夏は甲虫の季節です。クワガタ、カブトムシ、カナブン。
カナブンはコガネムシ科の甲虫です。黒いカナブンもいるのだそうです。
クロカナブンの外見と種類など
カナブンは前翅の色彩変異が多い昆虫です。見かけやすいのはメタリックなグリーンやブルーなど、タマムシ色のような色のカナブンです。
カナブンは明るいうちに行動する昼行性なので目立つのでしょうか。
しかしクロカナブンの体色は黒です。頭部・胸部・腹部に分かれ、3対の脚があります。
カナブンは丸みのある体つきに見えますが、クロカナブンはお尻の方が締まっておりすっきりしたフォルムである事が多く、光沢があります。
左右の前翅の間に逆三角形のようなところがあるのも特徴です。
クロカナブンの体長は約25mm~30mm程度です。
クロカナブンの生態について
クロカナブンは近年姿を見かけなくなり、はっきりした生態はよく分からないと言われています。
クロカナブンの卵はクズ群落の土地の表面に積もった腐植質の中に産卵されます。
クズ群落というのは、マメ科のクズという植物の群生地のような場所です。
昔は関東地方の武蔵野方面などにも見られた光景ですが、現在では山陰地方の岡山県などに見られるやや珍しい地域になっています。
クロカナブンの卵の大きさは2,7mm程度です。幼虫時代は蛹室を作るようですが、クロカナブンは他のカナブンより繁殖速度が遅く、あまり移動しないともされます。
しかし繁殖速度が遅いという事は、個体数の減り方はそこまで早くもないという事かも知れません。
クロカナブンの寿命は成体の姿になるとひと月ほどのようです。
クロカナブンの幼虫の外見的特徴と移動方法
クロカナブンの幼虫は白い地虫のような姿です。
クロカナブンの幼虫の外見の特徴は、皮膚が薄くクロカナブンの幼虫の中の黒っぽい色が透けて見える事、頭部が明るい茶系で頭が胴体部分にめり込んだように小さい事などです。
よく見ると微細な毛が生えています。
皮膚が非常に薄く頭部の色合いや顔つきもだいぶ印象が異なります。
ムチムチしていてよく食べそうです。クロカナブンの幼虫の餌は朽ちた木や土などです。
初夏になると土の中から出てくる事があります。コガネムシの幼虫と実に似ていますが、決定的な違いはクロカナブンの幼虫の独自の移動方法です。
クロカナブンの幼虫はひっくり返った格好で背中で土の上や樹株の上などを移動します。
体をまっすぐ縦にするのも特徴です。巧みに体をくねらせる様子は、周囲が茶系の土や緑の森の中でなければ泳いでいるようにも見えます。
飛ぶクロカナブン
成体になったカナブンは飛翔します。
飛ぶときにはヴーン、という音がします。
この飛び方もカナブン独自のものです。
飛ぶ甲虫というと硬い前翅をパカッと開け下から翅を出して飛ぶという種が多いですが、カナブンの飛び方は前翅を全開にすることなく、体の側面の隙間から翅を広げて飛ぶのです。
クロカナブンの鞘翅は茶系のようです。
クロカナブンを含め甲虫たちの硬い前翅は身を守るものとして機能します。
一方、飛翔能力という点では硬い前翅は重く邪魔になってしまいそうです。
前翅を開けて飛んだとしても飛行中に体のバランスを保つのは難しいのではないでしょうか。
ところがクロカナブンのように前翅を全開にせず翅を出して飛ぶとなると、ふらつかずに突然飛び立つ事も可能です。
クロカナブンの生息地や出現時期
クロカナブンの成体の餌は樹液です。クロカナブンが樹木に集まるのはクワガタなどの出現が落ち着いた8月末頃と言われています。ごく短い期間の日中です。クロカナブンが夏の甲虫の中でも地味に思えるのは出現する期間が短い事、クワガタやカブトの時期が過ぎ去り人々が夏の虫の時期は終わったかのような気になり忘れてしまうからかも知れません。クロカナブンは昼行性であり、黒くて明らかにカブトムシやクワガタなどと異なる虫というと、ハナムグリなどと見間違えやすいのです。実際にクロカナブンの個体数は減ったのではないかと思われる情報もあります。特に四国地方などでは自治体によりレッドデータ入りしているところもあるようです。クロカナブンの生息地は北海道を除く本州地方とされていますが、西日本、四国地方などではほぼ姿を見なくなったと言われているようです。
クロカナブンの集まる樹や樹液について
そもそもクロカナブンはどのようなところで見つけやすいのでしょうか。昆虫の出現する箇所にはその虫が好む餌があるはずです。クロカナブンの成体は特にクヌギの樹液を好むようです。クヌギの木は樹高が高く、大きく育つと20mを超える事もあります。ブナ科のクヌギは国内では北海道以南、本州では岩手県より南部など比較的温暖な土地に分布する落葉高木樹です。葉は大きく、幅は5cmほど、長さは20cm~25cmほどで、樹肌は灰色っぽく見えます。クヌギの木が樹液を出し始めるのは5月下旬から7月頃にかけての事が多いとされますが、クロカナブンが姿を見せるのは8月下旬頃のようです。クヌギの木の樹液は9月頃になるとあまり出なくなる事が多いようなので、その前あたりがクロカナブンを発見できそうな時期です。しかも日中です。樹液を出す樹は他にコナラなどもあります。同じような場所にある樹でも樹液の量がだいぶ違ったりします。樹液がなぜ出るのかについて、最近ではボクトウガという蛾の幼虫が中を食い荒らすからだと言われています。ボクトウガの幼虫は樹に穴を開け、樹液に集まった虫を捕食します。捕食対象になるのは体が柔らかいもので、クワガタやカブト、クロコガネなどは捕食されません。樹液を出す樹のまわりにはいろいろな虫がいるようです。
クロカナブンの特徴と見分け方
- クロカナブンの成体は黒く、夏の8月末頃の日中に樹液が出ている広葉樹付近で発見できます。
- クロカナブンの幼虫は白くコガネムシの幼虫と似ていますが、背中で移動します。また、頭が小さい事も外見でわかる特徴です。
- クロカナブンは今ではレアな昆虫とされています。発見できれば知られざるクロカナブンの詳細な生態を間近に知る事も可能かも知れませんね。
(ライター:おもち)