光を放つ発光生物の8割は海に生息していると言われています。
魚やクラゲ、イカやエビ、ナマコ、そしてウミホタル。
幻想的な風景を展開する海底の生物ウミホタルについてのお話です。
ウミホタルの生態
ウミホタルはウミホタル属ウミホタル科に分類される甲殻類。
体長3~3.5㎜、メスの方がオスよりも若干大き目です。
背中は2枚の楕円球状の甲羅で覆われている米粒のような姿をしています。
世界には4種類ほどのウミホタルがいて、日本では北海道と青森から福島の太平洋岸を除く太平洋沿岸胃幅広く生息しています。
日本以外ではマレー半島沿岸にも。
塩水濃度が下がると生きていけないため、大きな河川近くには生息していません。
夜行性で、昼間は海底の砂中で生活、夜は海底近くを遊泳して捕食や交配をしています。
海上近くまで上がってくることはありません。
水温が低下すると活動的ではなくなるため、春から秋にかけて活発に活動しますが、冬季でも冬眠することはありません。
腐ったり死んだ肉などの肉類を好みますが、生きたゴカイやイソメ、時にはヒラメにまで自ら攻撃をしかけ、捕食することもあるようです。
海洋生物の中には潮汐サイクルに支配され行動している生物が多い中、ウミホタルは月齢によって行動が支配されていると言われています。
満月前後にはメスの胚サイズが増加し、消化器が圧迫されるので捕食活動が控えら、メスは砂の中から海底に出てくることが少なくなります。
そうなると、交配を目的に出てくるオスがいなくなり、結果として海底にいるウミホタルの数が少なくなるということになります。
ウミホタルの発光
ウミホタルの光のもとは発光物質であるルシフェリン等が体外で酸素と反応することによって起こります。
光は陸の蛍と同じようにオスの求愛目的のこともありますし、エビなどの甲殻類の外敵への威嚇目的のこともあります。
また、仲間に危険を知らせるための信号という側面も持っています。
ウミホタルの祖先はかつて回析格子を使った発光を行っていたようです。
これは太陽や月の光を利用するもので、外部の光がなければ発光することが出来ませんし、非常に弱い光しか放つことが出来ません。
それが進化することで現在の化学反応による発光を手に入れたのです。
ウミホタルを捕食することで、その光を利用して発光している生物もいます。
キンメモドキやツマグロイシモチなどの魚がそれにあたります。
キラキラと光るキンメモドキの光は実はウミホタルによるものだったのです。
ウミホタルと人間の関係
ウミホタルは乾燥して保存することが出来ます。
十年以上保存した後でも、水をかけると光るため、様々な研究の実験用生物として使われます。
また、容易に持ち歩くことが出来るため、第二次世界大戦中には暗闇で文章や地図を読む時の光として使われたり、偵察隊の足元をかすかに照らす光として使われていたという記録があります。
東京湾に浮かぶアクアラインパーキングの名称もウミホタルです。
兵庫県の淡路島などでは一部の海岸近くでウミホタルの輝きが見られるということで、ツアーなども開催されています。
淡路島では陸の蛍も同時に見られることから、幻想的な景色が楽しめる都会でも人気のツアーになっています。
ウミホタルのまとめ
ウミホタルは世界に4種類ほどいて、日本では北海道と東北地方以外の太平洋沿岸に生息している。
海底に生息。昼間は砂中にいて、夜になると捕食と交配目的で海中を遊泳する。
ウミホタルは自己防衛やオスのアピール、仲間への警告目的で行われる。
ウミホタルは10年以上乾燥ののちでも水をかけると発光する。
ウミホタルは第二次世界大戦中に暗闇を照らす光として使われた。
(ライター ナオ)