住宅街を散歩していると、庭に大きな緑色の葉っぱのイチジクを植えているお宅をよく見かけます。
実が熟してくると甘い香りが漂ってきますよね。
ドライフルーツとしても人気のあるイチジクですが、栽培は簡単なのでしょうか。
イチジクの栽培方法やイチジクの栄養価、美味しい食べ方などについて見ていきます。
イチジクはどんな植物?
イチジクはアラビア南部地方が原産地の落葉樹で、樹高は2~5mにもなります。
育てやすく家庭向きですが、耐寒性はやや弱いので、関東北部より北の地域では庭植えはしないほうがいいでしょう。
イチジクには「無花果」という漢字が当てられていますが、イチジクが花を咲かせずに実をつけるように見えることから中国で名付けられた名前です。
また中国には「映日花」という別名もあります。
これを東音読みすると「エイジツカ」になりますが、これが渡来したときに転訛して「イチジク」になったといわれています。
また、1日1個ずつ実が熟すことから「一熟(イチジュク)」から「イチジク」になったという説もあります。
イチジクの花の秘密
無花果と書くイチジクには花は咲かないのでしょうか。
私たちが食べている甘くて丸いイチジクの果実は、「実」ではなく、「花」なのです。
イチジクの花は変わった仕組みをもっていて、花が実の中に隠れて咲きます。
実の中は空洞になっていて、内側に小さな花がたくさん並んで咲くので外からは見えません。
イチジクを割るとたくさんのぶつぶつした粒が見えますが、そのひとつひとつが花から成長した実なのです。
では受粉はどうするかというと、野性種ではイチジクコバチという小さいハチが実の中に入り込み受粉を助けます。
では私たちが食べるイチジクの果実の中にもハチがいるのかというと安心してください。
日本で栽培されている品種は受粉の必要がないものなのでハチはいません。
イチジクの栽培の歴史
原産地に近いメソポタミアでは、なんと6千年以上前から栽培されていたという記録が残っています。
地中海沿岸のエジプトやギリシャでも紀元前から栽培されており人々にもっとも親しみのある植物の一つでした。
「旧約聖書」の創世記に、エデンの園で禁断の果実を食べたアダムとイヴは、自分たちが裸であることに気づき、イチジクの葉で腰を隠したという記述があるように、新旧の聖書、福音書、バラモン経典などに、しばしばイチジクが登場します。
日本には、江戸時代の初めごろに渡来してきましたが、当初は茎や葉、実を薬として使っていました。
次第に甘い果実を生食で食べるようになり、栽培も比較的簡単なことから庶民の庭に広がり、栽培用の品種が渡来すると広く農地で栽培されるようになりました。
イチジクの旬と栄養価
イチジクには、6月~7月の夏に熟すもの、8月~10月と秋に熟すもの、夏も秋も熟すものと3種類があります。
イチジクの収穫期は比較的長く、その中でもイチジクがもっとも美味しい旬は8月~10月になるでしょう。
イチジクは古くから「不老長寿の果物」とも言われてきましたが、イチジクに多く含まれている栄養価について見てみましょう。
- 水溶性植物繊維(ペクチン):腸の活動を活発にし便秘を解消します。
- ミネラル(カルシウムや鉄分):貧血防止や骨の成長を助けます。
- カリウム:余分な塩分を体内から排出し、高血圧やむくみを改善します。
- 酵素(フィシン):消化を促進し二日酔い防止に効果があります。
- イチジクの美味しい食べ方を紹介しましょう。
生食
柔らかくて甘い香りのするイチジクは生食がいちばんという方もいると思います。
生のままサラダに使用してもいいですね。
ドライフルーツ
美容や健康によいとしてドライフルーツが人気ですが、イチジクも地中海地方を中心に古くからドライフルーツとして販売され食べられてきました。
栄養素が凝縮されているというところが魅力です。
ただし食べ過ぎると腸などへの働きかけが強すぎてお腹が下ってしまうこともあるようなので気をつけましょう。
コンポートやジャム
甘く煮詰めてコンポートやジャムにするのもいいですね。
ヨーグルトと混ぜて食べたり、フルーツケーキの材料にしたりするといいでしょう。
イチジクの栽培方法
比較的家庭でも栽培するのが簡単だというイチジクですが、栽培方法についてまとめてみました。
栽培環境
日光を好むので、日当たり良好な場所を選びます。
寒冷地では庭植えは避け鉢植えにし、冬は室内に取り込みましょう。
水やり
鉢植えの場合は、表面が乾いたらたっぷり水を与えます。
地植えの場合は、夏に日照りが続いているときは水を与えますが、それ以外はこまめに与える必要はありません。
肥料
実を付けるためには肥料を多く必要とします。
植え付け時にたっぷりと堆肥を混ぜ込み、3月~10月の間は、1~2ヶ月に1回肥料を与えます。
病気と害虫
イチジクは比較的病害虫に強い果樹ですが、カミキリムシには注意してください。
幼虫が枝や幹の入って食い荒らし、枝や木全体を枯らします。
根本におがくずのようなフンが見つかったら、殺虫剤を吹きかけたりして駆除しましょう。
植え付け、植え替え
鉢植えの植え付け期は11月から3月です。
2~3年ごとに植え替えし根詰まりを防ぎましょう。
増やし方
挿し木で比較的簡単に増やすことができます。
剪定で切り落とした枝を活用したりして、3月から4月に行います。
剪定
12月から2月に行います。
秋に実る木は、その年の春から伸びた枝に実をつけるので、前年枝をどこで切り詰めても問題はありません。
しかし、夏に実る木は前年枝に実をつけるので、枝を切り詰めると実が成らなくなるので注意が必要です。
まとめ
イチジクの花言葉は、「子宝に恵まれる」「多産」「裕福」「平安」などハッピーをイメージする言葉が多いですね。
長期間に渡ってたくさんの実をつけ、さらに実の中にたくさんの花を咲かせ、それがすべて実りタネになるということにちなんでいるのでしょう。
今年の夏はご家族そろってイチジクを味わってはいかがでしょう。
(ライター sensyu-k)