クロサイとシロサイは、ともに奇蹄目サイ科に属する大型の陸棲哺乳類です。
当記事ではクロサイとシロサイの違いと、その見分けかたを紹介します。
クロサイとシロサイの違い
クロサイは、サイ科クロサイ属に分類されるサイのこと。
シロサイは、サイ科シロサイ属に分類されるサイのことです。
クロサイとシロサイのおもな違いは以下の4つです。
クロサイとシロサイは、口のかたちが違う。
クロサイは、おもにタンパク質の豊富なマメ科の低木の葉や小枝、果実を摘まみ取って食べます。
そのため、ものを摘まむのに適したとがったうわくちびるを持っています。
一方、シロサイは、おもに地面の草をむしり取って食べます。
そのため、幅の広い四角いくちびるを持っています。
クロサイは、シロサイよりも体が小さい。
シロサイはサイ科最大種です。実は、ゾウに次いで大型の陸棲哺乳類なんです。
クロサイは、頭部と耳がシロサイよりも小さい。
また、額がはっきりとしています。
クロサイは、シロサイのようなはっきりとした肩のコブを持ちません。
なお、クロサイは地面を転げまわる性質があるため、皮膚の色は生息地の土によって異なります。
ですので、「クロサイ」といっても黒くないこともあるんです。
実は、シロサイもクロサイも体表の色に大きな違いはありません。
身もフタもないことを言ってしまいますが、どちらもグレーです。
では、なぜクロサイ、シロサイと呼ばれているのでしょうか?
名前の由来
クロサイとシロサイの名前の由来は、体表の色に基づくものではありません。
その真相は謎のままですが、以下の説がどうやら有力のようです。
シロサイの口のかたちを「ワイド」と言ったのを「ホワイト」と聞き間違えて、シロサイを「ホワイト・ライノセラス」……
すなわち「白いサイ」と呼ぶようになった。そして、もう一方のサイを「ブラック・ライノセラス」……
「黒いサイ」と呼ぶようになった。
うーん、話が出来すぎていてどうにもウソっぽいですけど、実際のところはどうなんでしょうか。
もし聞き間違えなかったら、和名は「広サイ」と「狭サイ」になるのでしょうか。
語呂がいいので、まあこれでも好いとは思いますけれど、でも、そんなテキトーな名付けかたをされたサイも、まったくいい面の皮ですよね。
クロサイと人間との関わり
クロサイの角は、薬用になると信じられており、また、イエメン北部などではジャンビーヤという短剣の柄に用いられています。
というわけで、クロサイは角目的で乱獲されました。
そして生息数が激減したのです。
1960年の生息数はおよそ10万頭と推定されていますが、1960年代から1995年にかけて、クロサイはその98%も減少してしまいました。
1996年における生息数は、2408頭と推定されています。
ただ、国際サイ基金によると、クロサイの数は徐々に回復しつつあります。
2003年には3610頭、2007年には4180頭、2013年には5055頭です。
それでも依然としてサイの密猟は横行しているので、現在も決して楽観できる状況ではありません。
まとめ クロサイの益害など
こうした密猟の背景には、ベトナムをはじめとするアジア諸国で、サイの角が伝統薬の成分として重宝されていることがあげられます。
多くの場合、違法であるにもかかわらず、いまだ高値で取引されているのです。
クロサイは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、もっとも絶滅のおそれが高いとされる、CR(近絶滅種)というランクに指定されています。
こうした状況下で、南アフリカを中心に再び増えつつある密猟は、長い間続けられてきた保護活動の努力を脅かす深刻な問題です。
ちなみにサイの角の主成分は、人間の髪の毛や爪と同じケラチンというタンパク質です。科学的にみて薬効はほぼ期待できません。
角に薬効があるならまだしも、人間の思いこみ、勘違いによって、クロサイが絶滅の危機に瀕しているというのは、なんとも複雑な心境です。
(ライター ジュン)