マツモムシという名前を聞いたことがありますか?
漢字で書くと松藻虫、英語ではback swimmer(バックスイマー)と呼ばれています。
いつもひっくり返っているちょっと面白い水生昆虫なんです。
マツモムシはひっくり返っているのが正常
水面で一見死んでいるのか、もしくはひっくり返って苦しんでいるのか・・・と思ってしまうほど、優雅に!?浮かんでいるマツモムシ。
実はこれ、間違ってひっくり返ったわけでも、死んでいるわけでもなく、マツモムシにとってはいたって正常ないつもの体制。
彼らはとっても背泳ぎの特異な水性昆虫なんです。
マツモムシの特徴
マツモムシは11~14mmほどの楕円形をした光沢のある昆虫です。鋭い口吻を持っていて、噛まれると人間でも痛いので注意が必要!!
水中に長い時間潜ることができ、水中では銀色にキラキラと光って見えます。
世界では200種類ほどが生息、日本だけでも3属、10種のマツモムシが確認されています。
前脚は捕食用に短く、後ろ脚は遊泳用に長く発達しています。
マツモムシの生態
マツモムシはオタマジャクシや小魚などの小さな水生昆虫を捕食します。
捕まえると鋭い口吻を突き刺し、内部に消化液を注ぎ込み、そののちに体液を吸って栄養にしています。
繁殖時期は4~5月頃で、水草の茎や葉の裏などに卵を産み付けます。
マツモムシの幼虫はうっすらと緑がかかった銀白色です。まだ翅がないので飛ぶことはできません。
水面に浮かんでいるマツモムシを刺激するとひっくり返って翅を開き、飛んでいくことがあります。
飛ぶときには一端ひっくり返ってから飛び立つんですね。
普段は流れのある川などよりも、池やダム、プールなどにも浮いていることもあります。
川でも、溜まりになっている流れのないところを好んでいるようです。
マツモムシのアクアラング
マツモムシは非常に長い時間、水中に潜っていることができます。
エラでもついているのかと疑いたくなるほどの長さは、どうやって実現されているかご存知でしょうか?
マツモムシのお腹には沢山の毛が生えています。水中に潜るときにはこの毛に大量の空気の泡をまとって潜っていくことになるのですが、この空気の泡がポイントになります。
空気の泡はマツモムシの吸う酸素と、吐き出された二酸化炭素で徐々に二酸化炭素の割合が増えていきます。
この時に起こるのが、二酸化炭素が水中の二酸化炭素濃度とのバランスで、水中に溶け出していくという現象。逆に少なくなった酸素は水中から自然に気泡の中に取り入れられるというわけです。
つまり、マツモムシは気泡を抱えている限り、気泡が優秀な役割を担うことによって、水中にとどまって呼吸することが出来るというわけ。このマツモムシの呼吸はプラストロン呼吸といわれています。
昆虫や動物の無駄のないフォルムや生態は常に私たち人間の研究対象となり、新しい製品開発のヒントになっていることも多々あるわけですが、このマツモムシの気泡をヒントにして動力船を必要としない小型の自立式水中無人潜水機の燃料電池に応用する研究が進んでいるそうです。
また、人間がマツモムシのように自由自在に水中を動き回るためには、直径2.8m、表面積90㎡の空気の層が必要になるということも分かっているそうです。
現在、自然界においてはそのような環境は存在しないので、まだ実現はできませんが、将来直径2.8mの空気層を可能にする技術が発明されれば、人間が自由自在に水中を動き回る日が来るのかもしれません。
そしてそれは……進化が一周して魚類に戻るということ!!???(なわけないか・・)
何気に水面に浮いているマツモムシですが、この夏、見つけることがあったら、じっくり見てください。ただ、ひっくり返っているだけではない、なかなかの奴なんです♪
触るときには噛まれないようにくれぐれも注意して!
(ライター ナオ)