よく見かけるオレンジと黒のまだら模様のチョウ。

色合だけ見ると一瞬蛾のようでもあり、とても綺麗とは言い難いものもありますが、れっきとしたチョウ。

今回はそんなアカタテハとよく似たヒメアカタテハについて詳しくお話します。

アカタテハの特徴

アカタテハはチョウ目タテハチョウ科に分類されるチョウの一種です。翅に鮮やかな模様があるタテハチョウで日本では秋によく見られます。

インドからオーストラリア、日本まで広く分布していて、森林の周辺の日当たりの良い場所に生息し、農村や都市部でもよく見られます。

成虫の前翅長は3.5㎝程で前翅の表側に鮮やかな橙色の帯模様が入り、これが名前の由来にもなっています。

前翅の先端は黒く、白色の斑点が点在し、後翅の表にも橙色の縁取りがありますが他はくすんだ褐色をしています。

 

翅の裏側はほぼ灰褐色で白くて細い網目模様があります。

幼虫の体には沢山の突起がある毛虫で小さい幼虫は全身が黒いのですが、大きくなると突起が黄白色になります。

個体によっては体色に紫色を帯びるものもいて触れても問題はありません。

アカタテハの生態

アカタテハの成虫は年に数回発生し早春から晩秋まで見られますが個体数は夏に少なく飽きに多いのが特徴です。

冬は成虫で越冬するので早春に見られる越冬個体は翅の一部が欠けているものも多く、不規則な軌道を描きながら速く飛びます。

 

花の蜜や熟した果実の汁を吸い、更に獣糞や樹液にも頻繁に集まります。

幼虫の食草はカラムシ、ヤブマオ、イラクサなどで稀にケヤキを食べることもあります。

 

幼虫は食草の葉の付け根を齧って葉の表を内側に左右を糸で綴り、閉じ合わせた巣をつくる習性があります。

蛹になる時には羽化を見越して葉の下端を3分の1ほど開けた巣を作り、その中で蛹になります。

ヒメアカタテハとの見分け方

アカタテハはヒメタテハとよく似ています。

生態はほぼ同じですが生息域は微妙に違っていて、アカタテハが林周辺の草地で見かけるのに対しヒメアカタテハは人家や畑の周りの開けて明るい草地を飛んでいます。

 

模様にも違いがあり、アカタテハは後翅に斑紋がないのと前翅の黒い部分の面積が大きいのが特徴。ヒメアカタテハは同じ部分に斑紋模様が入ります。

また、アカタテハは花以外の樹液や獣糞、腐果等の汁も吸いますがヒメアカタテハは花以外には集まりません。

更に大きさにも違いがあり、ヒメアカタテハの方が一回り小さいのですが、これは相対的な話になってしまいますので普段見慣れない人には区別がつきにくいかもしれません。

ヒメアカタテハの特徴

ヒメアカタテハは南極大陸を除くすべての大陸に分布していて、現在最も分布の広いチョウの1つとされていますが、オーストラリアでの分布は西部の一部のみに限られています。

前翅長は3㎝前後、前翅の先端は黒字に白の斑点、前翅の中央部には橙色地に黒の斑点があり、触角の先端は白くなっています。

 

移動性が強く、越冬できないような冷帯屋寒帯地方でも夏から秋にかけて侵入や発生を繰り返し、日本でも秋に個体数が増えます。

成虫は日当たりの良い草原に生息し、田畑の周辺などでよく見られ、不規則な軌道を描きながら速く飛びまわります。

 

オスはなわばりを作り、田畑のあぜ道や林道の上などの一定の区間を往復したりします。

幼虫はキク科のハハコグサ、ヨモギ、ゴボウなどを食草とし、本州では成虫で越冬すると言われている一方、成虫は越冬能力を欠くという実験結果も出ています。

温暖化によって北上しつつある種の1つで、かつては成虫越冬とされていましたが、現在温暖な地域での越冬態は不定です。

(ライター ナオ)