イルカもクジラも海の人気者です。
ところでこのイルカとクジラ、よく見るとよく似ていますよね。それもそのはず、イルカとクジラには生物分類上の差はないのです。
では、なにが違うのでしょうか? 当記事ではその謎に迫ります。
イルカの生態
イルカは「海豚」、「鯆」とも書く動物で、哺乳綱鯨偶蹄目クジラ類ハクジラ亜目に属します。
それらの種のうち、比較的小型の種を総称してイルカと呼んでいます。
ちなみに、古代中国ではネズミイルカ科スナメリ属に属する小型のイルカのことを、スナメリと呼びました。
その漢字表記が「鯆」です。
イルカの多くは海に生息します。
しかし、カワイルカ類のように淡水の川に生息する種類や、淡水と汽水域を行き来する種類もあります。
イルカは頭頂部に呼吸のための独立した噴気孔をもっており、そこから肺呼吸をおこないます。
呼吸の周期は、およそ40秒です。
イルカは眠らない?
イルカは休むことなく常に泳ぎ続けています。
そのことから、かつてはイルカはまったく眠らないのではないかと言われていました。
しかし、どうやらイルカは右の脳と左の脳を交互に眠らせること(半球睡眠)ができるようなのです。
また、イルカは一定方向に回転しながら眠ることが知られています。
この回転方向は北半球のイルカは反時計回り、南半球のイルカは時計回りに回ると報告されています。
ちなみに、右の脳が眠っているあいだは左目をつむり、左の脳が眠っているときは右目をつむりながら泳ぎます。
器用ですよね。
クジラの生態
クジラは、哺乳類のクジラ目と、鯨偶蹄目の鯨凹歯類に属する水生動物の総称です。
そのかたちから、ハクジラとヒゲクジラに大別されます。
ハクジラのなかでも比較的小型の種類をイルカと呼ぶことが多いのですが、この区別は分類上において明確なものではありません。
クジラの脳は人間に近い?
クジラは指導、学習、協力、計画、苦悩することが知られています。
多くのクジラ種の新皮質は、細長い紡錘形神経細胞に存在します。
これは2007年以前はヒト科のみに存在すると思われていました。
これらの神経細胞は、人間の場合は「社会的接触」、「情動」、「判断」、「精神理論」に関連します。
クジラの紡錘形神経細胞は、同様の機能を有すると考えられています。
イルカとクジラ、それぞれの違い
イルカとクジラには、生物分類上の違いはありません。
イルカとクジラよりも、むしろハクジラとヒゲクジラの差のほうが生態的にも形態的にも違います。
しかし、日常語レベルでは両者は別のカテゴリーとして認識され、別の名で呼ばれることが多いです。
これは日本だけでなく、世界的にも同様です。
日本語でのイルカとクジラ
日本では、成体の体長でおよそ4メートルをクジラとイルカの境界と考えることが多いです。
これは定義ではなく、実際にクジラやイルカと呼ばれている種の体長から境界を決めただけです。
当然そのルールに当てはまらない種もあります。
たとえば、コマッコウやゴンドウクジラは、体長が4メートル以下ですが、それでもクジラと呼ばれています。
ただし、ゴンドウクジラはマイルカ科で、まれにイルカとされることがあります。
またイッカク科のシロイルカは、和名に「イルカ」とついていますが、しかし、成体は5メートル以上です。
そしてクジラと見なされることもあるのです。結構あいまいです。
英語でのイルカとクジラ
では、英語の場合はどうでしょうか。
英語のイルカとクジラ――ドルフィンとホエール――の呼称の区別ですが、実は、日本語のイルカとクジラの区別とほぼ共通しています。
たとえば、小型ハクジラ類のうちゴンドウクジラは、英語ではホエールと呼び、クジラとして扱います。
これは日本語と同じです。
ただし、日本語でイルカと呼ばれる種のうち、ネズミイルカ科のものは、英語ではポーパスと呼び、ドルフィンとは区別しています。
イルカとクジラのまとめ
以上がイルカとクジラの違いになります。
ようするに明確な違いはなく、サイズによって名称が変わるようですね。
ちなみに、イルカやクジラにもっとも近い陸上生物はカバ類です。言われてみると、なんとなく似ているような気がしますね。
肌質やそのつぶらな瞳など。
(ライター ジュン)