本当は蚊はもっとも危険な生物!
蚊は人類にとって、もっとも危険な生物なのです。
そのことをもっとみなさんに知っていただきたいと思います。
マムシに猛毒があるのはご存知だと思いますが、ではマムシに咬まれて亡くなる人は年間どのくらい居るでしょう?
日本国内のデータでは毎年約3千人が咬まれ、平均で10人前後が亡くなっています。
この時期、よくニュースになりますが、スズメバチに刺されるとアナフィラキシーショックを起こして、最悪の場合死に至ります。
国内の最近10年間(2005年~2014年)のハチによる刺傷での死者数は計189人ですので、年平均約19人です。
蚊はコブラやサソリよりも危険!
国内で数十人程度くらいの数字ですから、全世界でコブラなどの毒へビやサソリなどの毒ムシ、クマやライオンなどの猛獣といった動物が原因で死に至るケースは、年間1万人から多くても数万人程度ではないかと推定されます。
年間75万人の蚊による犠牲者!
それに比べて蚊に刺されることで死に至る方は、把握されているだけで年間約75万人です!
他の動物と比べてケタ違いどころでないことがわかります。
しかも2000年以降、ほぼ半減しているというのにこの数字ですから驚きます。
私たちにとっては、「たかが蚊に刺されただけ」程度のことかもしれませんが、実際にはこれほどの数の犠牲者を毎年のように出しているのです!
恐怖のマラリア!
蚊は毒よりも恐ろしい病原体やウイルスを持っていることがあります。
蚊に刺されることで伝染病に感染してしまい、発病してしまう可能性があるのです。
死に至るそのほとんどがマラリアです。
マラリアは、マラリア原虫という小さな単細胞生物による感染症です。
刺されたとき(吸血時)に蚊の唾液に混じってヒトの体内に侵入します。
そしてヒトの肝臓に取り付き、40度近い高熱を発し、悪寒などの症状を引き起こしながら発熱を繰り返します。
赤血球を破壊しながら増殖していき、脳や肺などの血管を詰まらせ、細胞を破壊して死に至らしめる恐ろしい病気(感染症)なのです。
ヒトはマラリアの中間宿主に過ぎないのに・・
マラリア原虫は、ヒトが中間宿主であり、実は最終宿主がハマダラカなのです。
したがってヒトの体内では無性生殖でしか増えることができず、ハマダラカの体内でしか有性生殖ができません。
ハマダラカの体内でおよそ1万倍に増えたマラリア原虫は、その唾液腺に集まり、吸血行為により唾液とともにヒトや牛などの動物の体内に侵入していくのです。
マラリア患者はすべて蚊に刺されている!
マラリアは血液を介して感染しますので、ヒトからヒトへは直接伝染しませんが、感染者(動物を含む)の血液を吸ったハマダラカの体内で生殖活動を行い、次に刺したヒトや動物へと侵入していくのです。
ですからマラリア患者≒蚊に刺されて感染したということになります。
日本でもマラリアの死亡例が!
マラリアの患者は全世界に約2億人(!)もいますが、死亡者のほとんどはサハラ以南のアフリカ諸国の子どもたちです。
潜伏期間は1週間以上ありますが、初期症状が出た時点ですぐに治療を開始すれば、重篤な状態にはなりにくいといわれています。
日本国内でも年間100~200人程度発症(すべて流行地域からの帰国者)していますが、死に至る重篤なものは1~2例といわれています。
マラリアだけじゃない!死を呼ぶ蚊の恐怖!
そのほか、今年も国内で流行し始めたデング熱、南米で流行しているジカ熱など、蚊が媒介する伝染病は、その感染や発病によって死につながることがあります。
ハチに刺されたら痛いということもあり大騒ぎしますが、蚊に刺されてもかゆい程度なので危険を感じる方はほとんどいません。
しかし実は恐るべき病原体やウイルスを持っている可能性があることを十分理解しておいて下さい!
すべての蚊がヒトから吸血するわけではない!
すべての蚊がヒトを刺したり、病原体やウイルスを媒介するわけではありません。
蚊は双翅目(ハエ目)カ科に属する昆虫で、35属あり、およそ2500種います。
そのなかでも、イエカ属、ヤブカ属、ハマダラカ属の種がヒトを刺し、悪さをします。
ただしこれらの蚊が、いつでもどこでもヒトを刺して吸血するわけではありません。
吸血するのは、産卵を控えたメスだけです。
産卵に必要なタンパク質を補給する必要があるからなのです。
オスはけっして血を吸うことはありませんし、メスも通常時は花の蜜などを吸って、チョウのようにおとなしく生きています。
蚊だって命がけ!
考えてみてください。
子孫を残すために蚊だって必死なんです。
自分の何百倍もの大きさのヒトや動物に近づき、その血を盗み取らなければ、卵を産むことができないのですから。
近づいていっただけで簡単に叩き潰されて、殺されてしまう可能性だってあるのです。
生き残るのに必死なのは、すべての動物にいえることでもあります。
蚊の行動範囲は狭い!
蚊は、体長は15ミリ以下(ほとんどが数ミリ)で、ハエと同様に二枚のみ翅がありますので、双翅目に分類されています。
残りの二枚の翅は退化していますので、小さな体と相俟って、飛翔能力はとても低いといえます。
飛ぶスピードも時速2~3キロ程度です。
一日の飛行距離は1キロ以内といわれるものがほとんどで、なかには数十メートル程度しか移動しないものもおり、一カ所に定着しているものが多いと考えられています。
蚊の適温は15度から30度
多くの昆虫やムシたちがそうであるように、蚊にも活発な活動をする適温があります。
メスは気温が15度〜30度で盛んに吸血をします。
しかし寒い場合はもちろん、35度以上の気温になると物陰などに潜伏し、活動を停止します。
蚊は卵から幼虫、蛹、成虫へと完全変態する昆虫です。
温度により生活環(卵から蛹が羽化するまでの期間)は異なり、イエカでは気温20度では14日ほどですが、25度では10日と早まります。
気温が高いと羽化後は盛んに生殖活動をおこない、数を増やしますので、わたしたちが蚊に刺される機会が劇的に増えてしまうといえます。
蚊の成長発育
多くの蚊は、卵を水面に直接ばらまくように産みます。
イエカは「卵船」と呼ばれる卵塊を水面に浮かべます。
卵や幼虫からは産卵誘引物質(フェロモン)が放出されているので、それに誘われ、同じ場所に複数の固体が卵を産みにやってきます。
蚊の幼虫は、独特の動きをするのでボウフラと呼ばれています。
水中にいますが肺呼吸なので時々水面に浮上して呼吸管から呼吸をしなければなりません。
流れのない池や沼におり、エサさえあれば小さな水たまりでも生息できますし、海水が混じっても生息できる種もいます。
微生物の死骸(デトリタス)や細菌類などを食べ、ときに他の種のボウフラを補食します。
やがて胸にある呼吸管が伸びて蛹(オニボウフラ)になります。蚊の場合、蛹の状態でも活発に動き回ります。
数日で背の皮が破れ、羽化します。
ボウフラっていう字がすごい・・
ちなみに、「ボウフラ」とはれっきとした日本語です。
通常その動きから棒振(ら)だと思っていましたが、調べてみると三種類の漢字の書き方があるので驚きました。
「棒振」「孑孒」「孑孑」です。
「孑」は子どもの「子」ではない独自の字ですし、ボウフラにしか使いません。
「孒」(単独ではケツと読む)にいたっては、なぜこのような中途半端に作られた字なのか疑問に思うほどです。漢字テストに出たら大変ですね(笑)
蚊はメスだけが越冬する!?
羽化した成虫の生存期間は2週間から一ヶ月ほどです。
晩秋に羽化した成虫は吸血をせずに、縁の下や草陰などで冬眠状態に入り越冬します。
オスは生命力が弱く、冬には死に絶えてしまいますので、春になって若いオスの出現を待ってから生殖活動を始めます。
ヒトを刺す悪役の蚊たち
前述しましたが、すべての蚊がヒトを刺すわけではありません。
悪役とされているのは、イエカ属、ヤブカ属、ハマダラカ属の産卵を控えたメスだけです。
日本代表イエカ属の蚊
イエカ属の種は体長5〜6ミリでヤブカより一回り大きめです。
その名の通り、屋内に侵入してヒトを刺します。
日本には30種ほどがいますが、そのうちアカイエカは、日本を代表する蚊といっても過言ではありません。
イエカは夜間に屋内で活動します。
寝ようとして布団に入ると、その耳元でうなりをあげて飛んでいるのがイエカなのですが、残念ながらその蚊を退治しても意味はありません。
その羽音をさせているのはメスを狙って近づいてきたオスのイエカです。
オスがメスを呼ぶために二枚の翅を使ってあの不快な音を出しているのです。
メスの羽音は人間には聞こえないのです。
イエカはヒトばかりでなく、鳥(特にニワトリ)や犬からも吸血します。
イヌフィラリアを媒介することがありますので、犬を飼っている場合には要注意です。
最近の都市部に多いのは、チカイエカです。
その名の通り地下街などの冬でも暖かい場所に生息して、一年中活動しています。
冬眠せず冬でも吸血するので、本当にやっかいな蚊なのです。
昼の屋外代表ヤブカ属の蚊
体長は4〜5ミリほどで、イエカ属よりも一回り小さな、日本国内に普通にいる蚊です。
ヤマトヤブカ、ヒトスジシマカは、特によく見かけます。
おもに昼間に活動し吸血する種ですから、昼の代表ともいえる蚊です。
庭仕事やバーベキューなどの屋外での活動時によく狙われます。
特にヒトスジシマカは、一昨年のデング熱の流行騒ぎで一躍その名を挙げました。
ヤブカは秋田・岩手県付近が生息の北限だと考えられてきましたが、近年では生息域を北方に拡げつつあります。
ちなみに、イエカ属よりもヤブカ属のほうが、刺されたときのかゆみが強いといわれています。
もっとも危険なハマダラカ属
ハマダラカ属はマラリアを媒介する最も危険な蚊の仲間で、世界に460種います。
ハマダラカ属のすべての蚊がマラリアを媒介するわけではなく、そのうちの50種ほどだといわれています。
日本国内には、2種が生息しています。
和名の由来は、翅に白と黒のまだら模様があることからです。
ハマダラカ属は極北地方などを除きほぼ世界全域に分布しており、過去にはカナダや、明治時代の北海道でもマラリアが流行したことがあります。
現在国内ではマラリア原虫そのものが撲滅されたという状態なので、国内でハマダラカに刺されたからといってマラリアを発症することはまずありません。
しかし、現在年間100~200人ほどが海外でマラリアに感染し、国内で発症しています。
したがってデング熱のようにマラリア感染者から吸血したハマダラカがいれば、国内でもマラリアが伝染する可能性はあるといえます。
またハマダラカ属はマラリア原虫のみでなく、フィラリアを起こすバンクロフト糸状虫や病原性ウイルスも媒介することがあります。
他の属の蚊と異なり、澄んだ水を好みます。
卵は一度に50~200個ほどを水面にばら撒くように産みます。
幼虫であるボウフラは水面とほぼ平行に定位して、バクテリアや藻類などを食します。
その他の生態は、幼虫、蛹、成虫ともにほぼ他の属の蚊と同じです。
人を刺さない蚊はどんな蚊?
こうした吸血する、人間にとって害虫以外のなにものでもない蚊がいる一方、ヒトから吸血することなく活動する蚊もいます。
こうした蚊は、花から花へと移動し、花の蜜を吸って生きています。
害虫といわれるイエカ属などのオスも同様です。
実はこれらの蚊は、植物の受粉にも貢献しているのです。
蚊によって恩恵を受けている植物もかなりの数になります。
また蚊の幼虫(ボウフラ)は、水中のバクテリアやデトリタス(微生物の死骸等)を食べますので、有機物を分解し、水の浄化に多少なりとも貢献しているといえます。
ちょっと違う蚊の仲間
ユスリカという種がいます。
ヒトを刺さない蚊として知られていますが、実はちょっと違います。
正確にはヤブカやイエカの属するカ科ではなく、ユスリカ科に属しますので「蚊」ではなく、従兄弟のような近い親戚です。
ユスリカの仲間は非常に多く、国内だけでも二千種、世界には1万5千種もいます。
もちろん「蚊」ではありませんので、一切吸血はしません。
ユスリカの幼虫は、アカムシまたはアカボウフラと呼ばれています。
この幼虫が身体を揺するように動くことからユスリカという名前がつきました。
アカムシは、ボウフラと同じ水生のものが多いのですが、水辺の土壌中などに生息する半水生的な種もいます。
アカムシは安価な釣りエサとして販売されています。
また、金魚の生餌としても重宝されています。
ユスリカの成虫は蚊柱(かばしら)を作ることで知られています。
これは多数の固体が空中に柱状に集合して飛んでいるもので、数十メートルの高さに達する場合もあります。
蚊柱の中心には1匹のメスがおり、それを取り囲むようにオスが多数存在して交尾のチャンスをうかがっているのです。
ユスリカのオスメス比はそれほど極端に違うようなのです。
また、ユスリカの成虫は口器が退化しているので、羽化後一切の食餌ができず数日程度しか生きられません。
こうしたことから、オスは集団になって蚊柱を作ることで、羽音を周囲に響かせて数少ないメスを呼び寄せ、生殖の数少ない機会をなんとか作り出しているようなのです。
選ばれるのは数千匹、数万匹のうちのたった一匹なのですから、ちょっと涙ぐましい話ですよね。
刺されたことに気付きませんでした?
蚊は口吻(こうふん)という鋭く尖った針状のものをヒトの皮膚に突き刺します。
いかに細い針であっても、いかに鈍感なヒトであっても、刺されたことに気付いても良いはずなのですが・・。
この口吻からは、ヒトに痛みを感じさせないように麻酔様の物質と、血液の凝固を防ぐ物質の混じった唾液が分泌されているのです。
ですから何かに夢中になっていたりすると、数ヶ所を同時に刺されていても、なかなか気づきにくいというわけです。
しかも平均的な吸血時間は2〜3分ほどだといわれています。
意外と長い時間、ヒトは蚊に刺されたまま、血液を提供しているようなのです。
食べ過ぎの蚊もいます!
ヒトの油断に付け込む訳ではありませんが、自分の体重(2〜3ミリグラム)の3倍以上も吸血する欲張りな個体も存在します。
食べ過ぎ(飲み過ぎ)ですので、こういう個体は腹が大きく膨らみ、バランスが悪くなりますから、フラフラと飛翔したり、動きが鈍くなります。
こういうのを見ると、俺の血を返せ~!と言いたくなりますよね(笑)
蚊に刺された時のかゆみのしくみ
さて、蚊に刺されてもっとも嫌なことは、刺された後にかゆみを起こすということです。
実はこのかゆみの原因は、刺されたときに注入された蚊の唾液によるアレルギー反応なのです。
かゆみや腫れの程度にはもちろん個人差がありますが、体質やその日の体調によっても変化します。
また体内に残留した唾液の量にもかかわってきます。
アレルギー反応のタイプって?
アレルギー反応には、大きく分けて二種類あります。
一つはアレルゲン(原因物質)との反応直後から発生する即時型で、有名なものとしてアナフィラキシーショックがあげられます。
もう一つは遅延型といい、原因物質との接触から1〜2日後に反応が現れるものです。
小児では遅延型が多いとされていますので、子どもが蚊に刺された場合、刺された直後からかゆみは発生しますが、時間が経つにつれて徐々にかゆみが強くなり、より強く長引く傾向が見られるのです。
ちなみに反応を起こさない方(特に高齢者)もいます。
こういう方は蚊に刺されてもかゆくない=刺されたことに気づいていない場合もあります。
ポイズンリムーバーでかゆみを軽減
どんなに注意をしていても、その隙を突かれて、蚊に刺されてしまうことはあります。
もし刺されてしまったら、まずは病原体やウイルスの侵入を阻止することとかゆみ対策を早急に取ることが肝心です。
すぐに刺された箇所を吸引し、体内に注入された蚊の唾液を排出させることは、かゆみの軽減にとても効果があります。
このとき「ポイズンリムーバー」という注射器のようなものが便利です。
ハチに刺されたり、可能性は低いですが毒ヘビに咬まれた時などにも有効ですので、バーベキューや川遊びなどの屋外での活動時にとくに重宝します。
虫刺されのかゆみ対策は?
かゆみを引き起こすのは、蚊の唾液です。
刺されている途中で気付いたときには、叩き潰してしまいたくなります。
しかしそれでは蚊の唾液がより多く体内に残ってしまい、かゆみが強くなって恨み倍増になってしまいます。
最後まで吸わせて口吻を抜くまで待つか、指で弾き飛ばすようにしてやっつけた方が唾液の残留は少ない=かゆみが減ります
かゆみを減らすためには、蚊に刺された部分を早めに冷やした方がよいです。
熱湯も効果がありますが、かなり高音でないと効果がありませんので、火傷をしてしまう可能性があります。
逆にお風呂くらいの適度な温度で暖めてしまうと、血行が良くなるのでかえってかゆみが増してしまいます。
蚊に刺されても掻いてはいけない!
かゆみは、マスト細胞(肥満細胞)と呼ばれる細胞のなかに貯蔵されているヒスタミンという物質が放出されることで起こります。
刺激を受けたマスト細胞はヒスタミンを放出し、そのレセプター(受容器)と結合することで、神経を介して脳へかゆみの信号を伝えるのです。
かゆみが強いと、わたしたちはその反応としてついつい掻いてしまいます。
掻くことで気持ちがよくなり、一時的にかゆみが軽減するからです。
ただし患部を掻き過ぎてしまうと皮膚を傷つけてしまい、余計にかゆみが増してしまいます。
ですからかゆくても掻いてはいけません!
こういった場合にはかゆみ止めを使用することをおすすめします。
かゆみを抑えることにより、皮膚への負担を最小限にとどめることができるからです。
かゆみ止めの種類が多過ぎて選べないときはプロに聞け!
市販されているムシさされに対するかゆみ止めは種類が豊富にありますので、薬局の棚にもあふれんばかりに並んでいます。
実際にはどれを選んで良いのか迷ってしまいます。
一般的なものだけでも、液状、軟膏タイプやクリーム状のものがあります。
素人目には、どれも同じように見えてしまいますが、その成分や効果はまちまちなのです。
よくわからなければ薬のプロフェッショナルである薬剤師さんに相談するなどして、自分に合ったかゆみ止めを選んでもらった方が賢明です。
ステロイド入りのかゆみ止めは要注意!
かゆみ止めの主成分として、抗ヒスタミン剤や抗炎症剤が入っています。
これはかゆみの原因物質であるヒスタミンの働きを抑えてくれるものです。
それに加え殺菌剤、ステロイド剤、局所麻酔剤が入っているものもあります。
ステロイド剤は、かゆみに対してよく効くと言えるのですが、強い副作用を示す場合もありますので、使用の際には注意が必要です。
繰り返し皮膚に直接塗布する場合には、皮膚線条(妊娠線などの皮膚の割れ目)などのダメージを与える可能性があるのです。
ス~っとするのがよく効くの!?
かゆみ止めには、その他の成分としてメントールなどの清涼剤が入っているものがあります。
スーっとした清涼感を感じると、温覚レセプター(温度センサー)に作用して冷感を覚えるので、一時的ではありますが、かゆみが治まる鎮痒作用があります。
本来は患部を冷やした方がより効果的なのですが、十分その代用になるのです。
蚊に刺されない対策は?
感染症を防ぐためにも、この執拗なかゆみを避けるためにも、とにかく蚊に刺されないことが肝心なのですが、蚊に刺されないための有効な対策は、ありません。
ですから、自分の周りに蚊を寄せつけないようにする・・これしかありません。
寝室は網戸や蚊帳を使ってしっかりガードして蚊の侵入を防ぎましょう。
そして室内では、蚊取り線香や電器蚊取り器などを使い、侵入した蚊を撃退しましょう。
屋外で活動しなければならない場合、長袖などをはおって皮膚の露出を減らしたり、虫除けスプレーを使うのも良いでしょう。
あとはこまめに汗を拭くなどして、ニオイで蚊を誘わないようにするしかありません。
どんなヒトが蚊に刺されやすいのか?
蚊には刺されないに越したことはありませんが、そうはいってもなかなか・・
では逆に、どんなヒトが蚊に刺されやすいのかを考えてみましょう。
吸血する蚊は、温度、湿度、ニオイ、二酸化炭素を感知するセンサーを持っています。
また汗腺から分泌される乳酸にも反応を示します。
赤外線センサーのように、周囲よりも温度の高い場所を判別し、それに向かっていく習性があります。
これらを頼りにヒトの皮膚に近づいてくるのです。
また足のニオイを好むといわれていますので、上半身よりも下半身を狙われることが多いようです。
それらを総合して考えると、体温が高くて、呼吸回数が多く、汗かきなど新陳代謝が盛んで体臭の強いヒトが特に刺されやすいといえます。
体温が高めの子どもや肥満傾向の方が狙われやすいのもそのためだと思われます。
また運動後や飲酒時など、体温や呼吸数が上がり、新陳代謝が亢進していると、余計に刺されやすくなることはいうまでもありません。
また黒い服を着ていると、熱を吸収しやすいので白い服よりも狙われやすいようです。
肌の色も濃い方を好む傾向があるようです。
日焼けをして小麦色の肌になってしまうと、より狙われやすいということになります。
血液型がO型のヒトが好まれる?
蚊には血液型に好みがあり、O型が好まれ、A型は刺されにくいという意見があります。
害虫防除技術研究所という機関のいくつかの実験では、O>B>AB>Aの順に蚊に刺されやすかったという実験結果が出ました。
しかし、インドの研究者がおこなったマラリア患者における血液型の調査では、明らかにA型患者が多く、O型患者が少なかったのです。
マラリアは蚊に刺されて感染するので、このことから逆の結果も予想できてしまいます。
血液型自体、科学的に否定する考えもありますので、なんともいえませんが、それをハッキリさせるためには、今後の研究を待たなければなりません。
若者だけが嫌うモスキート音
「モスキート音」という言葉を聴かれたことがありますか?
文字どおり蚊の音なのですが、夏の夜など耳元で唸りをあげるイエカの出す不快な羽音のことを指しています。
これを人工的に発生させた装置が2005年にイギリスで開発されました。
1万7千ヘルツの「キーン」とした不快な高音(高周波数)を発します。
ところがこの高音域の音が聞こえるのは20代前半までといわれているのです。
ヒトの耳は年齢とともに退化していきます。
特に高音の可聴音域が徐々に狭まるので、経年的に高音が聞こえなくなります。
1万7千ヘルツの音は、30代以上のヒトにはほぼ聞こえないといってよい音域なのです。
これを利用して飲食店や書店に長居する「若者の撃退」を企画開発された装置がそれです。
音自体がするだけで、健康被害はありません。
それに口やかましいオジさんやオバさんの耳には絶対に聞こえませんので、ウルサイ!という苦情は若者からだけです(笑)
モスキート音の効果のほどは?
日本でも2009年に、深夜の公園での若者の「たむろ」に悩んだ足立区が、試験的に導入して話題になりました。
1年ほど続けましたが、直接というよりも間接的な効果はあったようです。
話題になることで世間から注目を浴び、訪問者が増えましたので、若者たちにとっては居づらい場所になってしまったようです。
実際に高齢になると、あのイエカの羽音も聞こえなくなってしまうようですので、不快な音から解放されることになります。
また高齢者は刺されたあとのかゆみにも徐々に反応しなくなりますから、蚊の存在があまり不快に思わなくなるのかもしれません。
蚊の駆除は殺虫剤!
蚊を駆除するためには、殺虫剤の散布しかありません。
屋外ならばヤブや木陰等の生息密度の高い場所を中心におこないます。
ただし大量の殺虫剤を撒くことは、環境汚染にもつながりますので注意が必要です。
また蚊もやられっぱなしではありません。
生き残った固体が殺虫剤の成分に対して「耐性」を獲得してしまうと、殺虫剤が効かなくなってしまうのです。
天然の殺虫剤である除虫菊
除虫菊(シロバナムシヨケギク)の種(胚珠)に、蚊に対する殺虫効果があることは古くから経験的に知られていました。
また、蚊は柑橘系のニオイを嫌う傾向があるので、夏みかんなどの皮汁や果汁を皮膚に塗り忌避剤として使用する地域もあります。
除虫菊は、地中海原産のキク科の多年草で、マーガレットのような白い可憐な花が咲きます。除虫菊の種にはピレスロイド(ピレトリン)という物質が含まれています。
この物質は昆虫や爬虫類、両生類の神経細胞に対して強力な毒性を示すので致死的な効果があり、一方でほ乳類や鳥類にはほとんど毒性を示さないために、特に蚊やダニに対して有用な殺虫剤として用いられています。
蚊取り線香は、線香の中にこのピレスロイドを練り込んだ製品です。
現在では除虫菊から直接抽出したピレスロイドでなく、工業的に合成されたピレスロイド系の薬剤が大量生産されています。
ただし1996年にピレスロイドに耐性を持つ蚊が発見されましたので、今後の研究が待たれます。
蚊の生物学的駆除
蚊の天敵として、トンボとクモが知られています。
特にトンボはヤゴと呼ばれる幼虫が水中でボウフラを補食しますので、成虫と併せて強力な蚊の天敵になっているのです。
ボウフラはメダカなどの淡水性の魚類にとっても重要なエサとなりますので、庭にある池などに、コイやフナ(金魚)などを飼うことでボウフラの発生を防ぐことができます。
また水面を油で覆うと、ボウフラは呼吸ができなくなり、死んでしまいます。
これはパナマ運河建設時にアメリカが実際におこなった方法です。
ボウフラはフェロモンを出して仲間の産卵を促しますので、集中した駆除が可能なのです。
蚊取り線香って実はすごい!
蚊取り線香は、日本で発明されました。
除虫菊の種から抽出された殺虫成分であるピレスロイドを線香に練り込んだもので、いまでも渦巻き状のものがよく知られています。
誤解されやすいのは、この煙に殺虫成分が入っているのではなく、燃焼によって生じた無色透明の揮発した成分が拡散していくことで効果を上げるているのです。
蚊取り線香は1890年、みかん農家であった上山英一郎(大日本除虫菊=金鳥の創業者)によって当初は棒状の線香として発明されました。
棒状では燃焼時間が40分程度と短く、また横に倒れて火災が発生するなどしたため、1895年に渦巻き状に改良され(1902年発売)現在まで続いています。
電気がなくても使えるので、奥地での普及が進み、マラリア予防に貢献しています。
近年は電気式、スプレー式などの開発も進んでおり、蚊取り線香は年々見かけなくなってきましたが、お手軽であること、風情があり夏の風物詩でもあることから根強いファンが多く、一定の販売量もあるので、生産が打ち切られることはないでしょう。
ちなみに上山英一郎氏は、その遺徳をたたえられ、除虫菊発祥の地として広島県尾道市に除虫菊神社に神として祀られています。
(投稿者:オニヤンマ)