オオスカシバは、日本に生息する昆虫類の中で最も美しい生き物のひとつです。

名前を聞いたことがなくても、オオスカシバが優雅に舞う姿を見たことのある方は多いのではないでしょうか。

オオスカシバってどんな姿?

オオスカシバはチョウ目スズメガ科に属する蛾の一種です。

全長は6cm前後で「透かし翅」という名のとおり、透き通った羽を持っています。

全身を黄緑、赤、黄、黒の色鮮やかな体毛で覆われたその姿は、とても蛾の仲間には見えません。

オオスカシバは肉食性の昆虫類や鳥類を天敵としています。

色鮮やかな体毛で警戒色を呈することで天敵を威嚇し、身を守っていると言われています。

その体色と丸々と太ったような体型から、スズメバチやハチドリと間違われることも多いそうです。

オオスカシバがホバリングをしながら長く発達した口吻で花の蜜を吸う姿は、たしかにハチドリと見紛うほどの優雅さを湛えています。

オオスカシバの生態

オオスカシバは北海道を除く日本全国に分布しています。

成虫は初夏から初秋にかけて見ることができます。

前述したように、オオスカシバの成虫は様々な種類の花の蜜を栄養源としています。

多くのスズメガが夜行性であるのに対して、オオスカシバは日中に活動を行うため、きらきらと陽の光を浴びながら優雅に花の蜜を吸う姿を見かけることも珍しくありません。

オオスカシバの幼虫時代

オオスカシバの幼虫は、成虫が全長6cm前後であるにも拘らず、10cm以上の大きさになることがあります。

 

体色は鮮やかな緑色で、お尻に長く尖った角を生やしています。

幼虫は大変な偏食家で、クチナシ以外は一切口にしません。

そのため、クチナシの生えているところであれば、高い確率で見ることができます。

オオスカシバの幼虫と人間との関わり

オオスカシバの幼虫は非常に旺盛な食欲の持ち主で、クチナシの葉だけではなくつぼみや新芽までも積極的に食べ進めていくため、オオスカシバの幼虫が住み着いたクチナシの木が丸裸になってしまうということも少なくありません。

しばしばクチナシを枯らす原因にもなっており、害虫として駆除の対象とされることもあります。

オオスカシバの飼育方法

幼虫を採取するためには、まずクチナシを探さなければなりません。

クチナシは初夏になると直径6cm前後の大きな白い花を咲かせます。

葉の数が少なく虫食い跡の多いクチナシほど、オオスカシバの幼虫が生息している可能性が高いといえるでしょう。

無事に幼虫を見つけることができたら、クチナシの葉ごと採取します。

前述したようにオオスカシバの幼虫は食欲が旺盛なので、数枚は採取しておくと安心です。

飼育容器に厚く土を敷いたら、幼虫をクチナシの葉ごと飼育容器に移します。

浅い水入れに脱脂綿などを浸しておくか、定期的に霧吹きをかけるなどして、好きなときに水分を補給できるようにしておきます。

飼育容器はベランダや玄関先など、直射日光の当たらない風通しの良い場所に置くと良いでしょう。

幼虫の餌となる新鮮なクチナシの葉と水分を切らさないように気を付けていれば、やがて幼虫は土の中に潜り、サナギとなります。

 

夏場に採取した幼虫であれば二週間前後で羽化しますが、秋口に採取した幼虫の場合はサナギの状態で冬を越すため、羽化には数ヶ月を要します。

保温する必要はありませんので、暖かくなるまで気長に待ちましょう。

羽化したばかりのオオスカシバの翅は、透明ではありません。

羽化したあとに羽ばたくことで翅に付着している鱗粉がふるい落とされ、美しい透き通った翅となります。

 

オオスカシバの成虫の飼育は非常に困難なので、ひとしきり観察したら自然に放してあげましょう。

大切に育てたオオスカシバが、翅から鱗粉をふるい落としながら飛び立っていく様には、えも言われぬ美しさがあります。

みなさんの目で、この美しい生き物の魅力を堪能してみては如何でしょうか。

(ライター:國谷正明)

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