これからの季節、夜、耳を澄ませば聞こえてくる大合唱。
一体何万匹のカエルが鳴いているんだと思うほどの大合唱は日本の夏の風物詩でもあります。
カエルの歌
生活の中で身近なところにいるカエルは、小さいころから歌った童謡でもおなじみです。
♪かえるのうたが きこえてくるよ
ぐわっ ぐわっ ぐわっ ぐわっ
ゲロゲロゲロゲロ ぐわっ ぐわっ ぐわっ♪
この歌、もともとはドイツの民謡でした。
それを昭和22年に作曲家の岡本敏明さんという方がそのまま訳して歌にしたのだとか。
カエルはどんな時に鳴くの?
ところでカエルはどんな時に鳴くのでしょう。
実は鳴いているのはオスだけで、なわばりを主張したり、求婚をするときに鳴いているのです。
大合唱になるのは、誰かが発した鳴き声に反応して、我負けじと次々にオスたちが鳴き始めるから。
でも、好き勝手にただ鳴いているわけではなく、この大合唱には法則があって、2手に分かれたカエルたちが交互に、しかも一定のリズムで鳴いているのだそうです。
不快ではない何となくリズムのある大合唱に聞こえるのにはそういう訳だったのです。
日本にいるカエルの種類と特徴
日本には43種類のカエルが生息していて、そのうちの半分ほどが日本の固有種です。
以下、その種類と特徴、鳴き声について紹介していきます。
アマガエルの鳴き声
アマガエルはニホンアマガエルと言われ、日本だけでなく、朝鮮半島、中国東部まで生息しています。
オスよりメスの方が大きく、前足に4本、後ろ足に5本の指がついていて、指の先端には白い吸盤がついていて、垂直な面やガラスなどにも張り付くことができます。
お腹部分は白く、背面はまだらの灰褐色にも変化し、保護色の役割を果たします。
この色の変化は周りの環境や湿度や温度などによってホルモンを分泌し、色素細胞を拡張したり収縮させたりすることによるもの。
アマガエルは樹上や水辺の植物で生活しています。オスには声嚢と呼ばれる袋状のものがついていて、そこで大きく音を響かせるようになっています。
通常繁殖期に夜、メスを呼ぶときに鳴きますが、アマガエルは雨の前の日等の昼間にも鳴くことから、この名前が付けられたと言われています。
「ゲッゲッゲッゲ」「クワックワックワックワッ」と鳴きます。
モリアオガエルの鳴き声
モリアオガエルは繁殖期以外は森林に生息しています。繁殖期になると水辺に降りてきますが、通常のカエルのように水中に産卵するのではなく、水面や水辺の植物の上に粘性のある泡の卵塊を作って、その中に産卵します。
一匹のメスに複数のオスが群がることもあり、複数のオスでその泡をつくります。
鳴き声は「カラカラカラ」と鳴いた後、「コロコロ」「クックック」と続きます。
トノサマガエルの鳴き声
関東から仙台平野にかけては生息していないカエルです。北海道でも一部の地域のみで生息が確認されています。
メスは灰白色、オスは茶褐色から緑色で、背面の真ん中に黄色や白の明確なラインが入ります。普段から沼地や田んぼに生息しています。口の骨格が丈夫で小型のヘビなども捕食してしまうほど。
ウシガエルの鳴き声
日本全土の沼地や河川、湖などに生息しています。
背中の色は暗緑色で、淡黒色の斑紋がまばらにあります。メスの背面は褐色。オスの喉の部分は黄色っぽくなっていることが多いのが特徴です。
体調はアマガエルなどに比べると10倍以上の大きさがあり、20㎝近くなるものも。「ブオーブオー」と牛のように鳴くことが名前の由来なっています。
最近は「ニャー」と鳴く個体も発見され、話題となりました。
ヒキガエルの鳴き声
日本にはニホンヒキガエルとアズマヒキガエルという2種類のヒキガエルが生息しています。
森林や沼地に限らず、草原や都心の庭先にも生息しています。水をあまり必要としないのが特徴。
体長は20㎝弱程。普通のカエルのように跳躍することなく、のそのそと歩きます。
体の背面に白い有毒の液を出す腺をもっていて、ここから出す毒で敵から身を守っていると言われています。ヤマカガシという蛇が天敵で、ヒキガエルの毒に耐性を持っているのだそう。
体のわりに可愛い声で鳴きます。
ツチガエルの鳴き声
北海道西部から九州までと周辺の島々の水辺に生息しています。灰褐色~黒褐色の3~5㎝ほどの大きさで、見た目がグロテスクなので地域によってはクソガエルと呼んでいるところもあるのだそう。
すぐに水に飛び込めるような場所にいることが多く、松尾芭蕉の詠んだ有名な俳句、「古池や蛙飛び込む水の音」のカエルはこのツチガエルの可能性が高いと言われています。
地上生活をおくり、繁殖期は5~9月。オスがメスを呼ぶ声は「ギューギュー」という低くて小さい声です。
幼生のまま越冬するものもいて、春になった時の幼生の大きさは9センチにまでなるとか・・・
ヌマガエルの鳴き声
褐色の小さなカエルです。
日本ではもともと本州中部以西、九州、四国、奄美大島などに生息していましたが、1990年ごろからは関東地方や対馬、壱岐島、五島列島でも見られるようになり、国内外来種という扱いになっています。
館町は3~5㎝、メスの方がオスよりも大きく、背中部分にはいぼ状の突起が見られます。地域によっては背中に白い線の入った個体もいるようです。
オタマジャクシは尻尾についたまだら模様が特徴です。
主に沼や河川など水辺近くの地上に生息していますが、海水の流れ込む河口や水温が40℃を超える夏の田んぼの中でも生きていくことができる逞しさを持っています。
ツチガエルに似ていますが、表面が滑らかで鳴き方が違います。オスの鳴嚢はハート型に膨らむのも特徴的です。
ヤマアカガエルの鳴き声
日本の固有種で本州、九州、四国、佐渡島に分布しています。
丘陵地や山間森林内にいることが多く、その周辺の沼や田んぼなどでも見ることがあります。
体長は4~8㎝ほどで、ニホンアカガエルに似ていますが、比べると背側面のラインが折れているのが特徴です。
幼生は黒っぽい色をしていて、冬眠も土には潜らずに水底でします。
ニホンアカガエルの鳴き声
日本の固有種。本州から九州、四国、その周辺の離島に生息しています。
体長は4~8㎝程度。オタマジャクシには背中に一対の黒斑が見られます。
丘陵地や森林、草むらの地上でくらしていますが、産卵は水田で行うため、水田環境の変化により、年々その数は減っています。
産卵は他のカエルよりも早く、1月ごろから始まります。時には12月に産卵するものもいるのだとか。優しく「コロコロコロコロ」という鳴き方をします。
カジカガエルの鳴き声
日本の固有種で、本州・四国・九州・五島列島の山地、渓流、森林に生息しています。
岩の隙間などに隠れられるように扁平な体をしていて、背中は灰褐色で不規則な斑紋があります。
目と目の間にはT字状の線が入り、指先の吸盤が発達しています。
水辺にある岩の上などになわばりを形成、繁殖期になると独特の綺麗な鳴き声で鳴きます。
カジカガエルは和名で「河鹿」と書き、その由来は雄鹿の鳴き声に似ているからだそう。
風流な鳴き声は江戸時代にはブームとなり、一時期カジカガエル飼育専用の「河鹿籠」というものがあったのだそう。
日本のカジカガエル生息地、岩国市の錦川中流等は国の天然記念物に指定されてます。
カエルの鳴き声のまとめ
夜を田舎で過ごしたことのある人なら一度は聞いたことがあるだろう、カエルの大合唱。
静かな夜に響き渡るカエルたちの歌声は男たちのラブソング。
そう思いながら聞くと、いつもの大合唱もまた一味違ったものに聞こえてはきませんか?
(ライター ナオ)