春になり、一斉に新緑が萌え花が咲き始めると、昆虫たちの動きも活発になります。そのひとつがチョウです。
白、黄、紫など色とりどりのチョウチョがひらひらとお花を目指して集まってくる姿には思わず目を奪わます。
今回はオレンジ色のチョウ、ヒメアカタテハの特徴を調べ、その見分け方を紹介します。
ヒメアカタテハとはどんなチョウ?
ヒメアカタテハの成虫の前翅の長さは3センチ前後で、黒字に鮮やかなオレンジ色の斑紋が目立つチョウです。
南極大陸を除くすべての大陸に分布しており、もっとも分布範囲が広いチョウのひとつです。
畑や人家のまわりの開けた明るい草地に多く見られます。
ヒメアカタテハの生態
ヒメアカタテハが見られる時期は、4月から11月ごろまでですが、夏から秋にかけて多く見られるようになります。
ヒメアカタテハは寒さに弱く、日本の北限地は房総半島といわれています。
ただ移動性が強く、越冬できない寒い地方にも群を作って移動することがあるので、それらの地域でも見られることがあります。
ヒメアカタテハの成虫は、幼虫の好むヨモギなどのキク科の植物に産卵し、孵化すると幼虫は葉を丸めたり白い糸状の分泌物で巣を作って過ごします。
幼虫は、黒くてトゲトゲのある毛虫で、齢を重ねてやがて蛹になり羽化します。
ヒメアカタテハの越冬
タテハチョウの仲間は成虫で越冬するものが多いのですが、ヒメアカタテハは房総半島以南の暖かい地域では成虫で越冬することができますが、寒い地域では、巣のなかで幼虫のまま越冬すると考えられています。
寒さに弱いので、成虫越冬でも幼虫越冬でも強い寒気がくると死滅するため、春先に見られる個体は少なくなってしまいます。
ヒメアカタテハの移動
ヒメアカタテハは移動性が強く、日本でも、北限地の房総半島以北にも移動することがありますが、ヨーロッパではさらに大移動をすることが知られています。
モロッコのヒメアカタテハは、地中海を渡って1日に160キロメートルも飛翔移動し、フランスやイギリスまで旅をするそうです。
年に一度、3月ごろに出発し、4月・5月にモロッコにもどるのですが、ヒメアカタテハの寿命は3週間なので、1個体が往復することは不可能です。
群れて繁殖生活をしながら移動していることになります。
なぜ移動するのかというと、その理由は、幼虫に卵を産み付ける天敵である寄生バチから逃げるためだといわれています。
キタテハ、アカタテハ、ヒメアカタテハの見分け方
タテハチョウのよく似た仲間、キタテハ、アカタテハ、ヒメアカタテハの見分け方をまとめてみました。
ヒメアカタテハ
大きさはアカタテハより一回り小さく、黒字にオレンジ色の斑点があるのですが、アカタテハよりオレンジ色の部分が多くあります。
畑や人家のまわりの開けて明るい草地で多く見られ、成虫は花のみの蜜を吸います。
寒冷地ではあまり見られません。幼虫はヨモギに巣を作ります。
アカタテハ
ヒメアカタテハよりやや大きく、前翅のオレンジ色の部分が少なく、後翅には付け根の部分に斑紋がなく黒褐色の部分が目立ちます。
北海道から沖縄まで分布。林などの周りの草地に見られ、花だけでなく、樹液、腐果などにも集まります。イラクサに産卵します。
キタテハ
初夏から真夏にかけて現れる夏型は、黄色の地色に黒い斑点、秋に現れてそのまま冬を越す秋型はオレンジ色の地色に黒の斑点があります。
ヒメアカタテハやアカタテハよりやや小ぶりです。
北海道から九州にかけて分布が見られ、開けた草地を好み、花だけではなく、腐果などにも集まります。
幼虫はカナムグラを好みます。
まとめ
タテハチョウの仲間3種類の見分け方は、キタテハは黄色やオレンジ色の地に黒い斑紋、アカタテハとヒメアカタテハは黒地にオレンジ色の斑紋があるけれども、ヒメアカタテハのほうがオレンジ色の部分が多い、ということになります。
さらに幼虫の好む植物にも違いがあるので、周辺にどの植物が多いかによっても見分けられそうです。
今度オレンジ色のチョウを見かけたら、ぜひ観察をしてみてください。
(ライター sensyu-k)