ハブは日本固有の毒ヘビ!

ハブは、有鱗目ヘビ亜科クサリヘビ科ハブ属に分類される猛毒を持つヘビです。一般にハブといった場合、ハブ属の代表種でもある『ホンハブ』と呼ばれる種を指します。

漢字では『波布』と書くこともあります。

この記事では、ハブ属全般については『ハブ』と書き、中心種であるハブについては『ホンハブ』と表記して区別するようにします。

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ホンハブは南西諸島=奄美諸島及び沖縄県の島々に分布する固有種でもあります。

ハブには近似種が多い!

ホンハブの他にも、この地域にはトカラ列島に生息する『トカラハブ』、八重山諸島には『サキシマハブ』というハブ属の近似種が分布しています。トカラハブとサキシマハブはかつてはホンハブの亜種と考えられていましたが、現在では独立した種として分類されています。したがって、トカラハブとサキシマハブは、それぞれの地域の固有種でもあります。

また、ホンハブと生息地が重複する『ヒメハブ』は、ハブ属でなくヤマハブ属に分類されていますが、極めて近い種でもあります。

 

ホンハブは22の島にいる!

ホンハブは奄美諸島と沖縄本島およびその周囲にある、22の島にのみ分布しています。

奄美諸島では、奄美大島、枝手久島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島に居り、沖縄本島と伊平屋島、伊江島、水納島、瀬底島、古宇利島、屋我地島、敷地島、浜比嘉島、平安座島、宮城島、伊計島、渡嘉敷島、渡名喜島、奥武島、久米島の計22島です。

たとえ隣り合う島であっても、ホンハブが生息する島としない島とははっきりと分かれています。これを『ハブの飛び石状の分布』と言うことがあります。

ハブの飛び石状分布

南西諸島の中でも、宮古列島や奄美大島と沖縄本島の間にある沖永良部島や与論島、沖縄本島周囲の伊是名島、粟国島、慶良間諸島の座間味島などでは、ホンハブを始めとしたハブ属の毒ヘビはまったく生息していません。

こういった飛び石状の分布については、さまざまな理由が考えられますが、ハブのいない島は標高が低く、固有種も少ないことから以下の仮説が有力です。

標高の低い島ではハブは生存できなかった!?

氷河期においては海水面が低く、その時期の日本列島は大陸と地続きであり、島々もつながっていたために、動物たちは自由な移動ができたと考えられています。

しかし、間氷期になり気温が上昇すると海水面が高くなり、島々はそれぞれ孤立していきました。特に標高の低い島はこの時期には水没してしまった可能性もあり、陸上生物は生存することができなくなったり、泳いで海を渡り他の島へ逃げ出したりしたのではないかと考えられています。

ただし、生息域が重複するホンハブとヒメハブについては、どちらか一方しか生息していない島もあるので、一概にこれが正しい説だと言うことができないのが現状です。

 

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ホンハブは日本最大の毒ヘビだった!

ホンハブは、全長100~200センチ、体重は1~1.5キロほどです。過去最大の個体は2011年に沖縄本島恩納村で捕えられた全長242センチ、体重2.8キロ、2009年に奄美大島で捕えられた体長226センチ、体重3.15キロのモノです。

ニホンマムシが60センチ程度、ヤマカガシが1メートル程度の大きさですから、ホンハブはそれらよりはるかに巨大な日本最大の毒ヘビだということになります。

金ハブ、銀ハブ、黒ハブに、赤ハブも!

ホンハブの基本的な体色は、黄褐色の地に黒褐色の斑紋が入ります。ただし地域による変異が大きく、生息する島ごとに斑紋が異なることがよくあります。

ホンハブの中でも、特に黄色の色彩が強く斑紋が不明瞭なモノを『金ハブ』、赤や黄色の色素が欠乏して白から灰色っぽく見えるものを『銀ハブ』と呼び習わしています。

その他にも『黒ハブ』『赤ハブ』などとその地の色により特別な呼び方をする場合があります。ただし、どの体色を持つ個体でもその腹部は白っぽい色をしています。

ホンハブは沖縄の墓地に潜んでいる!

ホンハブは夜行性で、昼間は穴の中や樹の洞などに潜んで休んでいます。小雨や曇天時などの薄暗い環境下では、昼間でも積極的に活動することがあります。

ホンハブは平地から山林、水辺まで至るところに生息し、地表ばかりでなく、樹上でも活動します。特に沖縄地方では、石垣を積みあげて作る墓が多いため、ホンハブにとって墓地は格好のすみかとも言える場所になっています。

またホンハブは大好物であるネズミを追って、人家の周辺にもよく姿を現し、屋内に侵入することもあります。こういう場合に咬傷事故が起こりやすいのです。

ホンハブは非常に攻撃的!

ホンハブの性格は非常に激しく、とても攻撃的です。他の毒ヘビなどのように鎌首をもたげて威嚇を行なって敵を追い払うことなく、いきなり咬みついてくることがよくあります。

ホンハブの生息域の森林などに踏み入り、うっかり近づいてしまったり、踏んづけてしまった場合など、足を咬まれてしまうことが多いようです。

徳之島に生息するホンハブの個体群は特に攻撃的なことで知られています。そのためホンハブによる咬傷事故が最も多いのも徳之島なのです。

ハブに打たれる!

ホンハブは、攻撃時には最大で体長の2/3ほども首を伸ばして咬みつきます。すばやい動きを見せるので、そのときの衝撃は非常に強く、ムチで叩かれるようなイメージです。ですから、現地ではホンハブに咬まれることを『ハブに打たれる』と表現しています。

ホンハブはネズミが好物!

ホンハブは、おもに小型の哺乳類…特にネズミを好んで食べます。その他に、鳥類、爬虫類、両生類や魚類まで幅広く食します。なかには国の特別天然記念物で絶滅危惧種でもあるアマミノクロウサギを捕食していたという報告や、人家に侵入して飼いネコを飲み込んでいたという報告もあります。

野生生物ですからエサについては地域差もありますが、ホンハブは特にクマネズミを好んで捕食するようで、その割合が80%以上を占めるというデータもあります。

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繁殖はコンバットダンスの勝者がおこなう!

ホンハブの繁殖は、卵生です。4月頃に交尾をしますが、このときメスを巡ってオス同士が絡み合いながら相手を締め付ける闘争を繰り広げます。クネクネと踊るような様相から、これをコンバットダンスと呼んでいます。力尽きた敗者は逃げ出して森に消えていき、勝ち残ったオスだけが交尾をすることができるのです。

ホンハブの幼体にも猛毒がある!

ホンハブのメスは7月頃に産卵します。一回の産卵数は4~15個ほどです。メスは産卵後、しばらく卵を守るようにその周囲で生活します。

卵は約40日でふ化します。幼体は生まれながらにしてすでに猛毒を持ちますので、小さくても侮れない存在なのです。

ホンハブは冬眠をしない!

ホンハブが生息するのは、南西諸島という亜熱帯地域に限られています。この地域は冬の気候も温暖で、雪が降るようなことはほとんどありません。

したがってホンハブは、冬眠をしません。ただしヘビは変温動物ですので、気温が下がる時期には動きが鈍くなり、その活動も低下します。

ホンハブには天敵がいない!?

ホンハブの天敵として、タカやワシなどの猛禽類が挙げられることがあります。しかし実際には、幼体ならともかく、猛毒を持つ大型の成体をこれらが積極的に狙うということではありません。ですからホンハブはヒトを除き、この地域の生態系の頂点に立っていると言えるのです。

マングースはホンハブを捕食するのか?

野生のホンハブを退治する目的で1910年に海外から沖縄本島へフイリマングース(食肉目マングース科エジプトマングース属)が持ち込まれました。

マングースは雑食性で、小型哺乳類や爬虫類、昆虫等を捕食します。自然下に放しておけばヘビやネズミを捕食するだろうと考えたようで、ハブとクマネズミへの対策として導入(移入)されたのです。

しかしフイリマングースは見世物(興行)として、目の前にいるハブと対決することはあっても、自然環境下でハブを積極的に捕食することはありません。逆にホンハブに捕食されてしまうこともあるので、むしろ不利な闘争は避けるようです。

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マングースは役立たずの害獣!?

フイリマングースは水が苦手で泳げませんので、湿気のある場所に近付きません。当初のもう一つの目的であるクマネズミの駆除にしても、それらを積極的に捕食することはありませんでした。むしろ昆虫類を好んで捕食し、ときにはアマミノクロウサギを始めとした、離島の希少動物や固有種を捕食してしまうこともあるのです。さらに、農作物を食い荒らしたり、鶏などの家畜を襲うこともあるので、現在では繁殖したマングースを害獣として駆除の対象にするようになってしまいました。

 

マングース導入は外来種持ち込みの失敗例になった!

こういったことから、マングースの移入は、外来種の持ち込みの失敗例として頻繁に取り上げられています。

近年、ペットとして飼われていた個体が逃げ出して野生化したアライグマや、無秩序な放流を繰り返したことによるブラックバスの存在など外来種の繁殖および固有種の駆逐が問題になっています。その悪しき先例となっているのです。

ヘビ毒の強さはLD50値で表わす!

日本国内には、大きく分けてハブ、マムシ、ヤマカガシの3種類の毒へビがいます。

ヘビ毒の強さを表す指標として、LD50値というものがあります。これは半数致死量とも呼ばれており、実験動物に毒物を与えたとき、その半数が死亡する毒量を体重1キロあたりに換算した数値のことです。この値が小さければ小さいほど少量で死に至りますので、強力な毒素だといえるのです。

LD50値は投与方法で違いが出る!

ただしこのLD50値は、毒素の投与方法により違いが出ます。

一般的な薬剤と同様、毒素の投与は注射の場合でも、皮下注射、筋肉注射、静脈注射などで効果が変わりますし、口から飲み込ませる経口投与という方法もあります。

通常、静脈注射による投与では、全身にいきわたる時間が短いので『毒の回りが早い』ということになりますから、LD50値は小さくなります。

ヘビ毒のLD50値はおもに皮下注射による投与量で表されます。これは皮膚を咬まれた時と同じ状況を想定したものと思われます。

最も強い毒はヤマカガシが持っていた!!

国内3種類の毒ヘビの毒の強さの順位は以下のようになっています。

 

第1位 ヤマカガシ LD50= 5.3mg/kg

第2位 マムシ   LD50=16  mg/kg

第3位 ハブ    LD50=54  mg/kg

 

つまり3種の毒ヘビのうち、最強の毒を持つのはヤマカガシで、ハブの毒は最も弱いということになるのですが…。

 

LD50値よりも毒の注入量!

意外なことに、身体が大きく猛毒を持つとされるハブの毒素の方が他の二種の毒ヘビに比べてもっとも弱く、理論上ではマムシの毒の方が3倍以上も強力だということになります。さらに最強の毒を持つヤマカガシにいたっては、ハブの約10倍もの強さです。

ここで注目すべきは、毒素そのものの強さよりも、咬まれることで体内に注入される毒量なのです。

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マムシに毎年10人殺されている!

日本国内において、ニホンマムシの咬傷事故数は、年間3千件(人)ほどで推移しています。事故数が多いのは、ニホンマムシが広く日本国内に分布しており、ヒトが遭遇する機会が多いからといえるでしょう。ニホンマムシの咬傷による死亡者は、年平均で10人ほどにのぼります。

これに対してハブでは、咬傷事故は年間100件ほどです。ハブは、その生息範囲が南西諸島に限定されますので、対象人口数が少なく、また個体数も減ってきているので、咬傷事故は年々減少してきています。ハブの咬傷による死亡者は年に一人いるかいないか程度です。

致死率では、ハブもマムシも変わらない!

データで見ると、2000年以降、ハブに咬まれて死亡する人はゼロでした。2013年に一人亡くなりましたが、最近では対処法が徹底され、抗毒血清の効果もあり、死に至るケースはほとんどありません。

これはマムシにおいても同様の傾向がみられます。

過去のデータを見ても、ハブもマムシも毒の強さに差はありますが、咬傷事故数から見た死亡者数=致死率では大差ありません。

ハブは大量に毒液を注入する!

前述したように、毒の強さではハブよりマムシの方が3倍も強いのですが、ニホンマムシの身体は小さく、一回あたりの毒の注入量は少ないと考えられています。

それに対して、ハブの毒牙は長さが1.5センチもある大型のものです。毒の注入量もマムシよりもはるかに多いといえるのです。いかに毒が弱目でも、大量に注入されれば、その被害は甚大になります。

 

またヤマカガシでは、ノドの奥にある後牙に毒がありますので、相当大きく口を開けて深く咬み込まなければ毒を注入することができません。ですから、ヤマカガシの咬傷事故はほとんど起こりません。長い間、ヤマカガシが無毒のヘビだと考えられていたのは、そのためなのです。

ハブの毒はじわじわ効いて、体内の組織を破壊する!

ヘビ毒には大きく分けて、おもにコブラ科のヘビが持つ神経毒とクサリヘビ科の持つ出血毒があります。

神経毒は文字通り神経系に作用して、最悪の場合心臓や呼吸を止めてしまいますので、即効性があり、すぐに対処しないと死に至りますので、とても恐ろしいモノだといえます。

それに対して出血毒は、即効性こそありませんが、ジワジワとしみ込みながら体内の組織を徐々に破壊していきます。たとえ死を免れても一生その後遺症に苦しむことになりますので、こちらも恐ろしいモノであることにかわりありません。

ハブの持つ毒素は、出血毒が主体ですが、一部に神経毒も含まれていますので、より重篤な症状を起こすこともあります。

出血毒は、獲物の下ごしらえだった!

出血毒は、唾液が高度に発達したもので、胃液などと同様の消化液(消化酵素)が含まれているのです。従って毒液そのものにタンパク質を溶解する能力があり、血管組織をはじめタンパク質でできた体内の組織を溶解し、破壊してしまうことで、相手にジワジワとダメージを与えていきます。

これは、のちにヘビが獲物を飲み込んだ時にその消化を助けるという効果があり、料理でいうところの下ごしらえに相当するものでもあるのです。

ハブに咬まれたら…

毒ヘビによる咬傷事故で唯一有効な治療方法が血清療法です。

昔から沖縄地方で人々に猛威をふるってきたハブですので、ハブ毒に対する血清は1904年に作られており、1905年からすでに実用が開始されています。

当時は冷蔵保存ができませんでしたし、離島にまで行き渡っていたわけではありませんが、近年では凍結乾燥した血清が開発され、保存期間も大幅に伸び、またEDTAなどの中和剤を添加することにより、後遺症の発生もかなり抑えられるようになりました。

ハブに咬まれると痛みをともなう内出血が…!

ハブに咬まれると、まずはその毒牙が皮膚に食い込み、注射針を突き刺したような痛みを感じます。でも、咬みつかれるその痛みはほんの一瞬です。

しばらくしてから体内に侵入した毒素により、ジンジンとした激痛が始まるのです。やがて傷口周囲に内出血が起こりはじめます。この内出血によって皮下組織に溢出した血液がたまり込んで腫れあがり、熱を持ちながらその痛みはどんどん強くなっていきます。

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ハブに咬まれると、血が止まらない!!

毒牙による傷口は小さく、そこからの出血はそれほど多くはありません。ところが毒液は血小板を次々に凝集してしまうことで血液中の血小板数を減少させてしてしまいます。すなわち止血作用が低下しまうのです。したがってダラダラとした内出血がいつまでも続くことになります。さらに他の傷口などがあれば、そこからも出血が起こることがあります。

筋肉が壊死を起こし、動かなくなる!!

また毒液は周囲の血管組織を破壊するので筋肉組織に壊死を起こさせたり、骨格筋線維を溶解させてしまうので、手足を咬まれた場合には、運動障害を起こすことになります。

毒素が全身を巡るようになると吐き気、腹痛や下痢、意識障害が起こったり、低血圧によるショック症状を招くこともあります。

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とにかく医療機関へ急げ!出血毒は後遺症を残すこともある!

ハブに咬まれたらすぐに医療機関に駆け込んで下さい。早期に抗毒血清を打てば、それほどひどい目には遭いません。早い時点で毒の拡散を食い止めないと心臓や血管などの循環器系や腎臓等にも被害が拡大してしまい、重篤な場合には死に至ってしまいます。

出血毒は神経毒に比べて致死率は低いのですが、組織を破壊していくために激しく痛み、筋の拘縮により、手足の運動麻痺や運動障害を起こしたり、壊死によって手足などの切断をせざるを得なくなったり、重篤な後遺症を残してしまうことがあるのです。

ハブの毒素には、神経毒も含まれている!

実はハブの毒液中には少量ながらコブラなどと同様の神経毒も含まれています。これにより、おもに目に被害をもたらし、斜視や複視などの視力障害が起こることがよくあります。

ヘビ毒は、スズメバチの毒などと同様に単純な組成のものではなく、その毒液中にはさまざまな有害物質が含まれています。したがって、注入された毒量や咬まれた部位によっても症状はさまざまに現れてくるのです。早期に対処をしないとダメージは大きくなってしまいますので、時間との戦いでもあるのです。

アナフィラキシーショックにも注意を!

一度ハブに咬まれたことがある場合には、アナフィラキシーショックを起こすことが多いので、特に注意が必要です。これはアレルギー反応の急性症状ですので、毒の強さや量に関わりなく起こります。

ハブに咬まれたあと、数分から10分以内に症状が現れ、急激な血圧低下や気管の狭窄による呼吸困難を起こしますので、早期に処置をしなければ死に至ることがあります。ヘビ毒そのものよりもこちらの方が危険な場合もあるのです。

猛毒を持つハブは害獣なのか!?

猛毒を持つハブは、攻撃性が高く、むやみやたらにヒトを咬んで死傷させるということからすれば、害獣そのものといってもよい存在です。

ところが実際には、益獣ともいえる役割があるのです。

まず、農作物を食い荒らすなど人間の生活に害を与える小動物を退治してくれることが挙げられます。特に人家にさまざまな被害をもたらすネズミを好んで捕食するので、実は大いに役立つ存在でもあるのです。

また琉球諸島を始めとしたこの地域の自然環境が『森の守り神』としてハブが保護しているという考え方もあります。ハブの存在を恐れることで、棲息域である森林への立ち入りが制限されたり、自粛したりしてきましたし、その乱開発を阻止してきたという面もあるようです。

在日米軍もハブをリスペクトしている!

ホンハブの存在は、沖縄本島に駐留する在日米軍にもよく知られ、恐れられています。

ハブを『Habu』という固有名詞で表記することも多く、また強さ、恐ろしさの象徴として戦闘機のコードネームやニックネームにも使われているのです。

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ハブ酒に精力増強などの効果はあるのか!?

漢方では、マムシの身体を酒に漬け込んだ『マムシ酒』が薬用酒や精力剤の一種として用いられています。科学的な根拠には乏しいといわれていますが、東洋医学と西洋医学の違いでもあります。マムシの強靭な生命力とその力強さにあやかるという意味合いもあり、このまれて飲まれている方も多くいるようです。

それと同様に、ハブの生息域である奄美・琉球地方においても、ハブを生きたまま特産の泡盛や焼酎などに漬け込んだ『ハブ酒』が作られています。

これが本当に精力増強や滋養強壮に効果があるのかどうかははっきりしません。よく新聞広告などにあるように、効き目には個人差があり…という程度にとらえればよいのではないでしょうか。興味のある方は、試してみてください。

東アジア固有のハブ属の仲間たち

ホンハブの属する『ハブ属』は、かつて3種とされていましたが、現在はその分類法を巡り学者間でも争点があり、5種以上に分けられるとも言われています。

ハブ属のヘビは、インド東部から中国南部と台湾、日本の南西諸島のおもに熱帯・亜熱帯地域に分布する東アジア固有種です。

ウロコ表面の筋状構造を識別形態として3種に分けられましたが、解析が進み種の分割が提唱されており、現在『ホンハブ』『タイワンハブ』『P.JERDONII』に加え、『サキシマハブ』『トカラハブ』の5種が知られています。

広い生息域を持つタイワンハブ!

タイワンハブは、ハブ属の中でもっとも広い生息域を持ちます。台湾及び中国南部からインドシナ半島北部~ベトナムからタイ、インド東部までの広範囲に及びます。

全長は80~130センチで、ホンハブに比べるとやや小型で、細長い体型をしています。

体色は白っぽい灰褐色が主体で、黒い模様が規則正しく並びます。

タイワンハブの生態はホンハブとあまり変わりません。ただし、地表に降りることは少なく、樹上で活動することが多いと言えます。

ホンハブより毒が強いが、攻撃性は低い!

タイワンハブは、ホンハブよりも毒が強く、毒牙も長いので、ひとたび咬めば獲物の体内に深く突き刺さり、その被害は深刻なことになります。

ただしタイワンハブの攻撃性は低く、小型ゆえに毒量も少ないので、咬傷事故による死者はホンハブに比べて少ないと言えます。

タイワンハブは沖縄で繁殖している!

かつてタイワンハブは、小型であることからホンハブの代用としてハブ酒に使われる目的で日本国内に輸入されていました。恐らくこういう状況で輸入されたモノが逃げ出し、それがそのまま帰化して、沖縄本島などで繁殖・定着してしまったようです。日本国内では外来種の毒ヘビが繁殖した初めての例といえるのです。

ホンハブとタイワンハブとの交雑種がいる!

タイワンハブはホンハブとの交雑が可能で、実際にその交雑種も見つかっています。

日本国内で繁殖したタイワンハブとその交雑種が与える環境への影響が懸念される事態になっています。

ただしタイワンハブもホンハブとの交雑種も、ホンハブの抗毒血清が有効であることは確認されていますので、両者の咬傷事故による治療においては、いまのところ問題ないとされています。

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サキシマハブは八重山列島の固有種!

サキシマハブは、先島(さきしま)諸島(宮古列島と八重山列島)のうち、八重山列島に生息するハブ属の毒ヘビです。この地の固有種で、与那国島と波照間島を除く島々に分布しています。

ただしタイワンハブ同様、ハブ酒製造などの薬用目的などで持ち込まれた個体が沖縄本島や、ハブが生息していなかった宮古島でも発見されています。

サキシマハブはホンハブよりやや小型の毒ヘビ!

サキシマハブは、全長60~120センチでやや小型のヘビです。体色は褐色から灰褐色で、鎖状のくっきりした斑紋が入ることが多いのですが、個体差も大きく、斑紋が不明瞭な個体も存在します。

サキシマハブの生態は、ホンハブとほとんど変わりません。

トカラハブは準絶滅危惧種!

トカラハブは屋久島と奄美大島の間にあるトカラ列島(12島)のうち宝島、小宝島にのみ生息する固有種です。生息域がごく狭い範囲なので、絶対数が少なく、準絶滅危惧種に指定されています。

トカラハブは小型で、その生態はホンハブと変わらない!

トカラハブは全長60~100センチ、最大でも150センチほどの小型のハブです。

淡褐色から灰色の体色に楕円形や横シマなどの斑紋が入ります。また一部に黒化型の種も存在します。

トカラハブの生態はホンハブと変わらず、夜行性でネズミなどの小型哺乳類を好んで食べ、地表および樹上で活動しています。

繁殖は卵生で、7~8月に2~7個の卵を産みます。ホンハブに比べ、数は少なめです。

トカラハブは毒ヘビだが、現地では恐れられていない!

トカラハブは、毒ヘビではありますが、その毒は弱く、咬まれたことによる死亡例はまだありません。ただし毒ヘビですから、咬まれればその毒素により、患部の腫れや痛み、吐き気などを引き起こします。

ただし現地では、トカラハブをまったく恐れていないようで、抗毒血清は不要とされ、医療機関では用意されていません。

かわいい!?小さな毒ヘビ〜ヒメハブ!

ヒメハブは、有鱗目ヘビ亜科クサリヘビ科マムシ亜科ヤマハブ属に分類される小型のヘビです。『ハブ』という名が付きますので、ホンハブと近い種ではありますが、『ハブ属』ではなく『ヤマハブ属』に分類される毒ヘビです。

ヒメハブの体長は30~80センチほどで、やや太めの体型をしています。全体に褐色をしており、濃い色の斑紋が見られます。

ヒメハブは毒ヘビですがその毒は弱く、小型であるために毒量も少なく、また動きが鈍いので、咬傷事故は起こりにくくなっています。またヒメハブに咬まれたことによる死亡例はありません。

ヒメハブはカエルが好き!

ヒメハブは奄美・沖縄地方の固有種で、ホンハブと生息域がほぼ重なります。

森林や水田等に生息し、ほぼ地表で生活しています。動きが遅く活動的でないので、通常は落ち葉の下や倒木の周囲などでじっとしていることが多いのです。

水辺を好みますので、泳ぎはうまく、水中で活動することもあります。

ヒメハブの食性は動物食で、小型の哺乳類、爬虫類、鳥類、魚類などを食べますが、特にカエルを好んで食べています。

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ヒメハブは限りなく卵胎生に近い卵生!

ヒメハブは春に交尾をして、7~8月ごろに5~15個ほどの卵を産みます。その繁殖は卵生なのですが、産卵時にはその幼体は卵の中でかなり成熟した状態になっています。

産み落とされた卵はわずか1~3日でふ化してしまいます。場合によっては卵胎生といえるような、ほぼふ化した状態で生み出されることもあります。

毒が弱くても、毒ヘビであることに変わりない!

前述したようにヒメハブの毒は弱く、毒量も少ないために、咬まれても死に至ることはありません。ただし毒ヘビですから、当然咬まれた患部の腫れや痛み、吐き気やめまいなどを引き起こします。

ヒメハブの動きは鈍く、ホンハブのような攻撃性はまったくと言ってよいほど無いので、咬傷事故自体がごく少ないと言えます。そのためにヒメハブの抗毒血清は製造されておらず、医療機関に配備もされていません。現地では、必要がないと考えられているようです。

しかし毒ヘビであることには変わりありませんので、咬まれればその毒素に対してアナフィラキシーショックを起こす可能性もあります。咬まれた場合には医療機関を受診しなければ大事に至る可能性があります。

日本に生息するヘビは36種類いる!

日本に生息するヘビは、陸上のものに限れば36種です。そのうち『本土』と呼ばれる本州、北海道、九州、四国の四大島に生息するものは、マムシ、ヤマカガシ、アオダイショウ、シマヘビなどわずか8種のみです。

残りの28種は、奄美・沖縄地方である南西諸島をはじめとした島嶼に生息するものです。これらのうち、毒を持つものが10種、無毒のものが18種います。

対馬に生息するツシママムシも、ニホンマムシの亜種ではなく、別種と考えられていますので、残り9種の毒ヘビが南西諸島に存在することになります。

南西諸島にいる9種の毒ヘビ!

大別した場合、マムシ、ヤマカガシ、ハブの3種が日本国内にいる毒ヘビになりますが、ホンハブには近似種として『サキシマハブ』、『トカラハブ』とヤマハブ属の『ヒメハブ』は前述した通りです。そのほかに、ごく少数ですが、ユウダ科の『ガラスヒバァ』とコブラ科の『ヒャン』『ハイ』『クメジマハイ』『イワサキワモンベニヘビ』がおり、そのほかにも移入種としてタイワンハブも生息しています。

ただしコブラ科の『ヒャン』『ハイ』『クメジマハイ』については、『ヒャン』を代表種とした亜種と考えられています。

ガラスヒバァはナミヘビ科の毒ヘビ!

ガラスヒバァは、日本固有種であり、奄美諸島と沖縄諸島に生息するナミヘビ科(ユウダ科)ヒバカリ属に分類される毒ヘビです。ヤマカガシの近似種になります。

ガラスヒバァは全長75〜110センチほどの小型の毒ヘビで、体型は細長く、その体長の1/3ほどが尾になります。

体色は黒色または黒褐色で、胴体部に黄色や褐色の帯状の模様があります。

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ガラスヒバァが毒ヘビだと判ったのは最近のこと!

ガラスヒバァが毒ヘビであることが判明したのはごく最近のことです。それまでは無毒のヘビだと認識されていました。その毒性は強いとされていますが、ヤマカガシ同様に毒牙が短く奥にあるためにヒトに咬みついて毒液を注入することは物理的に困難であり、まだ実害は報告されていません。

ヒャンはコブラ科の毒ヘビだった!

ヒャンは、奄美諸島の固有種でコブラ科ワモンベニヘビ属に分類される毒ヘビです。

沖縄諸島に生息する『ハイ』、久米島周囲に生息する『クメジマハイ』は、ヒャンの亜種と考えられています。

ヒャンは猛毒を持つが、美しいヘビ!

ヒャンは全長30〜60センチほどのかなり小型のヘビです。体色はオレンジ色で、シマヘビのような黒い縦ジマと、くっきりとしたリング状の黒い横シマが入りますので、非常に美しいヘビだと言えます。尾は短く、その先端は尖っています。

ヒャンは猛毒を持つのに危険視されていない!

ヒャンの毒性は強く、ホンハブの4〜5倍とも言われていますが、性質は大人しく小型であるためにヒトを咬むことはほとんどありません。またたとえ咬んだとしても、毒量が少ないために、その被害は少なく、それほど危険なヘビだという認識はされていません。

ヒャンの食性は動物食であり、おもにメクラヘビなどの爬虫類を好んで食べています。

ハイはヒャンの亜種で沖縄に生息する!

ハイはヒャンの亜種で、沖縄本島および具志川島、渡嘉敷島、徳之島に生息する毒ヘビです。クメジマハイと区別するため、『オキナワハイ』と呼ばれることもあります。

ヒャン同様、全長30〜56センチほどのごく小型のヘビです。毒性はホンハブの4〜5倍もありますが、おとなしい性質であり、ヒトを咬むことはほとんどありませんので、ヒャン同様危険なヘビという認識は持たれていません。

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クメジマハイもヒャンの亜種!

クメジマハイもヒャンの亜種で、久米島、伊江島、座間味島、渡名喜島に生息しているコブラ科の毒ヘビです。体色はオレンジ色をしていますが、他の亜種と異なり、リング状の横ジマが入りません。

ヒャン同様にホンハブよりも強い毒を持ちますが、現地では危険なヘビという認識は持たれていません。

イワサキワモンベニヘビはごく少数しかいない!

イワサキワモンベニヘビは、石垣島、西表島にごく少数のみ生息する、ワモンベニヘビの亜種です。現地では『フニンダマハブ』と呼ばれていますが、ホンハブとは系統がかなり異なります。

ワモンベニヘビはインドから台湾までの広い地域に生息する、コブラ科ワモンベニヘビ属に分類される毒ヘビです。

イワサキワモンベニヘビは、岩崎輪紋紅ヘビだった!

イワサキワモンベニヘビは、体長は30〜50センチほどのかなり小型の毒ヘビです。

ワモンベニヘビとは、輪紋紅ヘビのことであり、イワサキは発見者である岩崎卓爾氏から付けられました。

体色はベニヘビと呼ばれるくらいですので赤地で、黒いリング状の斑紋とそれを囲む白いシマがあり、非常にカラフルで美しいヘビです。ただし絶対数が少なすぎるために、その生態はほとんど解っていません。

食性は動物食(おもに爬虫類食)で、トカゲや小型のヘビなどを捕食します。

イワサキワモンベニヘビは尾を立てて威嚇する!

ワモンベニヘビは、ヒャンともごく近い種であり、ホンハブよりも4~5倍もの強い毒を持ちますので、タイでは咬傷による死亡例もあります。

ただし、その亜種であるイワサキワモンベニヘビの毒はそれほど強いものではありません。

イワサキワモンベニヘビは、外敵に遭遇しても尾を立てて威嚇するのみで、咬むことはほとんどありません。あまりに小さいために物理的にヒトを咬むことはできないと考えられています。

(ライター オニヤンマ)

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