アカショウビンは、真っ赤な大きなクチバシが特徴の鳥です。クチバシだけでなく、ほぼ全身が真っ赤です。
そんな赤くてひと目を引くアカショウビンをここでは紹介しています。
アカショウビンの生態
アカショウビンは、ブッポウソウ目カワセミ科に分類される鳥類です。
森林に生息するカワセミの仲間でもあります。
生息地は日本と朝鮮半島、フィリピンからスンダ列島と、中国大陸からインドまで、そして東アジアと東南アジアです。たいへん広範囲に分布しています。
アカショウビンのなかでも北に分布する個体は、フィリピン諸島、マレー半島、ボルネオなどで越冬します。
日本には夏鳥として渡来します。
アカショウビンは、北海道から沖縄までほぼ全国で繁殖をしますが、渡来数は少ないです。なお、西表島は日本有数の繁殖地といわれています。
ちなみに、冬は東南アジアへ渡って越冬します。
日本でよく見られるカワセミ類は、このアカショウビンのほかにはカワセミ、ヤマセミの3種類です。そのうち、アカショウビンだけが渡り鳥です。
アカショウビンの特徴
アカショウビンは、夏鳥で、山地の渓流や湖沼に面する林でよく見られます。
特徴は、オスとメスが同色で、全体がクロミを帯びた赤橙色となっています。
まさに赤ショウビンですね。ちなみに、くちばしはほかと比べ赤みが強くなっています。
ノドは白く、腰に薄い水色の羽毛があります。
アカショウビンの亜種には、リュウキュウアカショウビンという鳥がいます。
夏鳥として南西諸島に渡来、平地から山地の林に生息します。
アカショウビンは、この亜種リュウキュウアカショウビンと比べて、全体が紫がかった色味です。さらにいうと、鳴き声も亜種に比べて、ハリがありません。
アカショウビンと人間との関り
アカショウビンの学名「Halcyon coromanda」は、インドのコロマンデル海岸に由来します。
漢字では「赤翡翠(あかしょうびん)」と書き、英語名は「Ruddy Kingfisher」です。
また、アカショウビンは、燃えるような赤いくちばしと、体全体が赤いことから、火の鳥の異名を持ちます。鹿児島県の奄美大島の地方名ではクッカルといいます。
ちなみに、「翡翠(しょうびん)」とは、本来は青いカワセミを指す言葉ですが、色の異なるショウビンにも、熟字訓として用いられています。
その名前からも、このアカショウビンが各地でどのように見られてきたかを知ることができます。
カワセミっぽいけど赤いから赤カワセミ(翡翠)、「赤翡翠(あかしょうびん)」でいいや、日本ではそんな感じでつけられたのかもしれません。
すくなくとも命名はカワセミよりも後でしょう。
アカショウビンの繁殖について
アカショウビンの繁殖形態は卵生です。
巣穴は、崖やキツツキの古巣を使って営巣します。
1988年に石川県でスズメバチの古巣を使った営巣記録が報告されています。
亜種リュウキュウアカショウビンには、タカサゴシロアリが樹上に作る球状の巣に穴を掘って営巣した記録があります。
また、石垣島と西表島で、発泡スチロール製の人工営巣木で繁殖した記録もあります。
こうして書いてみると、なんだか節操のない営巣のしかたですね。
ツバメもそうだったのですが、鳥類は、いちから巣をつくるよりも、もとからある巣をしたたかに利用することが多いように思われます。
ただ、人間による環境の整備と変化が、鳥類に新たな巣を作りにくくしていることも確かです。
考えがそこまで到達したときに、複雑な気持ちになりました。
日本での産卵期は6月から7月にかけて、産卵数は5つほどになります。
アカショウビンの鳴き声
アカショウビンのオスは、朝夕や曇りの日に「キョロロロ…」と尻下がりの声でさえずります。
昔から山地の人々に慣れ親しまれている鳥なので、きっと、このさえずりを聞いた人は多いはず。
ひどく特徴的な鳴き声なので、いちど聞いたら忘れられません。
修学旅行や夏合宿、林間学校などで山の宿に泊まったことのある方は、おそらくこの鳴き声に聞きおぼえがあるはずです。
学校を卒業してしばらくたった方は、当時を思い出し、きっと懐かしさに頬がゆるむことでしょう。
アカショウビンのまとめ
以上で、アカショウビンについての記事を終わります。
鳴き声もその外見も非常に分かりやすい鳥なので、もし山林を歩く機会があったら、ぜひ探してみてください。
(ライター ジュン)