ウルトラマンシリーズに初期から登場していたバルタン星人は、セミとアメリカザリガニがモデルとなっていると言われます。
昭和初期から中期には特に日本の水田によく見られたアメリカザリガニですが、現在でも水のあるところで一番良く見かけるザリガニです。
どこでどのように採集できるのでしょうか?
アメリカザリガニの生息地
アメリカザリガニはエビ目ザリガニ下目アメリカザリガニ科のザリガニです。
アメリカザリガニは日本全国に生息しています。
生涯淡水の中で過ごすアメリカザリガニの好む生息地は水のあまり流れていない池や水田、用水路などです。
護岸工事されている川に寄ってくる事もあります。
アメリカザリガニの成体が見られるのはだいたい5月~10月くらいまでです。
アメリカザリガニの外見の特徴
アメリカザリガニの体の大きさはハサミを除いた頭から尾まで8cm~12cmほどです。
日本に分布するザリガニは3種ほどいるとされますが、アメリカザリガニの最大の特徴は、触角の間の突起が大きい事のようです。
体の色は赤や茶褐色である事が多く、腹側は白っぽいです。
頭には1対の黒い眼があり、胴に歩脚が5対あります。
一番上の歩脚がハサミです。ハサミには突起が多く、長い触角があるのもアメリカザリガニの特徴です。
腹部はエビのように体節が分かれています。腹側から見ると目のすぐ下には口があります。
その近くには2つの触角腺があり、この穴から排泄します。この尿は緑色なので、緑腺ともいわれます。
肛門は尾の方にあります。アメリカザリガニは全体的に体が大きく、突起が多い外見のザリガニのようです。
アメリカザリガニのオスとメスの確実な見分け方
アメリカザリガニをひっくり返して腹側を見ると、成熟したオスには脚と腹部のところに交接器があります。
また、第3、4歩脚の出ているあたりにカギ爪などと言われるトゲのようなものがある場合があるようです。
メスの腹側は白っぽくいように見えます。しかしこれらの方法だと、アメリカザリガニの年齢によっては判別が難しい事があります。
成熟したアメリカザリガニのメスの尾の腹側にはセメント腺と言われる白い粒粒があります。
アメリカザリガニの年齢の見分け方や寿命
アメリカザリガニの寿命は5年くらいです。
アメリカザリガニの頭部が約18mmほどであれば、成体のアメリカザリガニです。
この部分が7mm以下だとまだ稚ザリガニである可能性が高いようです。
アメリカザリガニは卵から孵化して1、2年で繁殖可能になります。
比較的成熟が早いザリガニです。
寿命は5年ほどと言われていますが、飼育している場合は長生きする事もあるようです。
アメリカザリガニの移入経緯や特徴
アメリカザリガニは、1927(昭和2)年にウシガエルの餌として20尾ほどアメリカから移入されました。
その後日本の水田などの生態系がすっかりお気に入りとなって定着した外来種です。
ザリガニはかつて「サルカニ」と呼ばれていたようです。
「ザリガニ」になったのは昭和の中頃だそうです。
アメリカザリガニの特徴はとにかくなんでも食べる雑食性である事で、他の水生生物の幼生などは勿論、餌が不足すると共食いする事が多い事です。
生命力は強いので飼育は楽と言えば楽です。
冬の間は深い穴を掘り冬眠します。
この穴は何と1m~2mほどにもなります。アメリカザリガニは暑さには弱い傾向があります。
アメリカザリガニの呼吸や脱皮について
アメリカザリガニの体には脚の付け根に鰓があり、鰓呼吸のようでもありますが、たまに体を横にしたりします。
アメリカザリガニは甲羅の下の方から水を吸い上げ体内にある鰓を使いガス交換のような事を行い、酸素を得ていると考えられています。
じっとしているアメリカザリガニの顔を正面から見ると、顔の周囲に微細なヒゲがあり、少し動いています。
あれは呼吸をしている状態のようで、顎舟葉(がくしゅうよう)と言われます。
ヒゲを使い、酸素を吐き出している状態だと言われています。
アメリカザリガニの争いなどでヒゲに欠損があると、アメリカザリガニは呼吸困難になり危険な状態になります。
アメリカザリガニは頑丈な生物でもありますが、デリケートな面も勿論あるのです。
飼育してみるとじっくり見る事ができます。
アメリカザリガニの顔付近は実に緻密にできていて、腹側から見る口も脚が変化したものと言われています。
この呼吸に使用する顎舟葉も脚が変化したものだそうです。甲殻類にとって脚は重要な器官のひとつです。
アメリカザリガニは甲殻類なので脱皮します。脱皮の最中は生物が一番無防備になる時と言っても良く、出来るだけ素早く行われます。
アメリカザリガニの脱皮もほんの数分です。まず背中の甲羅と腹の境目が割れます。
それからもがくように古い皮を脱ぎ捨てます。お腹が空いているので皮は即座に食べます。
脱皮したてのアメリカザリガニの体は柔らかく、早く甲殻類らしくならなければいけません。
アメリカザリガニの脱皮は昼間行われる事もあるので非常に大変です。
また、アメリカザリガニの成体は脚の一部が不慮の事故などで失われても再生します。
しかしこれは最後の切り札のようなもので、脚を再生させたアメリカザリガニはやはり気力体力に負担がかかるようです。
アメリカザリガニの脱皮についてはもっとたくさんの秘密があります。飼育してみるのが一番良いでしょう。
アメリカザリガニの採集方法や時期
アメリカザリガニの姿が見られるのは、5月から長くて11月頃です。
地域により差がありますが、初夏から秋までです。カンカン照りのような日中よりも薄曇りのぼんやりした日の方がいいかも知れません。
アメリカザリガニを採集するのに必要なものは、棒、タコ糸のようなもの、餌などです。
餌は小さく切ったするめや小エビなどで良いです。あればブタのレバーなども良いようです。
棒の先に糸をつけ、餌をつけてそのまま垂らします。そのまま待ちます。
アメリカザリガニはより人間の生活に近いコンクリートで固められた小川の端などにいる事もあります。
アメリカザリガニは浅瀬よりも深い水深を好む傾向があるので、餌を垂らせばそのうち姿を現します。
アメリカザリガニは採集して良いのか
アメリカザリガニを採集しても良い場所かどうかは事前に確かめます。
生物の採集が禁止の箇所などはダメです。アメリカザリガニは特定外来種に指定されています。
基本的に特定外来種になっている生物は、飼育、生体(生きたまま)の移動等が許可制の様になっていますが、アメリカザリガニの場合は周辺の生物を食べてしまい水草もハサミで切ってしまうので、ところによっては割と積極的にアメリカザリガニを釣ってもいいですよ、という事になっている事もあります。
という諸事情がありますので、アメリカザリガニの採集については周辺自治体や公園などの決まりをお調べください。
アメリカザリガニの飼育と繁殖に必要なもの
水槽と蓋
共食いの可能性があるので、まず1匹で飼育します。水槽の大きさは60cm×30cm×35~60cm(高さ)くらいが望ましいです。
アメリカザリガニは元気な個体であればほぼだいたい脱走します。
そのため、バケツなどに水槽を用意するまでの間入れておいたりするとよじ登って脱走する事があります。
子供の頃、もらったアメリカザリガニをバケツに入れて置いたら一晩で脱走しました。
少なくとも水槽の高さは40cmくらいが望ましです。
また、隠れ家として鉢植えなどを置くとそれを利用し、すかさず逃げようとする個体もあります。
アメリカザリガニは巣穴を作り棲息する生物なので、好むのはその個体にあった大きさの土管のようなものです。
中に入る事ができるサイズの円柱形のものが最適です。
蓋は目の細かい網のようなものが良いですが、蓋はきっちり閉めます。
水と水深
一晩置いてカルキ抜きしたものを使用します。
水深の目安は5,6cmほどです。
アメリカザリガニは一応水中で呼吸しているので、体が水に浸かっている方が呼吸が楽です。
あまり多いと溺れますし少ないと脱皮不全になる事があります。
ろ過装置
水が汚れやすいので、ろ過装置は必要です。アメリカザリガニは餌をちぎるようにして口へ運ぶので、食べ滓が残りやすいのです。
脱皮前以外の通常のアメリカザリガニは胃を食べ物でいっぱいにしておきます。
アメリカザリガニはとかく脱走するので、ろ過装置を伝って逃げ出さないように気をつけます。
餌
餌は一日2,3回程度です。餌の食べ残しはできるだけ取り除きます。
市販のザリガニ用の餌を利用しても良く、小魚などをちぎっても良いです。
水替えは適宜行います。エアーポンプがあれば楽ですが、装置を伝い脱走するかも知れませんので、地道に取り替えます。
基本的に昼間は明るい場所に、夜は暗いところに置きます。
夏は水温が30度以上にならないように注意しましょう。
アメリカザリガニの繁殖について
アメリカザリガニの繁殖期は一般的に夏ですが、環境によっては秋頃まで繁殖行動が見られるようです。
アメリカザリガニが性成熟し、繁殖可能になるのは、体長約7cmほどになった個体です。
様子を見て大きい水槽を用意し、なるべく自然に近いように昼間は明るく夜は自然に暗くなるような場所に置きます。
うるさくないところが良いようです。
アメリカザリガニの交尾は、オスがメスを上から押さえ込むような恰好になりますので、争っているように見えますが事が済めばアメリカザリガニのメスは卵をお腹側にびっしりくっつけているはずです。
また、交尾が秋頃であれば、メスは卵を持ったまま冬を越します。
野生下であれば、アメリカザリガニのメスは腹部に卵を抱え、巣穴に潜り冬を過ごします。
産卵後のアメリカザリガニのメス
産卵が確認されたら、アメリカザリガニのオスとメスの水槽を分けます。
卵は濃い紫のような黒色で大きさは2mmほどです。孵化するまではおよそ2週間くらいです。
孵化して1、2週間ほどはメスの腹側で保護されていますが、稚ザリガニが動くようになったら水槽を分けます。
できるだけ大きい水槽が良いです。食べてしまう事があるからです。
稚ザリガニは独り立ちが早く、すぐに成体と同じ餌を食べるようになります。
餌が不足すると共食いする事があるので、稚ザリガニが動くようになったら食べ物をあげてください。
また、稚ザリガニの水槽には隠れ場所として水草が良いようです。
アメリカザリガニの採集・飼育や繁殖について
アメリカザリガニの飼育自体は難しいものではありませんが、採集場所や時期については事前にお調べください。
アメリカザリガニは淡水の流れのないところにいます。
アメリカザリガニの飼育について重要な点は、水槽は深いものにし脱皮しやすくさせる事、繁殖させるのなら最低3つ用意する事、初めは1匹で飼う事などです。
※参考『岩波科学ライブラリー162 ザリガニ ニホン・アメリカ・ウチダ』川井唯史著/岩波書店/2009
(ライター:おもち)