日本人の誰もがどこかで一度はきいたことのあるセミの声。

子供達の夏休みの思い出の一ページを飾ることも多いはず。

羽化したばかりのセミの成虫は目を見張るような透明感で、昆虫好きな子供達を魅了します。

幼虫からさなぎに変わるその瞬間は、まるで新たな人生(セミ生)!?の一歩を踏み出したかのような初々しさです。

長い沈黙を破り、まるで人!?(昆虫!?)が変わったかのようにけたたましく鳴きはじめるセミたちの寿命はどうなっているのでしょう。

セミの生態

世界中でセミの種類は3000種類といわれています。そのうち、日本で確認されているのは30種類ほど。

多くの生物たちに共通するように、セミの鳴き声もまた繁殖のためにオスが自分をアピールするもので、夏場に聞こえるあの鳴き声は愛の賛歌なのです。

その愛の賛歌に惹かれてやってきたメスたちはオスと樹皮の上で交尾をし、その後、枝や木の割れ目など、他の生物に見つからないような場所に産卵します。

冬を木で超えた卵たちは、翌年の春に孵化し、一度の脱皮をしたのち地中へとまっしぐらに向かっていきます。そして、土の下で長い長い幼虫時代を送ることになるのです。

長い長いセミの幼虫時代

一生の寿命のうちの大半を幼虫として地中で過ごすことが知られるセミたち。

夏の夕暮れ時を象徴するかのようなツクツクボウシは1~2年ほどを土の中で過ごします。

ミーンミーンと鳴く日本の夏の代表ともいえるミンミンゼミは2~4年ほどを過ごし、世界では珍しい部類に入るアブラゼミは6年ほどを過ごすといわれています。

しかし、世界を見渡すと、アメリカには17年セミという、その名の通り17年間も幼虫として過ごすセミもいるのだとか・・・・。

幼虫の間、彼らは師管といわれる木の細胞中にある管を流れる液を栄養源としています。

光合成によってつくられた栄養分がたっぷりと流れる樹液から生命維持に必要なアミノ酸などの栄養を補給しているのです。

強力なあごで細い根っこなどにかみつき、チュウチュウと吸っている様は成虫になっても変わらないセミの食事方法です。

土の中で4~5回ほどの脱皮を繰り返す幼虫の間の天敵はモグラやケラ、ゴミムシや菌類などの生息域を同じく地中にする生き物たちです。

この生き物たちの餌食にならなかった運のよい幼虫たちだけが地上の表舞台へと這い上がっていけるのです。

表舞台で・・・・

セミらしい風貌になってきた5~6齢のセミの幼虫は、温かくなってこれから夏に向かう頃の日没時期に羽化をします。

一本の木で同時に何匹ものセミが羽化をすることもあったりして、樹液が吸いやすくてセミたちが生き延びるのに最適な木というのがあるのかもしれません。

羽化したばかりのセミは鳴くことも飛ぶこともできず、数時間たって体が乾いてくると、いわゆる私たちが目にする成虫のセミらしい活動が出来るようになります。

 

セミは一週間で寿命が尽きる!?

セミの一生はドラマティックに語られることが多いようです。

長い地中時代に比べ、地上に上がってきて羽化したあと、成虫でいられるのはたったの一週間だとか・・。

確かに実際に短いセミの成虫時代なのですが、一週間というのはドラマティックなストーリーが先行しすぎてしまっているようです。

寿命が一週間しかないというのは、捕獲して家の虫かごで飼ってしまった場合のことで、それはいわゆる樹液を与えない「餓死」が原因と考えられます。

自然界で樹液を吸いながら、なおかつ鳥などの天敵にも食われずに生き延びたとしたら、その寿命は一カ月ほどなのです。

短い寿命としてドラマティックに取り上げられるセミですが、実は幼虫時代と合わせると昆虫としては寿命の長い生物といえるでしょう。

ちなみに、セミを捕まえようとして、よくおしっこをかけられた!という経験のある人も多いかもしれませんが、あれは、スカンクやカメムシの様に敵を追い払うための行為とは別もので、次の住処(木)に移る時に身を軽くするために行っていると考えられています。

樹液ばかりを栄養源としているセミたちは実は飛ぶにはちょっと身重なのかもしれません。

(ライター  ナオ)

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