春の三大”蛾”と言われている「イボタガ」をご存知ですか?
“蛾”を愛するコレクターが心を奪われるほど、とても美しい模様をもつ「イボタガ」についてご紹介していきます。
あなたも「イボタガ」の魅力に魅了されて下さい!
「イボタガ」とは?
「イボタガ(水蝋蛾)」とは、チョウ目イボタガ科に属する蛾です。
日本では、北海道・本州・四国・九州・屋久島に生息しており、国内ではまだ、1種類しか存在していません。
外国では、アフリカやイタリア南部、東南アジアなどで見かけられ、20種ほどいると言われています。
イボタガの幼虫が、モクセイ科のイボタノキ(水蝋樹)の葉を食べることから、「イボタガ(水蝋蛾)」と和名が付きました。
イボタガは、翅の模様が特徴的で、”フクロウ(梟)”にとてもよく似ています。
そのことから、イギリスに生息しているイボタガの近縁種「Brahmaea hearseyi」 は、別名「owl moth(フクロウ蛾)」と呼ばれているほど、模様がフクロウに似ています。
「イボタガ」の特徴
イボタガは、翅を拡げると80~115mmほどの大きさになり、蛾の中では大型です。
顔は、大きな目をした羊のような、とてもかわいらしい顔をしています。
翅の色は、少し緑かかった黒褐色です。
翅には多数の波状紋があり、前翅の中央には、眼状紋を持っています。
日本に生息しているイボタガは、春に羽化するので、3~4月の春だけ見る事ができます。
夜行性のため、電柱の電灯や、灯火になどによく飛んできます。
成虫のイボタガは、エサは食べません。
「イボタガ」の幼虫
イボタガの幼虫は、イボタノキ(水蝋樹)の葉にくっ付いている事が多いので、”いぼたのむし(水蝋の虫)”と言われています。
若い幼虫は、蛍光黄緑のような青白い緑色をしていて、とても目立ちます。
黒い点々線の模様があり、中、後胸、第8腹節、第10腹節に髭のような黒色の長い突起をもっています。
イボタガの幼虫は、イボタノキ・ヒイラギ・モクセイ・ヤナギ・トネリコ・ネズミモチなどの葉を食べて成長します。
イボタガの幼虫に毒があるのではないか?っとよく思われるようですが、髭のような黒くて長い突起に毒はありません。
幼虫を触っても無害です。
毒どころか、今よりももっと古い昔、イボタガの幼虫は、肺結核・疳 (かん) の薬として使われていたそうなので、人間の体に優しいんですよ。
胃腸病にも効果があるそうで、いぼたのむしを炙って食べていたとか。
成熟した幼虫は、特徴的な黒い色の突起がなくなって、オレンジがかった色に変わっていきます。
夏の始まる6月頃になると土の中に潜り、少し赤味のかかった黒いサナギとなり、翌年の春に羽化します。
別名フクロウとも言われる「イボタガ」
独特のなデザインが魅力的なイボタガは、フクロウによく似た模様がとても美しいんです。
イボタガの前翅の先の部分には、フクロウの羽のような模様があります。
そして、眼状紋と呼ばれる周りをアッ!と惹き付けるフクロウの目のような模様は、とても繊細で、細かい陰影まであります。
後の翅には、フクロウの口ばしのような黄褐色の模様があります。
見事なまでのフクロウの模様が、とても素晴らしく、芸術です。
大型で迫力があり、美麗です。
イボタガは、危険を察すると、目の模様と口ばしの模様でフクロウの顔を作って、敵を驚かせているそうです。
イボタガが木などに止まっていると、小鳥やネズミなどの小さな動物は、フクロウと見間違いをして逃げていきます。
イボタガの模様を見て、気味が悪いと思う人もいるようですが、蛾を愛するコレクターの方々には、蛾の最高傑作と言われています。
蛾の愛好家に大人気のイボタガは、春だけに現れる貴重な蛾なのですが、年々数が減ってきているそうです。
今後、美しいイボタガが消えないように、環境問題も重要な課題です。
きっとあなたも「イボタガ」に出会ったら、心奪われることでしょう。
(ライター 雲呑)