イソギンチャクでありながら、ときにクラゲのような姿に変貌する。
タテジマイソギンチャクは、そんな神秘的な生態の持ち主です。
今回は、タテジマイソギンチャクの秘密をみなさんにご紹介していきます。
タテジマイソギンチャクってどんな生き物?
タテジマイソギンチャクは、イソギンチャク目タテジマイソギンチャク科に属する無脊椎動物です。
その名のとおり体に縦縞がありますが、中には縦縞模様をもたない無地の個体も存在しています。
タテジマイソギンチャクの模様は、赤い縦縞が12本あるもの、黄色い縦縞が24本あるもの、その両方を持ち合わせているものと、無地のものを含めると4つのパターンが確認されています。
余談ですが、イソギンチャクは英語で「Sea Anemone」と呼ばれます。
触手蠢くおぞましい生物を美しい花に例えるとは、名付け親はなかなかの詩人だったようです。
タテジマイソギンチャクの生態
タテジマイソギンチャクは体長3.0cm前後の小型のイソギンチャクで、淡水混じりの浅い砂泥地に多く生息しています。
ほかのイソギンチャクと同じように、毒のある触手で小型の魚やプランクトン性の甲殻類を捕らえて捕食しますが、一説では海水中の有機物を栄養として体内に取り入れているのではないかといわれています。
一般的なイソギンチャクと違い、タテジマイソギンチャクは触手だけでなく体内にも毒針を保有しており、この毒針を体の外に出して外敵を攻撃することもあります。
また、足盤と呼ばれる岩に吸着する器官を中心にふたつに分裂し、無性生殖する性質があることでも知られています。
タテジマイソギンチャクと人間との関わり
前述したように、タテジマイソギンチャクは淡水と海水が混ざる汽水域に多く生息しています。
そのため、関東では潮干狩りをする際、頻繁に目にする種であり、アサリや牡蠣に混じって市場に出回ることも珍しくありません。
クラゲ姿の秘密
タテジマイソギンチャクは普段水中に生息していますが、干潮時などに体が水の外に晒されると、乾燥を防ぐため触手を体内にしまい込み、体を丸く縮ませます。
こうして半球状になったタテジマイソギンチャクの姿は、イソギンチャク特有のぬめっとした光沢も相まって、まるでクラゲのようです。
触ればイソギンチャクだとすぐに気づきますが、ぱっと見はクラゲそっくりで、見間違えてしまうのも無理はないように思えます。
タテジマイソギンチャクの飼育法
タテジマイソギンチャクは小ぶりで水質の変化に対する耐性も高いため、海水初心者にも飼育しやすい生き物のひとつです。
コップなど小さな容器でも飼育は可能ですが、水量が多いほど水質の変化を抑えることができるので、ここでは一般的なプラケースで飼育する方法をご紹介していきます。
イソギンチャクを飼育する上でもっとも大切なものは「海水」です。
基本的には人工海水の素を使用しますが、タテジマイソギンチャクを採取する際に、ペットボトルなどの容器に海水を補給しておきましょう。
まずは採取地の海水で飼育し、水換えのたびに少しずつ人工海水に置き換えていきます。
また、水質の変化を防ぐために、餌の食べ残しや糞などは見つけ次第すみやかに取り除いてください。
換水は基本的に足し水で問題ありませんが、海水が黄ばんできたり、イソギンチャクの元気がないように感じたときは、全体の3分の2ほどを一気に交換します。
底砂は採取地の磯砂や市販のサンゴ砂などがお勧めです。
イソギンチャクは非常に小食なので、週に1度、食べきれるだけの餌を与えてください。
餌はブラインシュリンプやオキアミ、サンゴ用の液状飼料などを併用すると良いでしょう。
餌のやりすぎにはくれぐれもお気をつけください。
じつは身近な生き物、タテジマイソギンチャクについてご紹介いたしました。
潮干狩りをする際は、貝だけでなくイソギンチャクにも目を向けてみては如何でしょうか。
(ライター:國谷正明)