みなさんもご存知のように、カマキリは鎌状に進化を遂げた前脚で華麗に獲物を捕らえます。
ミズカマキリは、そんなカマキリの水中バージョンともいえるような昆虫です。
今回は、そんなミズカマキリの隠れた魅力をみなさんにご紹介していきます。
ミズカマキリってどんな虫?
ミズカマキリはその名のとおりカマキリのように鎌状の前脚を備えていますが、陸地に生息するカマキリとは異なり、池や沼などの水中に生息する水生昆虫の一種です。
水生昆虫の中ではかなり優れた飛翔能力の持ち主で、生息可能な環境を求めては頻繁に飛び立ちます。
環境への適応力が高く、水田や市街地の人工池、学校のプールや小さな水たまりでも見かけることがあります。
ミズカマキリの生態
ミズカマキリはカメムシ目タイコウチ科に属しており、北海道や沖縄を含む日本全国に生息しています。
陸地に生息している一般的なカマキリがカマキリ目に属していることを考えると、ミズカマキリはカマキリとは全く別種の昆虫です。
ミズカマキリの成虫は体長4.0~5.0cm前後と、カマキリと比べてかなり小ぶりですが、お尻に長い呼吸管を備えており、呼吸管を含めた全長は10cmに達することもあります。
カマキリが鎌状の前脚を使って獲物を捕食するように、ミズカマキリも完全な肉食性です。
小魚やオタマジャクシ、他の昆虫などを鎌状の前脚で捕獲すると、口吻を突き刺して獲物の体内に消化液を送り込み、どろどろに溶かした肉液を啜るという、世にも恐ろしい手口で栄養を摂取します。
これは体外消化と呼ばれ、多くの肉食性水生昆虫やカメムシ、蜘蛛やアリジゴクなども同様の捕食方法をとります。
高い飛翔能力を有する反面、泳ぐのはあまり得意でないため、細長い褐色の体を活かして水中の枯れ枝などに擬態し、獲物が近くを通りかかる機会をじっと待ち伏せして獲物を捕らえます。
ミズカマキリの仲間
国内には、ミズカマキリの他に二種類の近縁種が生息しています。
ヒメミズカマキリは、体長2.5~3.0cm前後と小さく、お尻に備えた呼吸管もミズカマキリほど長くありません。
ミズカマキリと同様に日本全国に分布していますが、ミズカマキリと比べると環境適応力が低く、また個体数も少ないため、自然が豊かな山間部の池沼など限られた環境でしか目にできない希少な昆虫です。
マダラアシミズカマキリは、国内では八重山諸島でしか見ることのできない希少な昆虫です。
外見はヒメミズカマキリに似ていますが、名前のとおり中肢の節に特徴的な黒い斑模様が見られます。
ミズカマキリと人間との関わり
前述したように、ミズカマキリは高い環境適応力を備えているため、わたしたち人間の生活圏内にも多く生息しています。
一生を通じて水中で生活するので直接目にする機会はそれほど多くありませんが、ミズカマキリの幼虫はボウフラを捕食するため、ミズカマキリが多く生息する環境ではヤブ蚊の発生が抑えられるなど、益虫といえる側面もあります。
ミズカマキリの飼育方法
ミズカマキリを飼育する際には、汲み置きしておくか市販のカルキ抜き剤で塩素を抜いた飼育水を、プラケースやフタ付きの水槽などしっかりと蓋のできる飼育容器に10~15cmほどの深さで張ってやります。
ミズカマキリは泳ぎが苦手なため、木の枝や水草などの足場がないと溺れてしまいます。忘れずに用意しましょう。
ミズカマキリは活きている(動く)餌しか食べようとしませんが、動きが鈍く力もそれほど強くないため、小魚など動きが素早い獲物は捕まえることができません。
少し大変かもしれませんが、小型の水生昆虫やオタマジャクシなどを適宜採取して与えるようにしてください。
ミズカマキリが獲物を捕らえて捕食する様子はなかなかに迫力があり、一見の価値があるといえます。
みなさんも是非この機会に、お近くの水辺を覗いてみては如何でしょうか。
あなたの近くにも、ミズカマキリが生息しているかもしれませんよ。
(ライター:國谷正明)