かなり不気味な蛾、クロスジヒトリを知っていますか。
パット見は特にキモイわけではなりませんが、実はある行動を起こす時には何ともグロテスクな姿に変身してしまうのです。
今回はそんなクロスジヒトリについて詳しくお話します
クロスジヒトリの特徴。
クロスジヒトリは東南アジアやオーストラリアの一部に生息している蛾で、成虫は黒っぽい筋が特徴的な茶色い前翅をもっています。
日本でも沖縄諸島、石垣島や西表島で見ることが出来るほど、それほど珍しい蛾でもないようです。
後翅は白く、腹部は赤や黄色っぽい色をしています。
オスの腹部の先端にはヘアペンシルという、膨らませると腹部よりも長くなる器官が4本あり、ここからフェロモンを分泌し、繁殖期にはメスをおびき寄せます。
羽を広げた時の大きさは4㎝程ですが、触手を伸ばすとその倍ほどの体長になります。
話題になったクロスジヒトリ
クロスジヒトリが最近話題になったのは、インドネシアのジャワ島北部のスマランである人が自宅のタイルの床の上でクロスジヒトリが4本ンオ触手をだしてびくびくと持ち上げながらはい回っていた様子を、動画と写真で投稿したところ世界中の20万人が即座に反応し、これを投稿、共有したのがきっかけ。
結局はそれほど珍しい蛾ではなく比較的よく見る蛾だったのだが、この時は同種以外の虫に対して猛アピールをしていたよう。
ちなみにクロスジヒトリは漢字で書くと黒条灯蛾。
クロスジヒトリの放つフェロモンの成分
クロスジヒトリの放つフェロモンはヒドロキシダイナイトと言われ、ピロリジジンアルカロイドが主成分になっています。
ピロリジジンアルカロイドは肝毒性があり、鳥などの捕食者はこの成分を持っている昆虫は食べないのだそう。
幼虫の時期にピロリジジンアルカロイドが含まれたエサを食べることができれば、オスのヘアペンシルは発達し、香りを発しますが、ピロリジジンアルカロイドが含まれた食事が出来ない場合、ヘアペンシルは大きく成長せず、香りも放ちません。
ピロリジジンアルカロイドが含まれるのはカッコウアザミ、オオカッコウアザミ、ヒマワリヒヨドリ、ベニバナボロギクなどの多くの植物で被子植物の約3%に含まれていると言われています。
また、穀類へこの成分を含んだ種子が混入し、長期間にわたって摂取すると死亡を含む重篤な健康被害が出ることも海外では報告されています。
国内においては健康被害を未然に防止するためにコンフリーとその加工品な販売等が禁止されていますが、実際にはキク科のフキ属やツワブキ属、コウモリソウ属、アザミ属、サツマイモ属、サンシチソウ属、ムラサキバレンギク属、ペリカリス属、ヒレハリソウ属、ハマベンケイソウ属、ボラゴ属にも含まれています。
他にも可食の山菜や野草として認知されている首都その同属異種にもピロリジジンアルカロイドが含まれていることが確認されています。
現在まで日本国内でフキなどを食べての健康被害は報告されていませんが、健康食品や煎じ茶として食利用するのは危険だと考えられています。
同じピロリジジンアルカロイドを持つ昆虫にトンボマダラチョウという蝶がいますが、この種もまたオスが交尾したい時にヘアペンシルを出してメスをおびき寄せ、その気にさせるフェロモンを分泌します。
トンボマダラチョウのメスはこのピロリジジンアルカロイドをより多く持っているオスとの交尾を好むのだそう。
普段日常的に山菜として利用する植物にピロリジジンアルカロイドは含まれているので、十分なあく抜きなどをしてから食用にしたいもの。
皆さん、くれぐれも山菜の調理方法と食べすぎにご用心を。
(ライター ナオ)