魚の口の中からひょっこりと顔を出すウオノエ。
その姿を可愛らしいと思うか気持ち悪いと思うかはその人の感性の匙加減。
今回はそんなウオノエについて詳しくお話していきます。
ウオノエの特徴と生態
ウオノエはウオノエ科に分類される寄生虫。魚の舌を切って中に侵入するため、舌切り虫ともいわれています。
魚の口からのぞくウオノエの姿は思わず可愛らしく見えてしまいますが、その方法や手段はかなり強引なもの。
ウオノエは宿主となる魚の後を追い、まずは鰓に取り付き、そこから口の中に侵入して前足の爪から体液や血液を吸うと考えられています。
口内にたどり着いたウオノエはまずは宿主である魚の舌の血液を吸うことで舌全体を委縮させて取り除きます。
邪魔になった舌が消えた後はその付け根にしっかりとくっついていて下のようにふるまって身を守りながら魚たちの体液や血液を吸ったりしながら成長します。
ウオノエに関して種類や宿主などについて不明な点が多いのが実情。
ウオノエ類の寄生は魚類に貧血、栄養障害、発育阻害などを引き起こすので本科による漁業対象魚類の被害が世界各地で報告されています。
宿主の魚が死ぬとウオノエはその場を離れるので、釣った魚を入れておいたクーラーボックスの水の中で泳いでいるのを見つけることもあります。
スーパーなどで売られている魚でも稀に口からウオノエがのぞいている場合もあり、誤って食しても人に寄生することはありません。
日本ではウオノエの事をタイノエと読んだりもします。
江戸時代ではウオノエやタイノエは縁起物として取り上げられていて、鯛之福玉とされていたようです。
ウオノエもタイノエも性転換が自由に出来る便利な生き物。
先に魚の口の中に入ってきた方がメス、痕から入ってきた方がオスとなってペアを作ります。口の中で2匹が仲良く見つかることも多く、寄生だけでなくしっかりと繁殖も魚の口の中で行ってしまいます。
しかも、大きな魚の口には大きなウオノエやタイノエが、小さい魚の口にはそのサイズに合ったウオノエが生息しています。
ウオノエもタイノエも口より奥に行くことはありませんので、魚を食用にする時はしっかりと頭を落として調理するようにします。
深海生物だったウオノエ
独特の寄生生活に適応した特殊な形態と生活サイクルを備えているウオノエは進化生物学などの分野では研究対象として注目されています。
更に、愛媛大学や総合地球環境学研究所などの研究チームがまとめた報告ではウオノエはもともとは深海生物だとされています。
世界で400種類が確認されているウオノエ。国内外で採取した29種類についてミトコンドリアDNAによる系統解析を実施し、既にデータがあったものと合わせて計52種類を解析したところによると、進化の過程で禁煙のグソクムシ類と最も古く分岐したのは深海に生息する洞穴後に寄生するウオノエでした。
この祖先から浅海に生息するマダイ、淡水に生息するカワススメなどの魚に寄生する種類へと分岐していったという。
深海で生まれたウオノエ類は寄生する魚を次々に変えながら深海から浅海、川へと生息域を広げてきたのではないかとされています。
食用としてのウオノエ!?
実はウオノエは食べることもできます。
見た目のインパクトが強いので、とても食べる気持ちにはならないかもしれませんが、一応エビやカニと同じ甲殻類。
流行りの昆虫食に近いノリで、素揚げにしてたれなどをかけて食べると身のないえびの唐揚げのような食感だそうです。
ただし、それほど濃厚なものではないのでたれが美味しいものであることが条件。また、3~4匹食べれば十分満足だそうです。
興味のある方はぜひどうぞ!
(ライター ナオ)