皆さんは、「三すくみ」という言葉をご存知ですか?
三者がそれぞれ得意なものと苦手なものを持ち、それが一堂に会することでお互いに身動きが取れなくなる状態のことを指す言葉ですね。
この三すくみが文章として登場するのが、関尹子(かんいんし)という中国の古典。
今回は三すくみの内容や、関尹子についての解説などをまとめていきたいと思います。
ナメクジが蛇を溶かす?
皆さんの良く知る「三すくみ」とは、蛇、蛙、ナメクジのことですよね。
蛇は蛙より強く、蛙はナメクジより強く、ナメクジは蛇よりも強い…。
しかし多くの人が疑問に思うのが、「なぜナメクジが蛇よりも強いのか」ということです。
どう考えても、蛇の方が圧倒的に強いと思うのですが。
しかしかつての日本では、ナメクジには蛇の毒が効かず、ナメクジの出す体液は蛇を溶かすと信じられていたのです。
本当に、ナメクジの体液は蛇を溶かすことができるのでしょうか?
その答えは、当然ながら「NO」!
ナメクジの体液にはそんな成分は含まれていませんので、蛇を溶かすことなどできません。
むしろ、蛇の中にはナメクジを餌とするものさえいます。
つまりリアルに蛇、蛙、ナメクジを揃えても、蛇の一人勝ちで終わるということですね。
関尹子ではムカデだった?
関尹子というのは、元々中国の思想家の名前です。
その思想自体は断片的に残っているのみで、書物として残っている「関尹子」は後世に作られた偽作なんだとか。
まぁそのあたりの内容は今回関係がないので、ひとまず置いておきましょう。
関尹子では、「螂蛆食蛇、蛇食蛙、蛙食螂蛆、互相食也螂蛆」と記されています。
なんとなく漢字だけでも意味が伝わりますよね。
しかし「蛇」と「蛙」はわかりますが、「螂蛆」ってナメクジのこと?
だとしたら、ナメクジが蛇を食べるというのはちょっとおかしい感じがしますよね。
しかもナメクジを漢字表記すると「蛞蝓」。
じゃあ一体、「螂蛆」ってなんだ?ってことになります。
じつは「螂蛆」の正体は「ムカデ」。
螂蛆と蛞蝓を勘違いして広まってしまったという説があるのです。
それでは次に問題なのは、ムカデは蛇よりも強いのかという問題ですが、ムカデには強い毒があるので、ヘビはムカデを恐れているということのようです。
ナメクジには毒はありませんが、無理やり毒を吐くとこじつけたりしたようです。
外来種であるバナナスラッグと呼ばれる大きなナメクジがいます。
バナナのような黄色い体色と20センチにもなる大きさが特徴なのですが、捕食者に襲われると全身から粘液を出して抵抗します。
この粘液には毒はありませんが、粘稠度が強く、ヘビやトカゲなどは丸呑みしようにもこの粘液がジャマをして、呑みこむことができないのです。そうしてナメクジは捕食者があきらめてしまうのを待つのです。
そう考えると、ナメクジがヘビに勝つことも間違いでもないような・・。
まあ、ムカデ対蛇という事を考えると、同じくらいの体格であれば蛇よりも圧倒的にムカデの方が強いようですし、まれにムカデが蛇を捕食することもあるようです。
また、蛇がムカデを捕食した場合でも、腹の中で暴れたり噛まれたりして死に至ることがあるのだそう。
「螂蛆」がムカデであるならば、ちゃんと「三すくみ」になるのも納得ですね!
蛙はムカデも食べることがあるようですし。
ナメクジが蛇を溶かす?についてのまとめ
実際にナメクジが蛇を溶かすことはありません。
むしろナメクジも蛇の餌。
しかし世界中を探せば、ひょっとすると蛇を負かすことのできるようなナメクジを発見することができるかも?
そうなった時に初めて、満を持して「三すくみ」の完成というわけですね。
(ライター もんぷち)