ヤブランとは、庭の片隅にひっそりと植えられていることが多いので、人々の記憶には残らない植物といえるかもしれません。
どんな花が咲くのかとか、どんな実がなるのかとか、あまり興味をもって眺めてみたという方はなかなかいないのではないかと思います。
ここでは、お庭の主役を支える名脇役ともいえるヤブランにスポットを当ててみます。
ヤブランとはどんな植物?
ヤブランの原産地は日本など東アジアで、林間などの地面に普通に見られる常緑性の多年草です。
草丈は20~40cm、一年中ほぼ同じ草姿を保っており、丈夫で手のかからない植物です。
耐寒性・耐暑性両方をもち、湿潤・乾燥にも耐えられ、多少花付きが悪くなることがありますが日陰でも丈夫に育つなど幅広い環境に適しています。
水やりも植え付け時以外はほとんど不要です。さらに病虫害にも強く、土質もあまり選びません。
ヤブランの特徴
ヤブランをもう少し観察してみましょう。
【葉】革のような質感で、細長くしなやかで固い葉をもっています。
【花】8~10月に細長い穂がでて、直径が4mmほどの小花をみっちりつけます。花色は、青紫や白が多くみられます。
【実】花が終わったあと、黒っぽい小さい実をたくさんつけます。
【根】豆粒大の塊ができますが、昔は「麦門冬」として滋養強壮、解熱の薬として用いられていました。
【種類】日本には、ヤブラン、ヒメヤブラン、コヤブランが自生しています。園芸品種としては、斑入り、花色が異なるものなどが20種ほど流通しています。
ヤブランの「実」とは?
ヤブランは、庭の樹木周囲の下のほう、主役の周りに脇役として植えられていることが多いので、花が咲き、実が成るということをご存知ない方も多いと思いますがが、ひそかに実をつけているんです。
穂先に小花が密集して咲いたあと、晩秋から冬にかけて、黒紫色の実をみっちりと実らせます。
花が咲き終わったあとにも素朴な味わいをみせています。
よく観察してみると、ヤブランは四季折々に違った姿でお庭を彩ってくれているんです。
ヤブランの花言葉
ヤブランの属名は「リリオペ」といいますが、これはギリシャ神話に登場する泉の妖精「レイリオペ」に由来します。
さて、ヤブランの花言葉は、「謙虚」、「隠された心」、「忍耐」です。
謙虚:樹木周りの下や草陰でひっそりと咲き誇っている姿から。
隠された心:たくさんの長い葉のなかで隠れるように花をつける様子から。
忍耐:日の当たらない場所でも丈夫に育っているところから。
ヤブランは「蘭」の仲間?
ヤブランという名前には「ラン」がついていますが、蘭ではなく、ユリの仲間でキジカクシ科に属しています。
ヤブランにとてもよく似ている植物に、「リュウノヒゲ」、「オリズルラン」がありますが、キジカクシ科の仲間たちです。
どれも細長い葉っぱが特徴の植物ですが、どんな違いがあるか比べてみましょう。
【ヤブラン】葉や花もリュウノヒゲそっくりですが、リュウノヒゲよりも黒い実をつけます。
【リュウノヒゲ】花はヤブランより大きく下向きに咲き、ヤブランより明るい色、コバルトブルーの実をつけます。
【オリズルラン】ランナーと呼ばれる伸びた花の茎に折り鶴のように小さな子株をつけます。やや寒さに弱いので観葉植物として室内で育てることが多い植物です。
お庭でのヤブランの活かし方
ヤブランは寄せ植えにはほとんど使われません。
和風の庭や自然風の庭によく合います。
とくに日陰に強いので、日当たりがあまりよくない庭や他の植物があまり育たないようなところにも植えてみるとよいでしょう。
グランドカバーにもでき、またあまり広がらないので、庭と他の部分の境界線をつくるためにも使用できます。
どちらかというと和風のイメージですが、斑入りの葉をもつ品種は、日当たりのよい庭や洋風の庭に植えても違和感を感じません。
まとめ
どちらかといえばお庭の脇役というイメージの強いヤブランですが、丈夫で初心者にも育てやすいおすすめの植物です。
お庭の前面や玄関までのアプローチの両脇に植えるとよいでしょう。
春や夏には細い葉っぱが涼しさを演出し、秋にはたくさんの青紫の小花が素朴ながらも精一杯咲き誇り、晩秋には黒紫色の実が光り輝き、四季折々に異なる姿を見せ楽しませてくれるでしょう。
(ライター sensyu-k)