夏などに玄関灯や街灯の下に集まってくる蛾、追い払ってもしつこくやってくる蛾、いやですね~。
日本には、蛾や蝶の仲間が6,000種いるといわれていますが、そのなかでも幼虫が毒針毛をもっていて、ガーデナーにとってもっとも会いたくない昆虫のひとつ、イラガに注目します。
イラガの特徴
イラガとは、いわゆる蛾です。体長は30mmぐらいで、黄緑色で縁のほうに茶色っぽい模様がついている羽をもっています。
夜灯がついていると飛んできます。イラガの成虫は口吻が退化しているので食べ物をとらず、幼虫時に蓄えた栄養素だけで生活します。
イラガの一生のなかでの主役(?)というか目立つ時期は、幼虫時でしょう。
鮮やかな緑色に独得の茶色の模様があり、毒のあるたくさんのトゲトゲをもっている幼虫は、カキ、サクラ、ウメ、リンゴなどのバラ科や、カエデ類、ヤナギ類、クリなど多くの種類の植物を集団で食い尽くします。
うずらの卵のようなものは卵ではない!
イラガの被害にあった樹木の幹や枝をよく観察すると、白と茶色のまだら模様で、うずらの卵を小さくしたような卵状のものがひっついていることがあります。
一見、イラガの卵かと思われがちですが、それは卵ではなくマユです。
他の昆虫のマユとは違い、カルシウム成分を含んでおり鳥の卵のように固くなっています。イラガのマユは、日本で見られるマユのうちもっとも固いといわれています。
イラガの卵とは?
では、イラガの卵とはどんなものでしょうか。
6月ごろ羽化した成虫は、葉っぱの裏側に数百個の小さい黄緑色の卵をびっしりと産み付けます。
規則正しくびっしりと並んでいて、ぞっとするほどです。
それが一斉に孵化して幼虫となり、集団で並ぶようにしてその葉っぱから食べ始めます。
イラガの生態
蛹の前の段階でマユをつくりそのなかで越冬します。
春になるとマユのなかで蛹になり、6月ごろ羽化しフタのように開いたマユの上端から飛び出します。
成虫になったイラガは葉の裏に卵を産み付け、7~8月ごろに一斉に幼虫になると葉裏から表皮や葉脈を残して食べ続けます。
そうすると葉には白や薄茶色の斑点ができたり、網目状に透けた状態になったりします。
はじめは集団で食べていた幼虫たちは、成長するにしたがってバラバラになって枝全体に広がり、さらに木全体に広がり、葉がほとんどなくなるまで食べ尽くしてしまいます。
そして蛹の前段階になるとマユに入り越冬、というサイクルです。
イラガの幼虫の毒針毛
イラガの幼虫は、ライムのような鮮やかな緑色に茶色の模様があり、毒針毛が生えているひょうたん型をしています。
ヒロヘリアオイラガの幼虫は、イラガより細長く、背中に青色に見える筋があります。
イラガの幼虫の発生時期は、7~8月ごろ1回ですが、ヒロヘリアオイラガは、6~7月と8~9月と2回発生します。
イラガの別名に「蜂熊」「デンキムシ」というのがありますが、トゲトゲに触れると、ハチに刺されたような鋭い痛みに襲われます。
敵を察知すると全身の棘の先から毒液を一斉に分泌するのです。
イラガに触れたときの対処法
イラガの幼虫の毒針毛に触れたときの症状としては、激しい痛みを感じ、皮膚に水泡状の炎症があらわれ赤く腫れ上がります。
痛みは1時間程度でおさまることが多いのですが、炎症やかゆみは1週間ほど続きます。
イラガのトゲトゲにさわってしまったと思ったら、毒液と棘を水で洗い流してください。
ガムテープなどを使い棘を抜くというのも有効です。そのあと抗ヒスタミン剤が入った薬をぬります。
かゆみがでても冷やすなどしてかかないようにしましょう。1週間ほどで落ち着きますが、改善しないようならお医者さんに相談してください。
イラガの駆除方法
イラガを駆除するには、幼虫の発生時期になったら植物をよく観察して、葉に白や薄茶色になったところはないか、枝の下のほうに黒いフンが落ちていないかをチェックしてください。
小さい幼虫が集まっているうちに殺虫剤を噴霧するのが有効です。
また、秋になって葉が落ちて幹や枝がよくみえるようになったら、マユができていないかどうか観察しましょう。
白と茶が混じった卵のようなマユ(ヒロヘリアオイラガは茶色)ができていたらこそげ落とすようにしてください。
イラガの卵のまとめ
夏になると植物の成長も活発になって、どんどん枝がのびてきます。
切っても切ってものびてくるので毎年の剪定には苦労します。そのうえ、葉っぱについている緑の毒毛虫に気づかず触ってしまい、痛い思いをするのは悲惨ですね。
剪定作業に入る前には植物をよく観察して、葉っぱの裏にイラガの卵や幼虫がついていないかどうかをチェックして被害にあわないように気をつけましょう。
(ライター sensyu-k)