聞きなれない名前のスクミリンゴガイ。通称ジャンボタニシを言われる巻貝の一種です。
そのスクミリンゴガイが話題を呼んでいます。
スクミリンゴガイって?
スクミリンゴガイはもともと南アメリカのラプラタ川に生息していました。自然界で生息していたのはここだけなのですが、その後いろいろな地域に移入し、それぞれの場所で定着しています。
大きさはオスで25㎜、メスは30㎜程度で性成熟した成体になりますが、その後も成長を続け、50~80㎜の大きさにまでなります。
巻貝としては大きな方で、そのことからジャンボタニシとも言われるようになりました。
スクリミンゴガイの生態
スクミリンゴガイは巻貝の中では移動にスピードがあり、雑食性で、水中のあらゆる有機物を幅広く摂食しています。
エラと肺の両方で呼吸することができるので、乾燥に強く、移入した地域で定着、繁殖しているのも、そんなタフさ故と考えられますが、寒さには弱く、日本で越冬するには幼体の時に1~3㎝ほどの大きさが必要だと考えられています。
このため、寒さの厳しい北日本や北海道での生息例はあまりなく、西日本に多く定着し、繁殖を続けています。
スクミリンゴガイの繁殖時期は5~11月と長く、最盛期は6~8月です。
産卵は植物の表面や岸辺の壁面、水路のコンクリート部分など、水辺の近くの水気のない場所に行います。
鮮やかなピンク色をした卵塊で、まるで熟す前のラズベリーのようです。一度の産卵で数十~数百個の卵粒が塊になり、メスは一晩のうちに1~2個の卵塊を産み付けます。
粘性のある液体で覆われた卵は初めは柔らかいのですが、のちに硬くなり、鋼のような強さをもって、産み付けられた場所にしっかりと固定されます。
産卵直後の卵は水に弱く、万が一産卵直後に水に浸水してしまうと孵化することはありませんが、産卵から10日ほどたった卵は水の中でも孵化することがわかっています。
卵の内部は神経毒で満たされているので、ヒアリ以外に天敵はおらず、孵化する確率はかなり高いとみられています。
孵化した卵は50日で性成熟を迎え、夏場には2か月ほどで成貝になります。
自然界での寿命は2年、飼育下では4年ほど生きると言われています。
成貝になってからの天敵は魚や鳥、肉食の水生昆虫や大型の甲殻類、亀など。
ちなみにヒアリとは火蟻のことで、毒を持った蟻です。日本にはまだ生息していませんが、アメリカでは年間100人ほどがヒアリの毒で死にいたっているのだとか。
火蟻は何度もしつこく噛む習性があるので、一度に大量のアリに噛まれたような痛みと、それに伴うアレルギー反応が起こりやすいのだとか・・・・。
スクミリンゴガイの卵
スクミリンゴガイがピックアップされている理由の一つにピンク色した綺麗な卵の存在が挙げられます。
卵の内部を満たす神経毒はPCPV2といわれるもので、生きものが持っている毒としては珍しいタイプのよう。
植物や細菌が利用しているタイプの毒で、スクミリンゴガイ自身はこれらの毒を分解し、栄養源として利用することができるのだそう。
鮮やかなピンク色は警告色として、その毒性をアピールしているものと考えられています。
スクミリンゴガイが日本に入ってきた理由
スクミリンゴガイが初めて日本に持ち込まれたのは1981年のことです。
台湾から長崎県と和歌山県に持ち込まれました。その後、1983年に日本全国で養殖されるようになり、日本中のあちこちに養殖場がつくられました。
しかし、需要が上がらないため大量のスクミリンゴガイが捨てられてしまったり、放置されてしまったのです。
現在日本に生息しているスクミリンゴガイはこの時に野生化して繁殖してしまったもの。
現在では要注意外来種として扱われています。
スクミリンゴガイの食害
スクミリンゴガイは柔らかい葉を好んで食べます。ウキグサ、アゼナ、セリなどの若い葉っぱを食しているようですが、それらの葉がなくなるとイネ科の植物やレンコンの浮葉を食べるため、水田やレンコン畑などではとても困った存在になっています。
一部では、スクミリンゴガイを田んぼの除草に使う方法もあるようですが、それには緻密な水管理と精巧な代搔き作業が必要で、一般的に広がりを見せるまでにはならないようです。
柔らかい葉を好むスクミリンゴガイは田植え直後の稲をかじります。
また、水面に浮かんでいる葉の部分を噛んで、根っこごと引っこ抜いてしまったり、エサがなくなると根っこさえもたべてしまい、欠株が生じて直接的な収益減少にまでなってしまうこともあるようです。
水田で大量のスクミリンゴガイをみつけたら、すぐに田んぼ内から除去することが必要です。
スクミリンゴガイの防除対策
スクミリンゴガイをこれ以上繁殖させないために、稲の被害をこれ以上出さないための様々な対策があります。
例えば、竹の子や青竹を利用する方法。
スクミリンゴガイは竹の子が好きなのか、竹によってきます。
その習性を利用して、竹の子や青竹を1㎡に一本置いておくと、そこにスクミリンゴガイたちが集まってきます。
集まったところをゲットして処分します。
水のないところでは彼らは生きていけませんから、浅水で田んぼの水深が2センチ以下になるようにし、田んぼ内に彼らを寄せ付けないようにします。
また、ある程度稲が成長し、葉が硬くなってから田植えをするという方法も用いられています。
水路にメッシュなどをひいて、スクミリンゴガイの浸入を防いだり、水田の周辺で卵を見つけた時には水中に落としたり、冬の間に田んぼを何度か耕運し、中にいるスクミリンゴガイを寒さに充てることで数を減らしたりといった方法で、地道に数を減らしていきます。
卵塊を発見した場合には水に落とせばよいと考えられてきましたが、孵化してしまう場合もあるということがわかってきたので、面倒でも一塊ずつしっかり取り除くのが良いでしょう。
スクミリンゴガイの天敵として、カルガモやスッポン、コイなどを放すという対策もとってきていますが、逆に人間がこの放したスッポンなどを食用のために捕獲してしまうということが起こってしまい、問題になっています。
農薬でスクミリンゴガイに効くものも販売されていますので、いろいろな方法を併用しながら地道に駆除していくしかなさそうです。
食用としてのスクミリンゴガイ
最初はエスカルゴのような食材が日本でも広がればいいな~との考え!?(完全なる推測です・・・すみません)から輸入されてきたスクミリンゴガイですから、もちろん食用にもなるわけです。
ただし、内臓部分には寄生虫がいる可能性もあるので、しっかりと熱を通すことが必須です。
しっかりゆでたり、しっかり焼いたり・・・生では決して食べないでください!!
内臓を取り除いて佃煮のようにしても良いようで、サザエのような味がするという報告もあります。
しかし、それほど劇的なおいしさを体感できるわけでないようで、日本で広がりを見せなかった一番の理由はそういうことなのでしょう。
未熟なラズベリーのような卵は毒性があるので食用はやめた方が良さそうです。
ちなみに、何かと世界を騒がせている北朝鮮ではきちんとした養殖場があり、研究用としてではなく、食用として養殖されているそう。
専門家も存在していて、国として推進している事業のようです。味云々よりも、とにかく繁殖力が旺盛だということが北朝鮮ではポイントのよう・・・・一体どこにむかっているのだか・・。
(ライター ナオ)