フクロテナガザルは、鳴き声が3~4キロ先にまで届くという、テナガザルの一種です。
ここでは、そんな騒がしいフクロテナガザルの生態に迫ります。
フクロテナガザルの生態
フクロテナガザルは、テナガザル科フクロテナガザル属に属する唯一の種です。
フクロテナガザルは2つの大きな特異性のため、ほかのテナガザルと区別されています。
1つ目は、後肢の2つの指が皮膚でつながっていることです。
フクロテナガザルの種小名「syndactylus」は合指「syndactyl」に由来します。
2つ目は、オスが持つ大きな「のど袋」です。
フクロテナガザルのこの「のど袋」は、自分の頭と同じくらいの大きさにまで膨らみます。このことによって、大きな声でほえたり合唱することができるのです。
また、フクロテナガザルは、ほかのテナガザルと同様に樹上生活をしていて、滅多に地上に降りてくることはありません。
樹上での動きはかなり素早く、長い腕を使って枝から枝へと腕渡りします。
そのため両腕の筋肉がよく発達しています。木の枝などをつかみやすいように親指は短く、ほかの4本は長く、てのひらも細長くなっています。
さらには跳躍力にも優れていて、10メートルも跳ぶことができるとのこと。
ちなみに人間の走り幅跳びの世界記録は、マイク・パウエルの8m95です。
フクロテナガザルの生息域
フクロテナガザルは、マレーシアとスマトラ島の森林に生息します。
その生息地から、スマトラフクロテナガザルとマレーシアフクロテナガザルの2亜種に分類する説があります。
なお、フクロテナガザルは、別種のテナガザルと生息地が重なる唯一の種です。
分布が重なっているのは、アジルテナガザルおよびシロテテナガザルです。
フクロテナガザルの大きさ
フクロテナガザルは、テナガザル科のなかでもっとも大型です。
ほかのテナガザルに比べて2倍ほどの大きさです。
体長1メートル、体重は23キロにまで達する場合があります。
フクロテナガザルの食性
フクロテナガザルは、おもに昼間に活動し採食します。
そのなかでも、早朝や夕方は特に活発です。
おもにイチジクなどの果実や木の実、木の葉や花などの植物質を食べます。
また、昆虫のほか小鳥や小動物なども食べます。
フクロテナガザルは、オスとメス、その子どもからなる少数の群れで生活します。平均した行動範囲は、およそ0.23キロ平方メートルといわれています。
ちなみに、日中は活発とはいえ、採食のとき以外は、お互いに毛づくろいなどをして、休んでいることが多いようです。
フクロテナガザルの益害
フクロテナガザルの鳴き声はとても大きく、3~4キロ先にまで届くほどです。
メスはハイトーンボイス、オスはオッサンみたいな声……のように聞こえます。
フクロテナガザルが大きな声を上げる理由は、相手を威嚇することです。
そのほかにも、自分たちの存在を外部に知らせるためや、縄張りを周囲に教えるために鳴くこともあるようです。
動物園のフクロテナガザルは、近くに人間がいると自分たちの縄張りを示すために大声を発します。
人間が敵でないと分かると、近づいてくることもあるようです。
ただし、フクロテナガザルは興奮をすると頭上から尿をかけてくることもあります。
フクロテナガザルを見るときには、いきなり近くには行かず、尿が降ってきてもすぐに逃げられるようにしておいた方がよいでしょう。
傘で防ぐことも、やろうと思えばできるとは思いますが、ただ、飛び散りますので、ほかの方に迷惑にならないよう、そこだけは気をつけてくださいね。
フクロテナガザルと人間との関わり
フクロテナガザルは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにて絶滅危惧IB類に指定されています。
非合法なペット取引が絶滅の危機にさらしている一因ではありますが、実は、マレーシアとスマトラ島での居住地の喪失が最大の要因です。
アブラヤシのプランテーション栽培のために森林が伐採されて、生息地が減少しているのです。
フクロテナガザルはどこの動物園にいるか
フクロテナガザルには、全国のさまざまな動物園で会うことができます。
八木山動物公園(宮城県)https://www.city.sendai.jp/zoo/
千葉市動物公園(千葉県)https://www.city.chiba.jp/zoo/
東山動植物園(愛知県)http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/
天王寺動物園(大阪府)http://www.city.osaka.lg.jp/
神戸市立王子動物園(兵庫県)http://www.kobe-ojizoo.jp/
到津の森公園(福岡県)http://www.itozu-zoo.jp/
九十九島動植物園森きらら(長崎県)http://www.morikirara.jp/
平川動物公園(鹿児島県)http://hirakawazoo.jp/ ほか
フクロテナガザルのまとめ
以上、フクロテナガザルはいかがでしたか?
声の大きさはもちろん、10メートルも跳ぶというその身体能力の高さに驚かされます。
声がオッサンみたいなのは、ちょっとどうかと思いますが、しかし、よく見るととてもチャーミングな顔をしています。
ぜひ、動物園で見てみてくださいね。
(ライター ジュン)