきた例もあるそうです。

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アリをゾンビ化するハエの幼虫!

寄生する生物がその宿主の行動を操作する例は他にも数多くあります。

カタツムリに寄生するロイコクロリディウムは、カタツムリの触覚に入り込み鳥に見つかりやすいように葉の表面に移動させながら、イモムシそっくりに擬態します。

タイコバエというハエの仲間(双翅目)は、アリをゾンビ化することで有名です。

アカミミアリという毒針を持つ凶暴なアリ(膜翅目)がいます。

タイコバエのメスは、アカミミアリを見つけるとその体内に卵をうみつけます。

孵化した幼虫(ウジ)はアカミミアリの頭に移動して行き、その脳髄を食い荒らします。

寄生されたアカミミアリは、仲間に気付かれてしまうと自身が攻撃されてしまうので、巣から離れて、単独行動を始めます。

この一連の行動を操作しているのが実はタイコバエの幼虫なのです。

やがてゾンビ化して行動を操作されたアカミミアリは、タイコバエの繁殖地である湿気の多い場所へ誘導され、そこで食いつくされて死を迎えるのです。

何とも恐ろしい行動なのですが、ハエの幼虫にとっては生きるために必死であり、進化の過程でいつしか身に備わった生きるための知恵でもあるのです。

ギョウ虫はあざとい寄生虫!

今年度(平成28年度)から小学校でのギョウ虫検査が廃止になりました。

朝起きてすぐに肛門にセロファンを張りつける、あの検査です。

ギョウ虫は昭和20年代には70~80%といわれていた感染者が激減し、現在の日本ではその検出は1%を切っているそうです。

それでもゼロにはなっていません。

ギョウ虫はとてもあざとい寄生虫です。

夜間に這い出して来て肛門周囲に卵をうみつけます。

このときかゆみを起こす粘着物質を卵に向かって撒き散らします。

これにより感染者は肛門を無意識に掻いてしまうので、その指に虫卵が付いてしまいます。

それを洗わずにあちこち触ることで虫卵がばら撒かれてしまいますので、感染者の家族や周囲の人たちも感染することにつながるのです。

こうなると、もう脱帽するしかないですね。

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