風鈴の音やセミの鳴き声を聞くと、夏だなって感じがします。
ただ、風鈴の音は涼しげで聞いていても不快ではないですが、セミの鳴き声はうるさくて暑さをさらに倍増させるような気さえしますね。
それではここで問題です。
「シャアシャアシャア」という鳴き声を出すセミは何ゼミでしょう?
ミンミンゼミやツクツクボウシなら簡単なんですが、これはちょっと難しいですね。
答えは「クマゼミ」です。
クマゼミの鳴き声は人によって聞こえ方が違うみたいで、「しねしねしね」と聞こえる人もいるそうです。怖い。
今回はそんなクマゼミがどんなセミなのか、見ていきたいと思います。
クマゼミってどんなセミ?
クマゼミは温暖な地域の平地や低い山に生息しているセミです。
山よりも都市部の公園や街路樹、庭木などに多く発生するのもクマゼミの特徴。
温暖な気候を好むため西日本以南に多く生息しており、北日本にはいないそうです。
てっきり全国区のセミだと思っていたので、ちょっとビックリ。
しかし地球温暖化が進んでいるので、もしかしたら今後北日本でもクマゼミが鳴く日がくるかもしれませんね。
成虫の大きさは6cm~7cmとヤエヤマクマゼミに次いで二番目に大きく、頭の幅も大きいのが特徴です。
そして鳴き声も大きくうるさい…。
ぱっと見でクマゼミかどうか分からない場合は、腹部を見てください。
腹部にヘソのような突起があります。
でもセミの腹側ってちょっと気持ち悪くてあんまり見たくないですよね…。
普通に木にとまっているセミを見るのは平気でも、裏側(腹側)は見たくないという人は多いはず。
発生時期は7月下旬から8月上旬がピークで、よりにもよって最も暑い時期に大量に発生するので、殊更に鳴き声が暑苦しく感じてしまいます。
もうちょっと涼しくなってから出てくれば、クマゼミ自身も楽そうなのに。
クマゼミの一生
クマゼミの幼虫は卵から孵ると土の中に潜り込み、約5回の脱皮を繰り返して成長します。
その間約4~5年。
地上で見かけるのは夏の間だけなのに、土の下では何年もかけてその時を待っているのですね。
成長した幼虫は地面の上に出て木に登り、約24時間かけて羽化します。
そしてその後は繁殖活動を行い、枯れた木や樹皮の裏に卵を産み、2~3週間でその人生を終えます。
実は近年、クマゼミが枯れ木などと間違えて光ファイバーケーブルに卵を産み付け、そのせいで断線してしまう事故が頻発しているそうです。
枯れ木と光ファイバーケーブル、そんなに似ている感じはしないですけど、なんで間違えちゃったんでしょう。
現在ではクマゼミに産卵されにくいケーブルをしようするなど、様々な対策が取られているようですが、果たして効果はあるんでしょうか。
ところで、地上に出てからのセミの寿命は一週間とよく言われますが、実はどのセミも大体2~3週間は生きるんですよ。
敵に捕食されたりしなければ、1ヶ月以上生きるセミもいます。
「セミの寿命が1週間」だと言われるのは、人が捕まえた場合飼育がとても難しく(夏の虫のくせに暑さに弱く、餌である樹液も十分に与えることができない等)1週間ほどで死んでしまうことからきています。
他の生き物とは違って、下手に人の手が入らないほうが長生きするんですね。
なんだかセミは儚く短い人生を送る虫だと思っていたけれど、生まれた時から考えると何年も生きてるし、地上に出てからも上手くいけば1ヶ月以上生きられる。
けっこう人生を堪能できてるんじゃないかなと思えてきます。
クマゼミまとめ
クマゼミはとても身近なセミですが、まだまだ知らないことがたくさんありました。
いつもは鬱陶しいとしか思っていなかったセミの鳴き声ですが、今年の夏はいつもより少しだけ気にして聞いてみようかなと思います。
みなさんも、セミの姿や鳴き声に気付いたら、「これクマゼミかな?」とちょっと気にしてみてはいかがでしょうか。
(ライター名 もんぷち)
日本第2位の大型のセミ~クマゼミ
クマゼミは半翅目(カメムシ目)ヨコバイ亜科セミ科に分類される日本特産種の大型のセミです。日本産のセミでは、ヤエヤマクマゼミ(←これもクマゼミですが)に次ぐ国内第2位の大型種です。
体長は、60~70ミリほどにもなり、アブラゼミやミンミンゼミに比べて頭部に幅があるため、『頭でっかち』な印象があります。
翅は透明だが、体は黒一色!
クマゼミの4枚の翅は無色透明で、その付け根付近の翅脈(翅の上にある管状構造)は緑色を呈しています。
体色は黒一色で、まさに『クマ』ゼミなのですが、腹部は白、褐色と黒が部分によって色違いに組み合わされています。
クマゼミは暑さが厳しくなると出現する!
クマゼミは、気候の温暖な地方の平地などに生息しています。都市部の公園や街路樹にもよく出現します。
クマゼミの成虫の発生は7月上旬から9月上旬くらいで、特に暑さが厳しくなる7月下旬から8月上旬にかけてが、ピークになります。
成虫での寿命は2週間程度と言われていますが、これは環境にもよります。
大きな音を出し、力も強いクマゼミ!
クマゼミは大型であるため、飛翔時の羽音もかなり大きく聞こえます。これはクマンバチとよく似ている特徴でもあります。
クマゼミの鳴き声は大きく、捕まえた際には『ジージー』と大きな音を発して抵抗します。ただし鳴くことができるのは、腹部に発音筋と発音膜を持つオスだけです。
また脚の力が非常に強く、素手で捕まえる場合には皮膚を傷つけられてしまう可能性がありますので要注意です。
クマゼミはすぐに場所を変えて鳴く!
クマゼミのオスが鳴くのは、日の出から正午までのおもに午前中で、特に午前7時から10時くらいが音のピークです。同じ場所で鳴き続けることはなく、一鳴き終ると、すぐに移動をしてまた別の場所で鳴きます。こうして朝の時間帯に活発に移動を繰り返し、木から木へ飛び交っているのが観察できます。
午後はアブラゼミと交代する!?
クマゼミは、雨の日や午後の時間帯は、鳴くことはほとんどありません。あまり動きまわらずに、樹液を吸うなどしておとなしく過ごしているようです。
クマゼミとアブラゼミとが共存している地域では、午前中にクマゼミが鳴き、午後からアブラゼミが鳴くというように、時間帯によって交代する『鳴き分け』が見られることがよくあります。
クマゼミの鳴き声の秘密!
クマゼミの鳴き声を『シャアシャアシャア』『センセンセン』などと表現するようです。
実はこの鳴き声には、驚くべき秘密があったのです。
ヒトの耳には、クマゼミとミンミンゼミの鳴き声はまったく異なって聞こえてきます。ところが両者の鳴き声を録音して、その周波数を分析してみると、すごい秘密が隠されていたのです。基本となる音はほぼ同じ周波数を示しており、そのペースだけが異なることがわかったのです。つまり録音された両者の鳴き声をゆっくり再生するとミンミンゼミの鳴き声に、速度を上げて再生するとクマゼミの鳴き声になるというのです。
さらにクマゼミとミンミンゼミの中間もいた!
また、台湾や中国南部に生息している『タイワンクマゼミ』は、クマゼミとミンミンゼミとちょうど中間程度のペースで鳴いていることがわかりました。すなわち発生する周波数もほぼ同じで、鳴くペースだけが異なるのです。
つまり鳴くペースを早い順にすると、クマゼミ→タイワンクマゼミ→ミンミンゼミになるのです。
クマゼミとミンミンゼミは棲み分けをしていた!
クマゼミとアブラゼミが時間帯で交代する『鳴き分け』をしているのに対して、クマゼミとミンミンゼミでは『棲み分け』をしていることがわかりました。
実際の例では、おもに平坦地でクマゼミが発生し、傾斜地でミンミンゼミが繁殖していたということがありますし、クマゼミの発生完了後に時間差をおいてミンミンゼミが発生するというような、時期的な棲み分けが見られる地域もあります。
このように同じ地域に数種のセミが生息していても、秋の虫たちのように大合唱になることはなく、単独種のみが時間帯や時期を変えて鳴くのがセミの世界のようです。
クマゼミの幼虫は乾いた場所をこのむ!
クマゼミの幼虫は、アブラゼミの幼虫によく似ています。
やや大型で、身体にツヤがなく、頭部や腹部に泥が付くことで両者の区別がされているようです。一般には、アブラゼミの幼虫は湿った場所をこのみ、クマゼミの幼虫は乾いた場所をこのむといわれています。
幼虫である期間は大体2~5年といわれ、決まっていません。
クマゼミは高い位置で羽化する!
クマゼミの幼虫は成虫と同様、脚の力がとても強いので、樹木ばかりでなく、比較的足場の悪い民家の外壁やコンクリートブロックでもよじ登ることができます。
ですからクマゼミの幼虫は、こういった場所でも平気で登っていきますし、同じ樹木でも他のセミよりも高い位置まで登って行って羽化するのです。
クマゼミの生息域は北上している!
クマゼミは南方系のセミであるため、おもに西日本から関東南部の太平洋側の温暖な地域に生息しています。山陰地方などの日本海側や内陸部では冬の寒さのために生息数は激減しますし、北日本では生息することができませんでした。
ところが最近では都市部の温暖化などによりクマゼミの生息域が北上しつつあります。
クマゼミの空白の謎!!
前述した温暖化による生息域の北上などとは無関係に、クマゼミの生息域には不思議な空白地帯があるのです。
気候温暖な南西諸島では、クマゼミは広く分布しています。ところがその中でも、奄美大島、喜界島、徳之島の3島だけにはクマゼミが生息していません。周囲にある沖永良部島や与論島ではごく普通に見られるのに…です。この3島だけがクマゼミの空白地帯になっているのです。
空白の謎はまだ解明されていない!
クマゼミの空白地帯がある理由を気候や地理上の要因で説明することは不可能なのです。
近年では人為的な移入により奄美大島でもクマゼミの繁殖が確認されています。ですから、この3島がけっしてクマゼミの生息に適さない地域ではないことがわかっています。
この不可思議な『クマゼミの空白の謎』が、いつの日にか解き明かされるのを待ちたいと思います。