みなさんは「テッポウウリ」という植物をご存知でしょうか。
「テッポウユリ」や「テッポウウオ」、「テッポウエビ」など、鉄砲の名をもつ生物は数多く存在しています。
テッポウユリは花の形が、テッポウウオは狩りのときに口から水を飛ばす様子が、テッポウエビはハサミをカチ合わせる際に生じる音が、それぞれ鉄砲に似ていることから、その名がつけられました。
もちろんテッポウウリも、ある性質が鉄砲に似ていることがその名の由来となっています。
今回は、そんなテッポウウリの生態について、みなさんにご紹介していきます。
テッポウウリってどんな植物?
テッポウウリは、ウリ目ウリ科に属します。
クロンキスト体系では、ウリ科はスミレ目に属していましたが、より新しい分類体系であるAPG体系においては、ウリ目として独立するに至りました。
多年生の植物ですが、日本では一年草として栽培されることが多いそうです。
テッポウウリは、漢字で「鉄砲瓜」と表します。
テッポウウリの果実が熟すと、蔓から離れる瞬間に凄まじい勢いで種子を噴射します。
種子の飛び出す様子がまるで鉄砲のようであることから、その名がつけられました。
テッポウウリは、英語で「Exploding Cucumber」と呼ばれます。
直訳すると「爆発キュウリ」。
テッポウウリが種子を噴出する様は、鉄砲というよりはマシンガンと呼ぶに相応しい豪快さですから、「爆発」という表現もあながち外れてはいないように思えます。
テッポウウリの生態
テッポウウリは地中海沿岸を起源としています。
同じくウリ科のスイカやメロンのように地表に這うように広がる茎に、7.0cmほどの長楕円形の果実を実らせます。
また暖かくなると、直径3.0cmほどの黄色い花を咲かせます。
前述したように、熟した果実は種子を勢いよく撒き散らしながら落下しますが、その目的はより広い範囲に種子を広げることであり、飛距離は3.0m以上にも及びます。
テッポウウリと人間との関わり
テッポウウリはギリシャ時代から人々の手によって栽培されてきた歴史があり、わたしたち人間と深い関わりのある植物といえます。
テッポウウリの果実及び果汁には強い苦味があるため、食用には適しません。
それどころか、蔓や果肉にはククルビタシンEという有毒な成分が含まれています。
そんなテッポウウリがどうして古くから人々に親しまれてきたのでしょうか。
それは、テッポウウリに様々な薬効成分が含まれているからです。
トルコでは民間薬として、鼻炎や黄疸を抑えるために用いられてきました。
他にも、峻下や利尿、催吐などの作用があるとされ、特に下剤として人々の間に広く浸透していたそうです。
ちなみに、ククルビタシンはウリ科植物特有の苦味成分であり、ヘチマやユウガオ、ヒョウタンにも含まれています。
ヒョウタンやユウガオの果実ではしばしば食中毒も起きているので注意が必要です。
ゴーヤやキュウリ、さらにはスイカやメロンなどにも含まれていますが、これらの植物に含まれるククルビタシンはごく少量ですので、ご安心ください。
「ゴーヤはあんなに苦いんだから、苦味成分のククルビタシンがいっぱい含まれているんじゃないの?」という疑問を抱いた方もいらっしゃるかもしれませんが、ゴーヤの苦味はモモデルシンやチャランチン、コロコリン酸といった健康を促す作用のある成分が主となっていますので、むしろ積極的に食べていただきたいくらいです。
テッポウウリの育て方
テッポウウリは、同じウリ科の植物であるスイカと同様の方法で育てることができます。
スイカでも小玉種であれば、支柱を立てるなどの工夫をすることで集合住宅のベランダでも栽培することが可能ですが、前述したようにテッポウウリは種子を勢いよく飛ばす性質があるので、ベランダでの育成はお勧めできません。
そもそもテッポウウリの種や苗が市場に出回ることはまずありませんので、わたしたちにはあまり関係のない話かもしれませんね。
テッポウウリは各地の植物園などで見ることができますので、ぜひ足を運んでみては如何でしょうか。
運がよければ、鉄砲が炸裂する瞬間を目にすることができるかもしれません。
(ライター:國谷正明)