シャグマアミガサタケ(赭熊網笠茸)は、子嚢菌門・フクロシトネタケ科・シャグマアミガサタケ属に属するキノコの一種です。

当記事ではシャグマアミガサタケとその毒について説明します。

シャグマアミガサタケの生態

シャグマアミガサタケは、おもに春季に、マツやモミ、トガサワラ、トウヒなどの針葉樹下に発生します。

日本においては、スギやヒノキなどの林内でもときおり見つかります。

 

シャグマアミガサタケの生活様式については、腐生性であるという説と、外生菌根を形成するとする説、あるいは周囲の環境に合わせて腐生生活と菌根形成とを随時に切り替えるという説があります。最近では、腐生生活を営むのではないかと推定されています。

なお、シャグマアミガサタケは北半球温帯以北に分布し、日本では北海道と本州に分布しています。

シャグマアミガサタケの毒の強さと成分

シャグマアミガサタケの有毒成分は、ヒドラジン類の一種であるギロミトリン、およびその加水分解によって生成するモノメチルヒドラジンです。

ギロミトリンの含有量は、シャグマアミガサタケ100グラムのうち、120~160ミリグラムほどです。

 

ギロミトリンの沸点は143℃で、揮発性はありませんが、沸騰水中ではすみやかに加水分解されてモノメチルヒドラジンとなります。

モノメチルヒドラジンの沸点は87.5℃で蒸気圧も高く、煮沸すると気化します。また、煮沸によって煮汁のなかにも溶出します。

 

シャグマアミガサタケは10分間の煮沸によって、モノメチルヒドラジンのほぼ100パーセントが分解・失活します。

また、生鮮品を10日間ほど乾燥することによっても、ギロミトリンを90パーセント分解できるとされています。

 

シャグマアミガサタケは、採取したものをそのまま食べれば、食後7~10時間を経た後、吐き気や嘔吐、激しい下痢と腹痛、けいれんなどが起こります。

 

重症の場合には、肝障害とその結果としての黄疸、発熱、めまい、血圧降下などがあらわれるとともに、脳浮腫とそれにともなう意識障害、ないしは昏睡、あるいは腸、腹膜、胸膜、腎臓、胃、十二指腸などに出血をきたし、最悪の場合には2~4日の後に死に至ることがあります。

 

シャグマアミガサタケの食べる方法

シャグマアミガサタケは食べるためには、まず毒抜き処理に熟知しなければいけません。

また毒抜きの際に、揮発した毒成分を吸引しても中毒が起きる可能性がありますので、安易に食べられるキノコとはいえません。

 

が。

フィンランドでは、よく知られた食材であり、毒性の明示と調理法に関する説明書きの添付を条件に、例外的に販売が許可されています。

ちなみにコルヴァシエニ(耳キノコ)と呼ばれています。

生鮮品の食べかた

シャグマアミガサタケを大量の水(シャグマアミガサタケ1に対して水3)で茹でます。

5分以上煮沸してから、茹で汁を捨てて、大量の水で煮汁を洗い落とし、再び5分以上茹でます。

乾燥品の食べかた

シャグマアミガサタケの乾燥品は、料理の前に少なくとも2時間は水に浸してください。

シャグマアミガサタケが柔らかく戻ったところで、生鮮品の処理と同様に、2回茹でこぼして水ですすぎます。

煮沸と乾燥の際は、十分に換気してください。

 

ちなみにフィンランド料理では、シャグマアミガサタケの毒抜きしたものをベシャメルソースの素材として用います。

また、フィンランドでは缶詰品も市販されていますが、煮沸処理が施されたものとそうでないものとがあるので、もし入手された場合は、調理するときに注意してください。

シャグマアミガサタケのその他雑学など

日本では、きのこ狩りの季節から離れた春季に多く発生するため、食べたり採取されたりといったことはされませんでした。

見た目が不気味なのも多少関係すると思います。

 

方言の呼び名も少なくて、「ぐにゃぐにゃ」(秋田県南部)、「しわあだま」(秋田県北部)、「しわもだし」(東北地方の各地)などがあるくらいです。

シャグマアミガサタケのまとめ

シャグマアミガサタケは、「毒はあるけど、なんとか食べられる」といった感じのようですね。

ただ、毒抜きに失敗すると、最悪の場合には2~4日後に死に至るようなので、気軽に料理できません。

食べるなら、プロが調理したものをお店で食べたいです。

(ライター ジュン)