春になって随分暖かい日が多くなってきましたね。
過ごしやすい日が増えるのは嬉しいですが、もっと気温が上がってくるとあの鬱陶しい「蚊」達も活動を開始します。
どこからともなく湧いて出てくる蚊たちですが、彼らは一体どこからやって来るのでしょうか?
春から初夏にかけて活動を開始する蚊たちは、もちろん何もないところから湧き出てくる訳ではありません。
蚊は厳しい秋冬の寒さを乗り越えて春夏の活動に備える為、「越冬」を行いますが、今日はそんな蚊たちの越冬方法について紹介します。
蚊が秋冬に活動できない理由
蚊を含む昆虫類は、恒温度物である私たち人間とは違い体温を調節することが出来ない変温動物です。
人間には周囲の気温が20℃であれ、30℃であれ、自分が活動するのに適した体温に調節する機能が備わっています。
この体温には個人差がありますが、36℃~37℃くらいが人間が活動するのに適した対応でしょう。
ただし、外気温があまりにも平熱とかけ離れていた場合、外気温が低すぎると体温調整がうまくいかずに低体温症に掛かったり、最悪の場合凍死してしまいます。
また、逆に極端な高温下に長時間晒されても体温が上がり過ぎて命の危険に晒されますよね。
蚊の場合にも活動に適した温度がありますが、人間などの様に体温調整が出来ませんので、ほぼ外気温=体温という事になります。
従って、人間よりも活動が可能な外気の温度が限られており、その温度を大きく超えれば死んでしまいますし、大きくした回った場合は死にはしないものの、活動が出来なくなってしまうのです。
その為、蚊は気温が下がってきて自らが活動する限界温度、概ね15℃以下になると活動を停止し、冬眠状態で越冬を行います。
全ての蚊が越冬するわけじゃない!
蚊は他の多くの昆虫の仲間と同様に、卵→幼虫(ボウフラ)→さなぎ→成虫と変態を繰り返します。
蚊の仲間には卵の状態で冬を越すもの、幼虫・成虫の状態で冬を越すものがいます。
厳密に言えば卵の状態で冬を越すことを「越冬」とは呼ばないと思いますので、ここでは幼虫・成虫の状態で冬を越すことを「越冬」と呼ぶことにしましょう。
蚊はどうやって越冬するの?
越冬する蚊の中には活動を停止する「冬眠状態」で「越冬」するもの、「冬眠」せずに活動し続けるものがいます。
成虫の状態で越冬する蚊の代表例は、日本でもお馴染みのアカイエカ等のイエカと呼ばれる種類の蚊です。
彼らは自然界では洞窟や木の幹、土の中などで越冬したり、家屋内ではタンスの中や冷蔵庫の後などに潜んでいることが多く、気温が下がると活動を停止し「冬眠状態」に入り、気温が上昇すると活動を再開します。
中には暖房設備のある室内では冬眠せずに活動し続けるものもいるようです。
また、日本の都市部に多く生息してるチカイエカなどは、寒さに強く冬眠しない場合があります。
冬でも蚊に刺されるような事があれば、チカイエカの存在を疑ってみましょう。
越冬するのはメスだけ
なお、越冬できるのはメスのみとされ、オスは寒くなると越冬できずに死んでしまいます。
なぜ、メスのみが冬越できるのでしょうか?
これは神様に聞かなければ分かりませんが、昆虫界においてはオスは交尾の為のみに存在し、それが終わってしまうと種としての生存目的が果たされた事になるからと考えられます。
逆に交尾が終わった後に最も生命力を削る「産卵」を行わなければならないメスが、そこからが人生の本番とも言えます。
例えばカマキリなどは交尾の後にオスをメスが捕食してしまいますよね。
種として用済みとなったオスを産卵を控えているメスが栄養補給の為に捕食するのは、自然の理に適っていると言えるでしょう。
余談ですが、オスの蚊は血を吸わず、血を吸うのは産卵を控えているメスの蚊だけです。
これも同様に産卵のための栄養補給の為のものと考えられています。
蚊の種類にもよりますが、一回で300個以上産卵するものもいますので相当な量の栄養が必要なのでしょう。
越冬しない蚊は「卵」の状態で春を待つ
蚊の仲間には卵の状態で秋冬を過ごし、春から初夏に掛けての気温上昇に伴って孵化するものたちもいます。
例えばヤブ蚊などの仲間です。
彼らは水の中で卵に篭り冬が過ぎるのを待っています。
ヤブ蚊は台所の排水溝でも成虫になり、わずかに湿った場所でも成虫になることが出来ます。
蚊も一生懸命生きているけど
春に向けて厳しい冬を乗り越えた蚊たちですが、そんな厳しい生涯を知ってしまうと鬱陶しいからと言っておいそれと叩き潰したり出来なくなってしまうかも知れませんね。
とは言え、人間にとっては感染症の媒介者になったり、深刻な害をもたらす事もありますので出来る事なら蚊にはお目にかかりたくはないものです。
庭などに幼虫が棲息し易い水溜りを作らず、ハーブなどを栽培することによって蚊の繁殖を妨げる効果があると言われていますので、これから夏に向かってハーブなどを栽培してみては如何でしょうか?
(ライター まるお)