筆者は、矢口史靖監督の映画が大好きなのですが、染谷将太をはじめ、長澤まさみ、伊藤英明、柄本明らが共演する『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』という作品があります。
ひょんなことから山奥の村で林業に従事することになった都会育ちの少年が、携帯もつながらないワイルドな環境で、周囲の人々と触れ合いながら成長していくという物語です。
森での作業中、ヒルでやられた染谷翔太のお尻は衝撃的でした。
吸血の生き物として悪名高く、くねくね気持ち悪いヒルについて注目してみます。
ヒルって何?
ヒルは環形動物でゴカイ類、ミミズ類と同じ仲間です。
ヒルの種類は、日本では約60種、世界では500種ほど確認されていて、陸生、淡水生、海水生などさまざまな環境に生息していますが、そのほとんどが淡水生です。
体長は5cm~12cmぐらいで、体の前後に吸盤があり、この吸盤を使って移動します。
肉食性で、主に小動物を食べるもの、大型動物の血を吸っているものなどがいます。
また、雌雄同体で、卵から孵化します。
人間に害のあるヒル
日本で吸血性のヒルとして有名なのが、「ヤマビル」と「チスイビル」です。
ヤマビルは陸生のヒルで、北海道を除く日本全土に分布しています。
釣りやハイキングで渓谷や森林を歩いている時に遭遇したことがあるという方もいるのではないでしょうか。
木の上に潜むものもいて、獲物が近づくと木から落下して吸い付くこともあるとのことなのでゾッとします。
チスイビルは水生で、田んぼなどで見かけられる緑色をしたヒルです。
これも日本全土に分布しているので、田園地帯でお育ちの方は見たことがあるのではないでしょうか。
ヤマビルの生息地や生態
田んぼで見られるチスイビルは農薬などの影響で減少してきています。
ここでは、ヤマビルに注目していきます。
ヤマビルは、円筒形で体長は2~5cm、伸びると5~7cmになります。
体の前後腹面に吸盤があり、尺とり虫のように人や動物に接近してひっつきます。
寿命は3~5年程度と言われています。
ヤマビルは陸にすむヒルですが、落ち葉の下など湿気の多いところを好みます。
活動期は、4月から11月までで、特にヤマビルの生息や活動に最も適した気象条件(気温、湿度及び降水量)になる6月から9月に増殖し、雨中及び雨後に活動が活発になります。
昼だけではなく、朝でも夜でも活動するので要注意です。
ヤマビルは、動物や人が吐く息に含まれる炭酸ガスや体温などで、その存在を知り移動します。
移動速度は1分に1m程度。
噛みつくと約1時間かけて、吸血前の平均4~5倍の体重になるまで血を吸います。
医療に役立つヒル
芥川龍之介の『雛』に、母親の唇にできた腫れ物を治すために、ヒルを使っている場面があります。
患部にヒルを吸いつかせ悪い血を吸わせるのです。
昔からヒルは医療用に使われてきたようですが、現代でも、創傷治癒の難しい傷に対して、ヒルを用いた治療が行われることがあるそうです。
ヒルの唾液には血液が固まるのを防ぐ物質が含まれ、かつ麻酔作用も働くことから、ヒルに噛まれた患部は痛みを感じることなく、うっ血を改善できるのです。
以前、フジテレビのドラマ「医龍4」でも、ヒルから取られたヒルジンという薬が注目されていたことがあります。
ペットとしてのヒル
タレントのショコタンこと中川翔子が、ブログでヒルをペットとして飼っている様子を紹介して話題になったことがあります。
テレビ番組で東南アジア・ボルネオ島に行き、ジャングルクルーズやシーウォークを体験したときにヒルに噛まれ、それがきっかけで日本に帰ってから医療用ヒルを飼うようになったとのことです。
ヤマビルに噛まれないための対策
帽子・長袖・長ズボン・厚手の靴下・長靴(または登山靴)を着用し、首筋にタオルを巻き、ズボンは靴の中に入れ隙間にガムテープを巻くなどして極力肌の露出を避けてください。
足元から侵入し、ズボンを這い上がったのちに上着の隙間から入り込んで腹部に吸着する場合もあるので注意しましょう。
ヒルの生息数が多い場所に行くときには、前もって靴や靴下に市販されているヒル忌避剤をかけておくとよいでしょう。
また、塩や石鹸をこすりつけたり、エアサロンパスを吹きかけたりしても効果があると言われています。
キャンプなどでテントを張る場合は、ジメジメしたところは避け、周囲に塩をまくか、塩水をジョウロでふりかけると駆除できます。
雨の日の登山時などは、草むらに行かない、座らないように、木の上の葉っぱから落ちてくることもあるので注意しましょう。
ヤマビルに噛まれてしまったときの症状と治療方法
噛まれても、決して“ヒル”まないで!!
気持ちの悪いヒルが自分の体にひっついて血で膨らんでいる、見ただけでショックです。
でも見た目ほどには実害がありませんので落ち着いて対処してください。
まずは、すぐにヒルをはがしてください。
無理矢理はがすと傷口が大きくなると勘違いしている方が多いようです。
従来から言われてきたように、消毒用アルコールをかける、食塩をすりこむ、食酢をかける、ライターの火を近づける、などの方法も有効ですが、忌避剤をスプレーすれば簡単にとることができます。
ヤマビルがはがれたら、傷口から血を押し出すようにして流水で洗ってください。
最後に抗ヒスタミン剤の虫刺され薬やかゆみどめを塗布しておけばよいでしょう。
出血が続く場合もありますが、傷口に絆創膏を貼っておくとよいでしょう。
人によって数時間出血が止まらないこともありますが命にかかわることはありません。
医療用として使われることがあるように、ヤマビルの唾液には麻酔成分が含まれているので、血が流れている割にはほとんど痛くないはずです。
けれども、血液凝固を阻害する成分も含まれているので出血がなかなか止まらないのです。
まとめ
最近、ハイキング、キャンプ、渓流釣りなどに行ったり、あるいは山林作業をしたりする人々の間でヤマビルに吸血される被害が全国的に増えているそうです。
森林の荒廃、地球温暖化による気候変動、ニホンジカやイノシシなどの大型野生動物の分布拡大などと深い関係があるようです。
こんなところにも人間の営みが自然生態系に及ぼす影響がでているんですね。
山にレジャーにでかけるときには、ヒル対策を十分に行っていきましょう。
(ライター sensyu-k)