アブラムシの幼虫って見たことある?と聞かれてもすぐには答えられないかもしれません。

そもそも幼虫がいるのでしょうか?思わず刮目してしまうであろうアブラムシの生態や幼虫についてなどを含む雑学的な話です。

アブラムシの外見など

半翅(カメムシ)目であるアブラムシの種類は実に多く、世界に4000種はいるといわれます。

日本にいるのは400種ほどとされています。

アブラムシの体の構造はわりあい普通です。頭部・胸部・腹部にわかれ、腹部に3対の脚をもちます。

頭部には長めの触角が1対、複眼、口吻があります。

 

お尻の真ん中に角板と角版があり、その両脇に角状管があります。

アブラムシは角状管から分泌物を出します。植物に寄生して生き、限りなく増えているようにみえる害虫として知られるアブラムシですが、彼らも虫である以上卵か何かから生まれるはずです。アブラムシの生い立ちは複雑かつ奇妙であり、長い話になります。

アブラムシの春

アブラムシは春先に卵から生まれます。越冬できた卵です。

いよいよアブラムシの幼虫が出てくるはずです。産卵場所は最初に寄生していた植物の葉の上や木の枝、樹皮の隙間などです。

 

卵から生まれるのはまず、幹母(カンボ)です。幹母というのはメスです。

その幹母は胎生(タイセイ)を産みます。産まれた胎生たちはメスです。

 

胎生とは通常、卵がメスの体内で孵化したものさすことが多いようですが、アブラムシの場合は胎生のまま生活しはじめます。

この胎生たちはすでに体内に卵をもっています。

春から夏にかけてたくさん見かけるアブラムシたちはほぼメスであり、常に卵を抱えている状態です。

アブラムシの夏

アブラムシは口吻から農作物含む植物などの養分を吸いとり生きています。

夏になると栄養が不足しがちです。アブラムシの胎生たちは、体を小さくしたり、休眠することで栄養不足に対応します。

 

アブラムシは同じ種類でも、時期によって外見が変わる事が大きな特徴です。翅がなかったりあったり、体色がだいぶ変化したり、体の大きさが違ったりします。

アブラムシのこういう変異は成長だとかそういう事ではなく、環境に応じてマルチに変幻する性質をもつからのようです。

 

そのため、アブラムシの幼虫と成虫の境目はたいへん曖昧でよくわからないといっていいくらいです。

現に越冬卵から生まれたものは幼虫というより幹母であり、その幹母が産むものは既に卵をもった胎生であり、子とともに孫まで生んでしまうような状況です。

 

幹母はちょっとおおきめのアブラムシというような外見であり、アブラムシの幼虫とはとても思われません。

また、アブラムシは脱皮します。農作物の葉の上などに抜け殻がたくさんみつかり、病気を引き起こす要因になります。

 

夏頃から秋にかけて、アブラムシの胎生たちは産卵します。この時に産まれるのは翅をもつアブラムシです。

有翅型といわれます。アブラムシは小さいので翅も小さく、何のためにあるのか分からないくらいです。

 

アブラムシの胎生たちは産卵するのだから生殖機能をもつかというとそうではありません。

アブラムシはほぼメスのみで卵のみを次々と産みますが、春から夏にかけては主に単為生殖です。

アブラムシの秋冬

秋になると有性生殖の機能をもつアブラムシが交尾を行います。

冬になるとアブラムシのメスは産卵します。卵で越冬する種が多いですが、気温が高い地方では冬眠時期はなくアブラムシたちは一年中活動します。

 

多くのアブラムシたちは単為生殖型ですが、有性生殖も行うことがあります。

このように越冬できる卵から生まれてくるのはやはりアブラムシの幹母(メス)です。

アブラムシの寄生と吸汁

アブラムシは多種多様な植物や農作物に寄生し、その汁を得て生息します。

種類により寄生する植物が分かれているとされ、ダイコンなどアブラナ科につくアブラムシは、モモアカアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、ダイコンアブラムシなどです。また、季節などにより寄生する植物をかえる種は移住型、非移住型におおまかにわかれます。

 

アブラムシがもたらす被害は、吸汁によるものと、アブラムシの出す分泌物によって起こるすす病、また植物ウイルスというものの媒介などです。

アブラムシの増え方

有性生殖と単為生殖の違いですが、オスとメスが関わり生殖することを有性生殖、どちらか一方(主にメス)のみで生殖可能であれば単為生殖です。

アブラムシの場合さらに不思議なのが、個体数が増えすぎると翅のあるものが出現し、違う集団のいる植物に寄生しそれから養分を吸い取りながら生きていく行動がみられることです。アブラムシの小さすぎる翅は、寄生先を変更する目的をもって出現します。

 

多くの天敵に囲まれているアブラムシたちはどんどん捕食され、または駆除されます。

しかしアブラムシたちはほぼ通年卵をもつメスが存在しているので、また産卵すればいいのです。

一時的に数は減っても、なんらかの方法でアブラムシたちはすぐに増えます。

アブラムシはなぜあまり減らないのか

なぜあのように小さい虫の数が減らないのかというと、アブラムシたちは微生物と共生しているからです。

しかも一億年ほど前からです。

 

アブラムシと微生物との関係は、相利共生で相方に益がある共生関係です。

アブラムシの体内には微生物のための特殊な細胞器官があります。

 

植物などから吸い取る養分だけでは足りない不足分を補うため、微生物からも必要な養分を得ています。

アブラムシ自体もキャベツなどの農作物に寄生しますが、さらにその体内にも共生関係にある微生物の存在があるのです。

アブラムシの生存方法はややエイリアンめいています。

アブラムシと関係する虫

アブラムシは相利共生というシステムが大好きなようで、アリとも共生関係にあります。

アブラムシは糖分を分泌し、カイガラムシのようにアリたちを誘いだします。

 

こういった相利共生は環境により解消されることもありますが、アブラムシとアリはかなり深い関係のようです。

エゾヤマアカアリは、アブラムシの分泌物のあとを舐めに集まっていたりします。そのかわり、アブラムシたちは外敵から守ってもらいます。

アブラムシの体色

アブラムシの体色は変化します。

ダイコンなどアブラナ科の農作物付近で見つかる農業害虫でもあるモモアカアブラムシは1~2mmほどの大きさですが、赤系になったり緑色になったりします。

 

体色の変異には体液に含まれている物質が関係しているなどといわれますが、はっきりと判明していません。

緑色のモモアカアブラムシは天敵とされるテントウムシに捕食されにくい傾向がありますが、寄生蜂には弱いそうです。

モモアカアブラムシの口には2本の管があり、ひとつは唾液を注入するためのもので、もうひとつは植物師管液を吸うためのものです。

植物師管液というアブラムシが栄養としている液体ですが、主に光合成から合成された糖やアミノ酸などが含まれています。

 

このあたりの植物の仕組みについてという観点から、アブラムシは一体何を吸っているのかという研究がされていたりします。

モモアカアブラムシはウイルスの媒介者としても知られています。

モモアカアブラムシの増殖力はきわめて強く、農業分野にとって非常にやっかいな存在です。

ウイルスというのは、細胞を宿主にする微生物の一種のようなものです。

細菌は一定の条件が揃えば自ら増殖できるものです。

アブラムシの幼虫と成虫

正確にいうとアブラムシには幼虫はいないようにみえます。若虫といわれていたりします。

幼虫はごく普通の場合、成長し成虫になりますが、アブラムシの場合は生まれてきた時から既に成虫のような存在です。

 

新たなアブラムシが生まれても個体数が増えたというより、アブラムシが生存し続けるために必要な集団に欠損が生じたのでその補充を行った、というようにもみえます。

不思議な生物はたくさんいるのでしょうが、アブラムシの行動は虫というより何かの微生物のようで、ちょっとおそろしい気がしますね。

(ライター:おもち)