生物の色々なパーツの機能を参考にした人工物は多くあります。
人間にとって大切なデザインのヒントは生物からもらっているといっても過言ではないほど。
ハサミムシの羽もまた私たち人間に大きなヒントをくれた機能のひとつ。
こういった生物の機能を模倣することで新しい技術を産みだす学問の事をバイオミミクリ―というのだそうですが、今回はそんなハサミムシの羽についてのお話しです。
ハサミムシの特徴
ハサミムシはハサミムシ目の昆虫の総称で日本では地上の物陰に隠れていることが多い昆虫です。
一般的に細長い体型で翅の無い種類もいます。
尾端に稼働する角質の鋏を持っていて、それが名前の由来にもなり、捕食屋天敵からの防衛、闘争などに使われます。
肉食性が強く草地や砂地などでダンゴムシ、鱗翅目の幼虫などを鋏を利用して捕食します。
草食のものや洞窟でコウモリの糞を食べるもの、寄生するものもいて最大種はセントヘレナオオハサミミシで尾毛を含めると84㎜あったと記録されているがおそらく2014年に外来種による捕食で絶滅したと判断されています。
ハサミムシの羽
ハサミムシの前羽は短くて革質、後ろ羽は薄くて大きく、静止時にはこれをたたんで前羽の下にしまい込むので腹部の大部分が露出します。
飛翔能力のあるハサミムシはこの後羽を使って飛びますがハサミムシには前羽だけで後羽が退化している種類も多く、それらは飛ぶことができません。
飛べるハサミムシは静止時、後翅を折りたたんだ時に前羽の下から一部がはみ出すので後ろ羽の退化した飛べない種とは簡単に区別することができます。
ヨーロッパハサミムシの羽
ヨーロッパハサミムシの羽は静止時、実に見事に折りたたまれて収納されています。
羽を広げ飛んでいる最中はしっかりと羽にロックがかかり、安定した飛翔が出来るようにもなっています。
この相反するかのような2つの機能が備わっているハサミムシの羽。
実は羽全体にわたって分布しているタンパク質に秘密があったということが最近のスイスチームの研究で明らかになりました。
そのタンパク質の名前はレシリン。
レシリンによって羽が折りたたまれる内側に多く集まることによって飛んでいる時は山折りになって固定されている結合部分を一気に谷折り側に反転させることができ、綺麗に収納できるというわけ。
たたんだ時の羽のサイズは広げた時の10分の1.その一連の動作を実に短時間で行ってしまえるのがレシリンの影響なのだそう。
ハサミムシの羽の応用
このようなハサミムシの羽の構造からヒントを得て人間が3Dプリンターで作ったスプリング折り紙グリッパーは閉じた時にもものを掴むことができ、開いたときと掴んだ時の両方の状態で固定できることが確かめられました。
また掴んだ状態では自分の重さ程度のものを支えることも確認で木、これにバネのような機構をくわえれば高速展開やあらかじめプログラム可能な自動ロックなどの機能を導入できると考えられています。
具体的には折り畳み式の電子機器やテント、地図、収納機構を持つ荷物など。
また宇宙開発の分野では打ち上げのためのロケットスペースや重量、エネルギーを提言出来て広がったアンテナを固定するための余計な駆動機構や器具が不要になる可能性があると考えられています。
ハサミムシの羽のまとめ
能ある鷹は爪を隠す・・・・ではないのだけれど、思わずハサミムシの羽もそんなことを思ってしまいます。
こんなすごい羽をあんな狭い場所に収納しているなんて!!しかもそこには見事なまでの機能が。
科学技術のような大それたものとは天と地ほども違うけれど、私も押し入れの収納をもう少し見直してみようかしら・・・!?って違うか!!!
(ライター ナオ)