ヤニサシガメというサシガメをご存知でしょうか?

べとべとしたヤニを身にまとった珍しいカメムシ。

今回はそんなヤニサシガメの特徴や見分け方について詳しくお話しします。

ヤニサシガメの特徴と生態

ヤニサシガメは朝鮮半島、中国、日本では本州、四国、九州に分布主にアカマツやクロマツに生息します。

体長は12~16㎜、黒色で光沢があり、体表は樹脂様の分泌物に覆われ、そこから名前もついたと言われています。触角と脚に黄白色紋があり、触角は途中から2つに折り曲げることができます。頭部は長く複眼は東部中央より前方に位置し、目の後部は丸みが強くなっています。腹部の側縁は大きく張り出し波状です。

 

幼虫は松、スギなどの樹皮下に群生して越冬し、5月頃に羽化します。

触角を折り曲げることができるのはこの集団越冬する際にコンパクトに収納するためなのだとか・・。

 

エサは昆虫のなどの体液で特にマツケムシには天敵です。

都市化と平行して侵入してきたヨコヅナサシガメとの生存競争に敗退し現在では低山地などで見出されるだけになってしまいました。

ヤニサシガメのヤニの正体

ヤニサシガメのヤニは体内から自然と湧き出るものではなく、自ら樹木のヤニの出るところに移動し、自分で体に擦り付けているものです。

前脚の先端部で器用にヤニをこすりとり、前脚の先端部による中足の大腿部へこすりつけた後に中足の大腿部で後脚の大腿部とすねへこすりつけます。

 

次に中脚の大腿部で前脚の大腿部と脛へこすりつけ、最後に後脚のすねで腹部側面と背面へこすりつけます。

この作業を約1時間かけて念入りにおこなっているのだそう。

 

ヤニをつける理由には2つの説があり、一つめはエサとなる虫がくっついて体液を吸いやすくするため、そしてもう一つは越冬する時仲間の幼虫とくっつき合って体温を高めるためだそう。

 

体からヤニがとれてしまったヤニサシガメはだんだんと弱っていくと言われています。

また、幼虫の孵化に松脂が不可欠だということやメスには松脂を溜め込む器官があって腹部末端から松脂を吸い込むということも言われています。

いずれにしてもヤニサシガメにとって松脂はなくてはならない存在のよう。

ヨコヅナサシガメとヤニサシガメの見分け方

ヨコヅナサシガメはカメムシ目サシガメ科ヨコヅナサシガメ属に分類され、中国から東南アジアにかけて分布し、日本には球種に移入し、現在は関東地方まで分布を拡げているカメムシです。

 

幼虫も成虫もサクラ、エノキ、ケヤキ、クワ、ヤナギ、クスなどの大木の樹上で生活します。

成虫の体長は16~24㎜で日本産サシガメ科最大級。

 

体色は光沢のある黒色で頭部が細長。腹部の縁には白色で各説に大きい黒班を持つ腹部結合板が葉状に拡がり、翅の外側に張り出して反り返り、側縁は僅かに波打っています。

腹部結合板の配色は幼虫期では白黒が単純に交互に並びますが、成虫では黒斑が近縁まで達しないのでピアノの鍵盤状になり前翅がはみ出していているので、それが相撲の化粧回しに見えることから名前がついたとされています。

 

体の黒色部は羽化直後の外呼格が硬化する前の段階では鮮やかな赤色をしています。

両者は体色がやや似通っていますが、見分け方はヤニの有無と体長。ヨクヅナサシガメにはヤニがありませんし、体長もヨコヅナサシガメの方が大型なので見分けるのは比較的簡単です。

ヤニサシガメのまとめ

ヤニサシガメは朝鮮半島、中国、日本では本州、四国、九州に分布主にアカマツやクロマツに生息している。

体長は12~16㎜、黒色で光沢があり、体表は樹脂様の分泌物に覆われている。

ヤニサシガメのヤニは樹木のヤニの出るところに移動し、自分で体に擦り付けている。

(ライター ナオ)