見事な擬態で人間の目をも騙しかねないナナフシ。トゲナナフシもそんなナナフシの一種。

今回は忍法隠れ蓑の術を会得しているトゲナナフシについて、その特徴や他のナナフシとの見分け方について詳しくお話しします。

トゲナナフシの特徴

トゲナナフシは日本では本州、四国、九州に分布しています。

体長は57~75㎜で体色は黄褐色~黒褐色。緑色を帯びることもあり、体にはトゲがあります。

 

普通のナナフシと比べるとややずんぐりとした体型をしていて、触角は体長の半分ほどの長さがあり、全体的にとても大型です。木の枝に擬態し身を守ります。

棘は触っても痛くなく、特に毒があるわけでもないので防衛のためというよりはこれも擬態の一種なのかもしれません。

 

湿り気の多い林の地表で見られ、秋が深まって気温が下がると日当たりの良い山道にも出てきます。

メスの単為生殖によって繁殖していて、卵は硬い殻に覆われていて、卵の殻もまた植物の種に擬態していると言われています。卵の大きさは3㎜程。卵の状態で越冬します。

 

翌春に卵から孵化する幼虫は10㎜程もあり、卵の大きさに比べると非常にアンバランス。

孵化した幼虫は草食でクヌギやナラ、ヤナギなどの葉を食べるようですが、飼育する時位にはバラやハイビスカスなども好んで食べるようです。

昼間はほとんど身を沈めて動かずにいますが、夜になると一気に葉に貪りつきます。

 

擬態意外に防衛手段を持ちませんが敵に襲われた時には自らの脚を機って逃げる自切行動を行います。

ただし、若い個体の内は再生能力がありますが、脱皮の回数と共にその再生能力は衰えてくるのだとか。

ナナフシの分類

ナナフシは世界に2500種類程いると言われていて、現在日本でも4亜科に分類されていますが、世界的にその分類方法が見直されようとしています。

現在、日本のナナフシはコブナナフシ亜科、ナナフシ亜科、トビナナフシ亜科、ヒゲナナフシ亜科に分かれ、その中でトゲナナフシはヒゲナナフシ亜科に分類されます。

 

トゲナナフシのように体にトゲのあるナナフシは日本には存在していませんが、同じヒゲナナフシ亜科に分類されるナナフシの特徴とトゲナナフシとの見分け方について見ていきましょう。

エダナナフシとトゲナナフシの見分け方

エダナナフシは本州、四国、九州に分布し、体長は70~100㎜程。体色は緑色から灰褐色、黒褐色まで変異が多いのが特徴です。

ナナフシによく似ていますがナナフシよりも触角が長いのが特徴です。

 

サクラやヤマブキなどの樹木の葉をえさとし、発生時期は5~11月です。

トゲナナフシとは体表の棘の有無で区別がつきますし、トゲナナフシに比べると体長が大きめです。

ヤスマツトビナナフシとトゲナナフシの見分け方

ヤスマツトビナナフシは本州、四国、九州に分布している体長47~57㎜のナナフシです。体色は全体に緑色で翅を持ち飛ぶことのできる珍しいナナフシです。

ヤスマツトビナナフシとトゲナナフシは体の棘の有無で区別がつきますが、同時に翅の有無も判断材料になります。

 

ちなみにトビナナフシとは名前の通り翅の有るナナフシで、他にも北海道から沖縄まで広く分布するトビナナフシ、奄美大島や沖縄本島、久米島などに分布しているリュウキュウトビナナフシ、生態についてあまり詳しくわかっていないシラキトビナナフシなどの種類があります。

トゲナナフシのまとめ

体にたくさんの節があることから名づけられたナナフシ。決して節が7つあるという意味ではなく、実際に7つよりも多いものがほとんどだそう。

トゲナナフシは他のナナフシと明らかに棘があるという点で見分けられます。また他のナナフシよりも体が太めなのもポイント。

(ライター ナオ)