「ヤマアラシのジレンマ」という言葉で有名なヤマアラシですが、その切なげなイメージとは裏腹に、実は攻撃的な動物です。
ここではそんなヤマアラシの生態と、その天敵について紹介します。
ヤマアラシの生態
ヤマアラシは、ヤマアラシ科およびアメリカヤマアラシ科に属する草食性のげっ歯類の総称です。
山荒、豪猪とも書きます。
体の背面と側面の一部に、鋭い針毛(トゲ)をもつことを特徴とします。
ヤマアラシの生息域
ヤマアラシという名で呼ばれる動物は、いずれも背中に長く鋭い針状の体毛が密生しています。
一見よく似た見た目です。
しかし、いわゆるこのヤマアラシは、ユーラシアとアフリカ(旧世界)に分布する地上生のヤマアラシ科と、南北アメリカ(新世界)に分布する樹上生のアメリカヤマアラシ科という2つのグループにわかれます。
ヤマアラシ科とアメリカヤマアラシ科というまったく別種の動物が、現在に至るまで「ヤマアラシ」という共通の名前で呼ばれているのは、そもそもヨーロッパから新大陸に渡った開拓者たちが、この地で新たに出会ったアメリカヤマアラシ類を、まったくの別系統である旧知のヤマアラシ類と混同して、呼称上の区別をつけなかった名残りに過ぎません。
特に区別する必要があるときは、それぞれ「旧世界ヤマアラシ」、「新世界ヤマアラシ」と呼び分けます。
【ヤマアラシ】
【アメリカヤマアラシ】
ヤマアラシは、頭胴長63~91センチ、尾長が20~25センチ、体重は5.4キロ~16キロです。
ヤマアラシは夜行性で、穀類、果実、木の葉、樹皮、草などの植物を食べます。
ちなみに群れをつくらず単独行動で生活しています。
食欲が旺盛で、大きな前歯を使って大量のエサを食べます。
野生の木の皮や茎を食べますが、キャンプ場に侵入してカヌーのパドルをかじることもあります。果物や木の葉、植物の芽もエサにします。
ヤマアラシは攻撃的で獰猛だった!
どちらのヤマアラシも夜行性で、昼間は巣穴や木の洞などに潜んでいます。
通常こういった針毛を持つ動物たちは外敵から身を守るために針を使いますが、ヤマアラシではむしろ積極的な攻撃に針を用い、とても攻撃的で獰猛な性質なのです。
ヤマアラシが肉食獣などと出会うと、まず尾を振り後ろ足で音を立てて相手を威嚇します。
尾の部分の針毛は中が空洞状になっており、叩くと大きな音を発するのです。
その後、背中の針を逆立てて後ろ向きに相手に向かって突進して行きます。
ヤマアラシの針毛は捕食者の内臓に突き刺さる!
ヤマアラシの針毛は硬く鋭いので、ゴム製の長靴を貫くほどにもなります。
また抜けやすい構造なので、捕食され丸呑みされた場合、その針毛が内臓を突き破ることもあるので、捕食者にとっても危険であると言えるのです。
また、この針毛の白黒のシマ模様は、相手に対して警告・警戒を促す意味があると言われています。
このため大型の肉食獣であっても、この針毛は十分警戒に値するので、ヤマアラシに襲いかかることは稀であると言えます。
ヤマアラシに天敵はいるか?
ヤマアラシの天敵として、ライオンやヒョウ、ハイエナが挙げられています。
生息域が重複する肉食獣や大型の爬虫類に狙われることがよくあるといえます。
ただし、針毛を使って反撃し、捕食者を撃退してしまうことも多いので、天敵と言えるかどうかは微妙なところです。
また、捕食された場合でも針が相手の柔らかい口内や内臓を突き破り、感染症や疾患を引き起こさせ、場合によっては死亡させることが知られています。
以上のことから、クマやトラといった大型の捕食動物でも、ヤマアラシを襲うことは滅多にありません。
ヤマアラシの攻撃的な性格は、ここに要因するとみられています。襲われないから調子に乗っているわけですね。
が。
そんな無敵にみえるヤマアラシにも、実は弱点があります。
針毛が生えていない頭部です。
ライオンの大群などに囲まれて、四方八方から頭部を狙われると勝ち目はないでしょう。
ということは、天敵はライオンの群れなのでしょうか?
実はそうではありません。こういった場合、ヤマアラシはどうするかというと、家族で結束してピンチを切り抜けます。
弱点の頭部を寄せ合わせて、敵に背中の針毛を向けることで守りきるのです。
ヤマアラシのまとめ
ヤマアラシの天敵は、ピューマだったんですね。
しかし、天敵とはいえ、ヤマアラシもなかなか健闘するようです。
意外な強さをみせるヤマアラシ。
町で見かけることはそうそうないとは思いますが、もし遭遇したら気をつけてください。
ヤツはお尻をあなたに向けて突進してきます。
(ライター まるお)